イナゴを食する
子供のころ、近所の子と一緒に水の抜けた田んぼでイナゴを捕った。夏の終わりごろで、まだ暑かった。みんな麦わら帽子をかぶっていた。稲の穂や茎にとまったイナゴは簡単に捕れ、持って行った袋はすぐにいっぱいなった。
田んぼの主と思われるおじさんが見ていて、「蛇に気を付けやー」と声をかけてくれた。枯れた田んぼで何度か蛇を見かけた。頭の尖った赤い蝮もいた。たいていは人の気配があるとたいてい逃げたが、たまにトグロを巻いた蛇に出くわすことがあった。これは危ない。
捕ったイナゴは家に持ち帰って食べた。炒って甘辛く味付けをすると、佃煮に近い。昆虫の甲殻がカリカリしておいしかった。大人になってイナゴを食べるのは珍しいのを知った。貧しかったのだろうが珍味ではあった。
いま積極的に食べようとは思わないが懐かしい。