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[超短編小説]影法師

 ふと、影を見た。二コリと微笑むその姿は人ではない。ぐるぐる渦巻いて、吐きそうなくらい気持ち悪くなる。
 ぴちゃ。
 と水音が耳元で聞こえたかと思うと目の前のにこりと笑った顔は口を開けてこちらを見る。あらあら口から何かが垂れている。真っ暗な深夜ではそれが何色かすら分からない。白く光った目と歯がキラキラギラギラ目に痛い。ヒトの言葉ではない何かを話し始めるソレはゆっくりと此方に近づく。
 その瞬間恐怖が私の体を力強く動かした。背後にあったコンビニへ駆け込んで振り返るとそこにはいつもの景色が広がっていた。深夜だが何軒かの家の灯りがついており。行き交う人はおらず。店員のやる気のない声が耳に届く。
 あれが一体何だったのか。きっと答えは出ないままだろう。