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美をたどる皇室と岡山 (岡山県立美術館) 学び
今回の展示を担当された学芸員の方からの講義を90分間聴講しました。贅沢!
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講義ののちに展示を鑑賞することで、美学美術史的な観点が増えてとても満足度の高い体験でした。もちろん集められた作品、展示方法も素晴らしかったです。
一点だけ、橋本雅邦『龍虎図』と川端玉章『群猿之図』が並べられていたことで大きさにコントラストがつきすぎていてしまったのは確かに龍虎にとっては酷だったかもしれません。笑
皇室により集められた作品
三の丸尚蔵館の作品が地方で80点ほどみられるのは初めてのこと
特に岡山とゆかりのある作品を集めた
※ 近代日本画に絞った講義になる
御買上、献上、御下命の3種類の方法で尚蔵館にやってくる
「帝室技芸員制度」
優れた美術工芸家を保護する
終身制の栄誉職
年金が下賜される
天皇から御下命を受ける
制度は終了している
重要文化財、人間国宝に引き継がれている
川端玉章
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川端玉章『群猿之図』
視線の先を辿っていくと上に上に登っていく
猿と蜂で "ほうこう"、と読ませるのではという説がある
「画帖」は江戸時代に献上品として好まれたそう
橋本雅邦 『龍虎図』 明治32年 1899
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橋本雅邦
狩野派
御用達絵描だったが、幕末に禄を失う
内職でなんとか食いつないでいた
フェノロサや岡倉天心に共鳴する
東京美術学校で横山大観や菱田春草を指導
『白雲紅樹』
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グラデーション
遠近の表現は西洋画に影響を受けている
『龍虎図屏風』
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世間の度肝を抜いた作品
代表作といえど、他の雅邦と比べると抜きん出て派手
伝統美術保護の動き〜帝室技芸員制度の芽生え、パリ万博への出品
高村光雲もこの時に任命されている
パリ万博への出品目的
日本の伝統的な美術をアピール
西洋基準の「美術品」の枠内で提示
雅邦は普段屏風や掛軸
作品の工夫
雅邦にとって龍虎図は得意な主題
しかし額装形式は珍しい
虎、龍、波
脚色や派手さを削ぎ落としている
西洋画は骨格に厳格だが、東洋画は少し欠点、やりすぎもよくない
パリ万博の作品は虎が実物に近い
虎と龍のコントラストをつけている
山元春挙『主基地方風俗歌屏風』
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今回の展示での苦悩
230cmでとても大きく、色鮮やか
出品交渉が難航したそう。
また、展示用に青い台を特別に作ったそう
これ本当に良かった。現物も圧巻。一番好きでした。
制作背景
大嘗祭のために作られた
安寧や五穀豊穣を祈る
皇位継承に伴う一世に一度の儀式
この時に使うお米の収穫場所
悠紀・主基地方
天皇ゆかりの地から亀ト占いで決める
この時の主基は福岡だった
山元春挙
写実的で雄大な山水表現が得意
カメラと登山が趣味
鎌倉時代が中国の影響を最も受けていない、日本絵画の最高峰
儀式に合わせて形式を整え、やまと絵らしく俯瞰の鳥の目で描いていた
感想
日本では掛軸や屏風が美術品扱いだが、西洋では工芸や装飾品として扱われてしまうことは興味深かった
掛軸なら周りにどの布どの色を使うかである程度は組み合わせを担保できる利点
山元春挙『主基地方風俗歌屏風』
好き
現物も素晴らしかった
細かな描写と大胆な青づかい
この作品のために作ったと学芸員の方が仰っていた台の色は、作品の青とピッタリ
佐久間文吾『和気清麿奏神教図』
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陰になっているものの瞳は天皇家への忠義、わけわからん僧(すみません道鏡です)への怒りに燃えているそう
服のぱりっとした分厚い皺の表現が大変秀逸!
緊張感のある作品
鹿子木猛郎『大台ヶ原山中』
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クールベを尊敬し、模写したこともある人物だそう
どっしりとした安定感のある構図
岩と川が引き立てあっている
落ち着く