ミュータント
ミュータント
『2万年後の銀河』
第六部 「ベイタ・ダレル」
「ベイタ・ダレル」の2️⃣
ミュータント
(第5話~第8話)
前話までのあらすじ
ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。
ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。
ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)からしばしば泊まりに来ていた。
近くには、朽ち果てたガールの屋敷があった。
ベイタはコッソリと、そのガール屋敷の地下深くにあった『故郷星探査報告書』を手に取るのであった。
そこにはファウンデーション設立当時、ガール・ドーニックの秘密の特別任務の記録が記されてあった。後に、アルカディアが、ジスカルド・ハニスからそれを譲り受ける。その内容の繙きについては続いて読者の努力に委ねます。
ベイタは、モーヴで、学問に励み、彼女の女系先祖やガール・ドーニックの輝かし業績に触れ、ガールの遺志を復興し、継ごうという旨の手紙を母ロアにしたためる。
お招きのことば
セルダンの裁判が始まる前の年、つまり銀河暦12066年、ダニール・オリヴォーは、ガール・ドーニックをシンナックスから招き寄せるため、かつハリ・セルダンの「心理歴史学」と2つのファウンデーションを補強するため、人類の最古の故郷星「地球」への探索の旅に出る。わたしYi Yinのサイエンス・フィクションはアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズをほぼ下敷きとして哲学者ノース・ホワイトヘッドの「移動と新しさ」の哲学に貫かれている。
『2万年後の銀河』の大枠
第一部 ダニールの地球探索
第二部 ガイア
第三部 ウォンダとガールの地球探索
第四部 嵐の気配
第五部 Tee Tree
第六部 ベイタ・ダレル
第七部 アルカディア・ダレル
第八部 アルカディアの遺言
第六部 ベイタ・ダレルの内容
34 第1話 ベイタから母ロアに宛てた手紙
35 第2話 ポニェッツの秘密
36 第3話 心理歴史学の弱点
37 第4話 ベイタの出番
38 第5話 ミュータント
39 第6話 白とピンクの惑星
40 第7話 束の間のバカンス
41 第8話 Espionage
42 第9話 ターミナスがミュールに占領された!
43 第10話 第2ファウンデーションの在り処?
44 第11話 三百年目の晩餐会
45 第12話 Rの機能停止
46 第13話 星界の涯
前史
銀河暦 12028年 ダニール・オリヴォー、宰相を辞任。ハリ・セルダン、宰相になる。
銀河暦 12038年
ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦 12040年
ウオンダ・セルダン生まれる。
銀河暦 12048年
ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦 12067年
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。
ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。
ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
登場人物
・ベイタ・ダレル
・トラン・ダレル
・エブリング・ミス
・ランデュ・ダレル
・道化師、ボボ・マグニフィコ・ギガンティクス
・ハン・プリッチャー
本文
第5話 ミュータント
38
ベイタ 私は、ベイタ・マロウです。ミスさんに急なお話しで参りました。
エブリング・ミス これはこれは、こんなぼろやに、よくぞいらしてくれました。もっと堅苦しい方だと思いきや、若くて美人のお出ましとは、我が家には不似合いです。調べものが多くてこんな状態ですが、そこいらのものをどかしてお座り下さい。
なにせ、セルダン、ドーニック、ハーディン、マロウのご子孫様が来るなんて、光栄極まりありませんから。
ベイタ 実は、誰にも話せない事実をお伝えに参りました。母ロアには内緒でお伺いしました。ドーニックの館が我が家の所有だということはご存知でしょうけど、ドーニックの直筆の手紙を所有しておりまして、ミスさんもご存知ないことかと思って、お伺いさせてもらったのです。
ハリ・セルダン宛の手紙で、その写しだと思います。
あなたもそうでしょうけど、心理歴史学は全体の帰趨を扱う学問であって、個々人の個別行動の有り様はそれに結びつかないという前提でしょうけど、セルダンはその個別様態をも視野にいれていた、という内容だったのです。その調査のためにドーニックに行かせたのです。銀河帝国が成立する前、ふるさとの星からの第一波の銀河への移民として五十数個の惑星に移民したスペーサーワールドと呼ばれる、中心星オーロラ、最後に移民されたソラリアに赴きました。
オーロラで彼が発見したのは、当時 Rといいわれた存在の代わりの番犬の群れ、でした。ソラリアでは人間一人につき一万台といわれていた R は存在してはおりませんでしたけど、当時医学の過度の発達によって何百歳という寿命を獲得していた反動で、奇形した人間が存在しているのです。
それが両性具有の人間だったんです。
ミス それがどうしたっていうのかね?
私の研究には関係ないと、思うがね。
ベイタ 関係ないとお思いですか!
心理歴史学では、奇形や突然変異体による感応能力者の全体構成に対する影響を考えてはおられないと、おっしゃるんですね!
ミス 論外ですね。セルダンやドーニック、アルーリンの学説をくまなく調べてもどこにもありゃしない。
私が問題にしているのは、ただ第二ファンデーションの存在だけなんだよ、お嬢さん。私が調べる。
専門家じゃない人が、とやかくいうものではありません。
ベイタ ミスさん、最近ではターミナスでは第二ファウンデーションの話は聞かれないでしょうけど、他のターミナス所属の星々では、セルダンの誕生日もちゃんと祝われ、第二フウァンデーションの存在も真実として語られているということをご存知ないのですね!
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