ダイニーマ・コンポジット・ファブリックという魔法の様な生地
ダイニーマ・コンポジット・ファブリックという素材を知っているだろうか。
DYNEEMA®COMPOSITE FABRICS
頭文字を取ってDCFとも呼ばれるその生地は、防水性と耐久性を兼ね備えた超軽量なアウトドア・ギアにもってこいの理想の新素材である。
2年ほど前に久し振りに物置きの奥から取り出した、お気に入りのテント。アメリカのテントメーカー、NEMO Equipment(ニーモ・イクイップメント)のANDI(アンディ)だ。シングルウォールの自立式モデルで大人2人でも十分な居住性を確保し、かつ前室も兼ね揃えた理想のテントである。このANDIは以前訪れたイエローストーン国立公園でのテント泊に使用するため購入したものだ。その後も国内のキャンプで何度か使用し、使用後は汚れを落とし陰干ししてメンテナンスした後、大切に保管していた。
が、しかし…
久し振りに張ったそのテントに違和感を感じた。なんだか内側のファブリックを指で触ってみるとベタつきを感じたからだ。少しテント内にいるとなんだか酸っぱい臭いが充満してきた。
加水分解だ!!!
テントの防水性を高めるため、テント裏地に広く採用されているPU coatings(ポリウレタンコーティング)。このコーティング剤が諸刃の剣で、防水性を高めるために必要だが、水と反応すると劣化し、べた付きや匂いの原因ともなる。
加水分解してしまったテントのメンテナンス方法やテント専用クリーニング店に問い合わせたりと色々試してみたものの、結局加水分解を起こしたテントを元通り復活させるのは無理なことが判明した。過去にもMSRのセンチネルという大人1人がゆったり寝れるテントを愛用していたが、これも加水分解してしまった。その他、テントに限らずグレゴリーのバックパック、アークテリクスのバックパック用レインカバーも加水分解による劣化で処分する羽目になってしまった。
この加水分解を防ぐ方法…
使用後は完全に乾燥させ、温度上昇の低い場所で保管することが望ましいとのことだが、湿度が高い日本の夏場などは風通しが悪いと湿気が多くなり、加水分解が起こりやすくなる。バックパックやテントはキャンプでは重要なアイテムであり、また早々頻繁に買い替えるギアでもない。
そこで最終的にたどり着いた答えは…
加水分解を極力起こさない様に最新の注意を図る…
のはやめて、「加水分解を起こさない素材で作られたテントやバックパックを探す」だった。この結果たどり着いたのがDCF製のギアである。もともとDCFという素材はCUBEN FIBER(キューベン・ファイバー)という名称で、America's Cupのレーシング・ボートのセイル素材として開発された。100%の防水性と耐久性を兼ね揃えながらも水に浮く性質がある。Silnylon(シルナイロン)より軽く、Kevlar(ケブラー)より強度があるというから驚きである。ケブラーは防弾ベストの一部にも使用されるアラミド繊維だが、近年のボディーアーマーにダイニーマが使用されているのもうなずける。
超軽量で快適な背負い心地のMADE IN THE USAなダイニーマ製バックパック
細かく言えばDCFも厚みや強度など複数あり、各メーカーやギアの種類によって使い分けているのが現状である。数ある中で現在愛用中なのが、アメリカ メイン州で製造されているHyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンンテンギア)の2400 WINDRIDER(ウインドライダー) - BLACKモデルのバックパックだ。メーカーカタログ表記で、重量は約916g、容量はパック名称と同じ2400 cu.in(キュービックインチ)で約40Lとなる。またパック外側にメッシュの大型ポケットが3つあり、このメッシュポケットだけで約9.8Lもの収納量がある。合計で約50L収納できるため、1、2泊のテント泊を想定したキャンプ釣行にも使える頼もしいバックパックだ。
以前はアメリア モンタナ州ボーズマンに本拠地を置く、バックパックメーカーのMYSTERY RANCH (ミステリーランチ)3 DAY ASSAULT BVS - Coyoteを愛用していた。だが、こちらもナイロン生地の裏側にポリウレタンコーティングを施しているため、いつか訪れるであろう加水分解の日を恐れて手放してしまった。以前はキャンプ、アウトドアギアはヘビーデューティーであり、ギア選びのコンセプトはズバリ「オーバースペック」であった。ミステリーランチもそうだが、基本的には米軍をはじめ各国の軍に製品の供給実績があるアウトドアメーカーのモノを中心に選定していたが、近年はUltralight Backpackingの考えを取り入れ、軍用品を製造していないメーカー、ガレージメーカー、国内のメーカーも含め広くお気に入りのギアを選定することにしている。
新素材の開発は日進月歩であり、数年後には更なるハイテク・マテリアルがアウトドアギア市場に投入されると思うが、今のところ加水分解を起こさない、軽量でタフなダイニーマ・コンポジット・ファブリックは自分にとってとても理想であり、この魔法のような生地で作られたギアたちに魅せられている。
見出し画像の出典:
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?