ファウンデーションの夢 前史
ファウンデーションの夢 前史
前史その1 ロボット第零の法則
物語部(ものがたりべ)としては完璧に失格でありますけれど、FB という特殊な形態で投稿していたという制限を思うと、少しばかり「前史」と第一部の「あらすじ」は読者が、読み続けていくにあたって時々、合点することに多少の利便となるとのサジェスチョンに甘んじて受け入れることにいたします。
西歴3704年、オーロラのロボット科学者、ケルドン・アマディロの陰謀によって、地球に放射能の汚染の危機が差し迫ったとき、ジスカルド・レヴェントロフは盟友ダニール・オリヴォーに危機回避の操作が十分可能であった。
それにもかかわらず、それを差し止める提案をし、ダニールは苦慮の結果、それに従う選択をするに至ります。
それは、ジスカルドのロボット第零の法則が初めて、ロボット三原則を逸脱した瞬間でもありました。
ジスカルドはその行為の当然の反応として覚悟の機能停止に陥ることとなります。
第零法則によるトレード・オフの冷徹な結末です。
同時にレヴェントロフは彼の機能停止の直前、彼自身持っていた精神感能力をダニールに附与します。
その理由、目的はひとえに、人類が自立し揺りかごの地球を敢えて捨てる覚悟を提供することでありました。
それから怒濤のごとき本格的宇宙移民の時代を迎え、幾世紀もしないで銀河の果てに至る住居可能な星々に移民が到達して行きました。
イライジャ・ベイリーとその息子によるセッツラー時代の開幕です。
前史その2 コンポレロン
二項対立の人間模様は、自明の理の通り、人間がホモ・サピエンスである以上、拭うことが出来ない数奇な歴史を、あるときは日向において、あるときは闇夜にあっても送らざるを得ないという苦悩を味わうことでもある。
当然として、地球から宇宙へ飛びだった一連の最初のグループは、貧富の格差が極度に広がった21世紀には貧乏層を差別視化した超富裕層の人たちから成り立っていた。
彼らはロボットが人間の隷僕としてロボット三原則の縛りをいいことに、孤独であるが、身勝手な放縦の生活からやがては自滅して行くこととなった。彼らは科学技術を極度に駆使して何百歳という長寿を獲得する。あるいは、病原菌の感染を恐れ、人との空間的接触を嫌う。彼らの住居惑星は五個。オーロラを皮切りに最後にソラリアに移植。彼らはスペーサーと呼ばれ、後のセッツラーと隔絶され、交流が絶たれ、忘れ去られ、衰退して行った。
一方庶民、貧乏人は、一周遅れで、穴蔵の鋼鉄都市からイライジャ・ベイリーに率いられて、地球をあとにすることになった。彼らがセッツラーで最初に入植したのがベイリー・ワールド。
そのベイリーワールドという惑星は、後にコンポレロンと呼ばれる。
そこは、地球に近い星域シリウス星系の近くに位置し、約17000年後のトランターやターミナスには全く天の川銀河の反対側に位置してはいるが、ターミナスのファウンデーショングループには率先して加わっていた。
その理由(わけ)は、『ミーターの大冒険』で徐々に解き明かされてくる。
第三の人たちもいたにはいたが、皮肉にもこの第三の道をとった人たちが、後の衰退した銀河を救いうる母体となって行くのであるが、彼らはずっと後、「目覚めた人たち」と呼ばれ、極めて小数者であって、それが明白になるのは、ずっと先のお話ではある。ちょっとだけ予告めいたものをお知らせするとガール・ドーニックの出身星のシンナックスに由来する。
彼らがどのようにその後の銀河の担い手になっていくかは「乞うご期待」である。
前史その3 ジスカルド・レヴェントルフ
禍福は糾える縄の如し
東洋の深明です。
最新の量子論の識者は「素粒子をみると、観られる側(素粒子)が微妙に別な顔を見せる。」と言って、言い換えるなら、旧来から言われて来てるのとは違い、精神のない無機物も精神的働きがある、と考えているみたいです。
前史2に述べました、ジスカルド・レーベントロフの行為に遺憾の思いをもたれた方もおありだと思い、僕は、いささかジスカルドの名誉のために、彼の行為の動機を弁護したほうがいいと思い、少し説明を加えてみます。
有名なジスカルドが盟友ダニール・オリヴォーに発した宇宙史の折り返し極点のセリフをまず、お知らせいたします。
「やめたまえ、フレンド・ダニール。限界をわきまえなければ...」
そうです、まず、ダニールが、地球全土に配置完了の核反応増幅装置(世界中にある429基から523基以上の原子力発電所の核融炉がほっとくと爆発をおこす。)のをそのままにしようと先輩ジスカルドに提案した時のとっさの反応の発言です。
ダニールは、全三回以上に亘って地球のニューヨーク市警のイライジャ・ベイリーとの共同捜査によって彼の陽電子頭脳は新たな次元に遷移して行ったと言うのが自然なのです。
ジスカルドはダニールの提案に苦慮し、その決断が第零の法則の創出に至り、....
その責務(報い)として、彼の全機能停止を自らに課し、ダニールを代理者として委ね、ダニールもその責務(報い)として二万歳の不死の従僕への生涯を果たして行かねばならないのでした。
第零の法則は、またしても、その完結として人類の故郷喪失、宇宙進出以前の全知識の消去。そしてその消去によって、新たな混沌を招来させてしまうのですが、ながくなりますので、詳細は次回で。
前史その4 スペーサー
スペーサー(宇宙国家連)は、西暦11300年ごろには退廃し、さしもの固有の文明は行きすぎの欲望の極として滅亡して行きました。
一方、時を同じくして、後発の「植民国家連合」は、人類が居住可能の銀河の隅々までに入植が完了します。
ジスカルド・ダニール派に対してロボット第零の法則を厳しく拒否し、対立するロボットのグループ、いわゆる「キャルヴィン派」が台頭します。彼らは、ロボットには第零法則は必要ではなく、3法則のみで十分だとします。
この対立が後々まで、混沌の状況が複雑に絡み、皮肉にも、混沌をさらに増大させてしまうのです。ダニールは、全銀河に浸透して行った人類の文明を計画的に停滞させて行きます。
この停滞は、悪いことに、「歴史記憶因子」を地球の放射能磁場の廃墟から放出させて、2グループの対立を煽り、徐々に、人類の肉体、頭脳に作用し、ある「脳炎」を発症させてしまいました。
そこでダニールは、第零法則の創出が果たして、人類の福利に役立ったのか、苦悩します。
そうして次回は、ダニールが「前史最終回」としての究極的糸口を見出だして行くのです。
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