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Daniel Johnston 『Yip/Jump music』

西千葉に住んでいた学生時代、アパートから自転車で行ける距離にあったディスクユニオン千葉店に足繁く通っていた。棚の位置はもちろん、自分が興味のあるジャンルの商品ラインナップもほぼ把握していたので主に新入荷コーナーをチェックして気になる音源をピックアップする日々。そんな中で出会ったのがダニエル・ジョンストンのアルバム『Yip/Jump music』だった。

当時はダニエル・ジョンストンという名前をどこかで聞いたことがあるくらいで楽曲は全く知らなかったが、ジャケットに描かれた赤ちゃんのイラストとアルバムタイトルの楽しげな響きがどうにも気になって買うことにした。帰宅して即再生。一聴して思ったのは「音質悪いな~」だったが、曲が進むにつれくぐもった音質の向こうから聴こえてくるメロディーがとんでもなく良いことに気づいた。ときおり声が裏返ったりリズムが崩れたりしても気にせず録音されたらしいその音源からは、他では感じたことのない「切実さ」や「痛み」が伝わってきて、それがピュアな歌声によるメロディーの美しさを倍加しているように思えた。自意識過剰で傷つきやすかった20代前半の自分はこの「痛み」の感覚の虜になり、昼夜を問わず夢中でこのアルバムを聴いた。今振り返ると自らの恵まれた環境を棚上げして天才アーティストの抱える孤独に自分を重ねようとしていたのが気恥ずかしいが、当時は自分なりに切実な思いで救いを求めていたのだと思う。

聴くたびに自分の心の一番繊細な部分が刺激されるので就職してからはあまり聴かなくなっていったが、この記事を書くために久しぶりにアルバムを一周した。あの頃の感覚がよみがえるのと同時に、普段は直視しないでやり過ごしている学生時代とは別種の「痛み」が胸のなかで疼くのを感じた。どれだけ時間が流れても、懐かしい痛みの記憶とともに生涯寄り添ってくれるだろう特別な1枚。それが自分にとっての『Yip/Jump music』です。あのとき出会えて本当に良かった。



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