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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第7話 蝶番

189第7話蝶番
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第7話

蝶番

あらすじ

 ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、ミーターは、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。

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ミーター ヴォイジャー1号、なんという素朴でいたいけな天体なんだな!
 ファー・スター2世号に結束させて一緒にジャンプ・ワープさせてあげたいくらいだ。

イルミナ そうね、ミーターさん、そのお気持ちはわかりますよ。でもそっとそのままにしておくことにしましょう。当然ミーターさんは、そのつもりでしょうけど。
 
ペイリー パパはいつも言ってました。
 「果たして、ジスカルドと私(ダニール)が選択した決断(人類の歴史消滅)は、本当に正しかったのであろうか」ってね。
 「ペイリー、もしかしたら、我々がした歴史消滅をしなかったら人類はおそらく滅んでいたろうが、それでよかったのかも知れない」ともね。

イルミナ そうだわね、でも、こうやって、もう一回の地球の復興に私たちは遭遇できました。

ミーター いいや、まだ早いぞ。そう断言するには。これからも、地球文明は何回も全滅の危機に遭遇するはずだ。人類の知恵は、そうやって挑戦を受け、試される。

イルミナ 言われる通りですね。同感です。

 銀河帝国の復興も同じですね。
 そんな時、あのファウンデーションが生み出され、最小は小さな始まりでしたが、今やっと500年後にハリやガールの念願が叶いはじまりました。

ミーター いう通りだ。俺らは、ハリとガールの念願を、彼らの意図通りに完遂させてきたに過ぎない。決して俺らだけの力ではなかった、ということは肝に命じなくてはならないんだ。

イルミナ そうです。私たちは、ただ、ハリやガールの志しをアルカディアさんに繋がるご先祖様たちの面々に尊い糸を繋げてきただけですから。

 いわば、人類の願いの「蝶番」の役割としてですね。

 思い出したわ、ミーターさん。
 あなた、私の質問に答えてないことがあります。

ミーター 慌てるな、イルミナ。今から話すから。
 ガールの蝶番の役割とアルーリンの蝶番の役割の違いだろう?

イルミナ その通りよ。お願いしますわ、ボス。

ミーター ここにいるペイリーさんは、全グループとの蝶番だよな。
 とくにそのなかでもロボット第零グループとガイアの蝶番だ。
 
 アルーリンは、第1ファウンデーションと第2ファウンデーションとの中継ぎをしたばかりでなく、ハーディンの娘グレディアをドースさんの養女として薦めたように、アルカディアに繋がる女系家族を支えてきた。
 そればかりではない。オリンサスさんが再発見したピレンヌの銅像の内部構造がちょうど500年後に、極素輻射体がリセットするようにさせていた。
 まさにファー・スター2世号とイルミナと、この俺を結びつけてくれたと言っても過言ではない。

 そしてガール・ドーニックの蝶番としての役割とは、まず第1ファウンデーションとハリ家(アルカディアに繋がる)との結束だ。
 それから、ガイアの可能性を、例の「ジョン・ナック」の掘り起こしによって、ハリの「心理歴史学」を微調整して、発展させたんだ。彼の「証古学」は、未来と外宇宙(銀河系外)への展望を人類に提供したんだ。
 そして、「反陰陽」という、宇宙像をハッキリと呈示してくれているのだよ。

 因みにこの俺っていうと、彼らの高邁な理想と今とを繋ぐ蝶番の役なんだよ。それでダニールは、それをするように俺をプッシュした。
 天下一の「翻訳・通訳」ロボットだからな俺は。

イルミナ 素晴らしいですね。

ペイリー じゃあ、こう言うことね。今までお聞きした話しを纏めますと、
 ターミナスに行ったら、まず、ジスカルド・ハニスさんを助けて、第1ファウンデーションをしかるべき本来の姿に建て直し、第2ファウンデーションとの絆を再構築させるってことね!

イルミナ そして第1ファウンデーションから私たちの後発隊を陰ながら出立させる、ということですね。

ミーター そうそう、「陰ながら」っていうのが、重要なポイントなんだ!
 その点では、俺らはダニールに見習って、秘密裏にすすめなくてはならない。
 ペイリーさんには是非、ダニールの知恵で俺らを支えてもらいたい。

ペイリー お役にたてられますように心がけます。
 パパはいつも私たちに諭してくれました。第零法則の真髄とは「真摯さ」、だって。「人間であるお前も、この真摯さが生きる芯になり、それが人類社会の絆の原動力になる」だって!

ミーター 真摯さ、か!

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