2020.10月6日 長編・18『ホロー荘の殺人』 & 紅い花
名探偵ポアロシリーズ読書記録 長編・18は『ホロー荘の殺人』です。
この小説。アガサ・クリスティ氏ご自身は、ポアロシリーズ作品にしたことを後悔なさっていたそうです。「ポアロ不在の作品にした方が、成功していただろう」と、仰っていたとか。
その後にこの作品を戯曲化した際には、実際にポアロ不在の作品に変更されています。
それを踏まえてか。この『ホロー荘の殺人』を原作としたフランス映画『華麗なるアリバイ』でも、名探偵ポアロは登場していません。
私は、このフランス映画を視聴致しました。ポアロもの独特のあの雰囲気は全くなかったのですが。美しくも哀しい人間ドラマ・恋愛事件として描かれていて、見応えのある完成度の高い作品だと感じましたね。
ただ。個人的に、この小説がポアロもので良かったな、と感じる点が一点ありまして。
それは、名探偵ポアロシリーズ長編の『五匹の子豚』に続いて刊行された作品がこの『ホロー荘の殺人』であった、という点です。
ポアロシリーズを読む事を決意し、順に読んでいる読者の多くが。『五匹の子豚』を読んだ直後に『ホロー荘の殺人』を読むであろうと、推測されるからです。
『五匹の子豚』には、エイミアス・クレイルという男性の画家が登場しますが。
この『ホロー荘の殺人』には、ヘンリエッタ・サヴァナクという女性の彫刻家が登場します。
*
ヘンリエッタは、作中で
「あたしは自分のものではなくて、なにか外部のものに支配されているのだ。死んだ人を悲しむこともできない。しかも、自分の悲しみをとりだして、石膏の像にしないではいられないのだ…」
「ジョン、許して、許してね、だって、こうせずにはいられないんですもの」
という台詞を呟いています。
芸術家とは…こういうものなのか。いや、芸術家だけではない。技術者・技師・職人と呼ばれる人たち。
創作者・クリエイターとして活動している人間達。ものづくりをしている全ての人間が、ヘンリエッタなのかもしれない。
そう。私、Knit優香もクリエイターの端くれである以上。ヘンリエッタと同じなのかもしれない。
私は。女として、ヘンリエッタとは決定的に違った特性を備えていて。
妻子ある男性と、男女として深い仲になることは絶対にありません。倫理観や良心の問題というよりも、私個人のプライドの高さ故のことかもしれませんね。
兎に角。私は、不倫や不貞行為とみなされる行為に及ぶことは、今までもこれからも決してないと誓えます。
その点では、ヘンリエッタ・サヴァナクと私とでは決定的に異なるといえるのです。
ですが。ものづくり・創作に関する姿勢という点においては。私は、ヘンリエッタと同類かもしれない。
どのような苦しみも悲しみも、創作のネタにしてしまう。そういう人間ではないと、私は自身の事を言い切れない。
私は。ヘンリエッタ同様。人間であるよりも、それ以前に、創作者であるかもしれない。
そういった想いを。この小説を再読して、改めて感じました。
ご自身をクリエイターだと自認していらっしゃる方々(あらゆる分野において)、是非ともこの『ホロー荘の殺人』を読まれることをお薦めします。
クリエイターとして、"何か" を 感じることだけは。間違いないかと存じます。
☆
情熱的なこの小説に合わせ。本日のモチーフ編みは、ころんとした紅い花を選びました🌹
葉っぱ部分がないから
花だとわかりにくいですよね(^◇^;)
緑の糸で、葉っぱ部分を編んで付けようかな?