自業自得を棚に上げすぎてもはや手が届かない。

 私は「ちいさな失敗」をよくする。

 世間的にはどこまでを「ちいさな」、どこからを「おおきな」と判断するかは解りかねるが、よく失敗する割に能天気な私(だから同じ失敗を繰り返すのである)は、脳内の「ちいさな失敗」の引き出しにそれらのエピソードを放り込んでいる。

・巷で話題になっていた食品がセールになっており、これを逃す理由はないと、しこたま買い込んだら他店でもっと安く売られていることを発見。(しかもしこたま買い込んだそれが非常に口に合わなかった)

・シャンプーとトリートメントを買う予定が、シャンプーを2つ買った。

・牛乳を買いに出かけたはずなのに牛乳を買い忘れた。

・カレールーが余っているからと献立をカレーにしたのに、いざ戸棚を開けて見たらビーフシチューだった。

・こちらの方が早道だろうといつもの道を外れたら迷子になり、いつもの倍の時間がかかった。

・レジの列の並びどころの判断を見誤っていつも倍近くタイムロスしてしまう。

・どうせ使うからと多めに買った日用品のストック場所がなく、いつもより多く雑に消費し、かえって無駄遣いをした。

・お店の表示価格を読み間違えて欲しかった金額とは全く違う金額で購入(この失敗も幾度となくしているが「勘違いしました。要りません。」と未だ一度も言えていない)

・絶対に遅刻しないようにと待ち合わせの3時間前に起きたにも関わらず、かえってゆっくり支度してしまい、結局いつもより自宅を出発する時間が遅くなってしまう。

・人から聞いた他人の噂話を両者に気を遣い、後日本人からその話を打ち明けられた時、初見のリアクションを取り続けていたら「…◯◯があなたに話したって言ってたけど。」と打ち明けられ、気絶しそうになった。

・電車に乗っていた時、座っている座席の斜め前に妊婦さんがいらしたのでスッと席を立つ(以前年配の方に「どうぞ」と声をかけ「年寄り扱いするな!」とどなられたことがあり、以後このスタイルである)と、妊婦さんは携帯に夢中で座らず、近くにいた中年のおじさんがどさっと座った。

そのほかにもよく注文を間違えられたり、自動販売機で押したはずのボタンのものとは全く違うものがでてきたりもする。(あまりに多いので私が間違えているのかと錯覚するが、その都度その場にいた友人や家族からあなたは正しかったと証拠を得ている)

 最後のエピソードに至っては失敗というよりは不運な気もするが、とにかくこんなことが日常茶飯事である。

 しかし、これらのエピソードを思い返すと一つの原因が思い浮かぶのである。(勘の良い方は読んでいる最中から気づいていたであろう)

 シンプルに確認不足の鬼せっかちなのである。己のせっかちと大雑把な性格がもたらした自業自得の失敗なのである。ではそのせっかちと大雑把を直せば良いではないか。そんな簡単に自分を変えられていたら、この世には聖人君主しか居なかろう。私は救いようのない大雑把鬼せっかち女なのである。

 こういう話をすると開き直って自分の欠点をネタにしている下品な女だと思われかねないが、決してそうではない。一刻も早く治すべきだし、第一人様に迷惑をかけることに慣れる人間でありたくない。だがしかし、なぜか気をつけようと強く胸に刻めば刻むほど、私の中の大雑把鬼せっかちが大空回りし、大雑把鬼せっかちに拍車がかかるのである。

 今の世の中、少しでも自分の欠点を曝け出すと「病気では?」と騒がれる時代だが、仮にそうだとしても病気だからなんだって話である。病気であろうとなかろうと、私はこの大雑把鬼せっかちの人格と共に生きていかねばならないのだから、何かしらの対策は打たねばならない。だが、その対策の詰めが甘い。…大雑把だから。ここでも私の行手を阻むか!!

 なかなか直せずにいる私の大雑把鬼せっかちならば、せめてその分は他人に寛容であろうと最近は悟りつつある。しかしどうしても他者には厳しい目を向けてしまうのが悲しい哉人間の性である。自分の大雑把鬼せっかちを棚に上げ、今日も旦那を厳しい口調で叱責するのである。大雑把鬼せっかち超絶口悪女。もはやただのどうしようもない女ではないか。自業自得を棚に上げすぎてもはや手が届かない。

 来世は転生ガチャで神引きして聖人君主でありたい。

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