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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第11話 帰還

193第11話帰還
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第11話 

帰還


あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残りのアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

 ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。

 アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。

 代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。

 ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。

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ジム・ヘンダー ご帰還おめでとうございます。お帰りをお待ちしておりました。私はここアルカディア農園の留守番役のジム・ヘンダーです。
 ここの農園は、今では、議会の決議で政府の特別保護地区になってしまいました。
 あなた様にご連絡しなくて大変申し訳ありません。
 こうするしかなかったのです。
 要するに、ハニスさんの強いご依頼で、コンパーさんのお知恵で第三者の私が、コンパーさんの代理人としてここを管理させて頂いております。
 ミーターさんにはよくご理解されて、この事情をご了解して頂きたいと、主人コンパーさんが申しておりました。
 
ミーター いいや、お礼を言うのはこちらの方です、ヘンダーさん。有り難くご配慮に従います。何しろ、8年間も留守していたんですから。
 
ヘンダー ミーターさん、ご理解くださって、肩の荷がおりました。

ミーター ところで、申し訳ないが、一通り、あなたに質問させてもらいます。

 あなたとコンパーさんとの関係は?たんに、金銭的契約関係ですか?

ヘンダー 表だっては、そういうことになっています。
 ご存じのように、コンパーさんは第2ファウンデーションのエージェントです。政府には完全に秘密にしておかなければなりません。
 私はコンポレロンの出身ではありませんが、祖父がコンポレロン出身で父は惑星コノム(Konom)出身です。
 代々、第二ファウンデーションのシンパサイザーをやってきています。
 ご安心ください。

ミーター それでは、この大農園の地下が、政府の探知機にキャッチされないで、この格納庫にファー・スター2世号が収まるのもご存知なのですね。

ヘンダー はい、存じておりますが、ちょっとだけ厄介なことが起こりそうなのです。

ミーター 厄介なこと?

ヘンダー 例の政府の公安局長のリオノ・コデル(Director of Security Liono・Kodell)が帝国辞書編纂図書館のからくりに気づきそうなのです。

イルミナ (人間の聴覚では把握されない精神感応波で)まあ、そうだったのですね。
 ヘリコンの時、感じてた胸さわぎと言うのがそれだったんだわ!

ヘンダー そうです。亡きアルカディアさんの最大の遺産の秘密が暴かされそうなのです。時間の問題なのです。

イルミナ ヘンダーさん、あなたも感応力波をお使いになるのですね?

ヘンダー 完璧とは言えませんが、多少ながら。

イルミナ そうなると、一大事ですよ。オリンサスさんのご苦労が無駄になるばかりでなく、「わたし」も存在しなくなってしまいます。
 それに、歴史消滅以前の膨大な情報・データも消滅してしまうわ。全銀河の図書館との連関も途絶えてしまうわ。
 せっかく地球まで出向いた成果がプッツリと途切れてしまうわ。どうしましょう!

ミーター ヘリコンからの帰り道で立てた戦略を一旦中止するほかないらしいな。
 銀河再生の心臓であるアルカディア記念図書館(帝国辞書編纂図書館)を守ることが先決だ。どうにかしてコデルらの陰謀を阻止しなくてはならない。

ペイリー そうだわね、イルミナさんを失うのは、断然許されないですよ。

ヘンダー そちらのお美しい方は?

ミーター 言い遅れました、こちらは地球の衛星から同行して来ました。我らの新メンバーの月女ペイリー・リャンさんです。

ヘンダー ああ、コンパーさんが言っておられた美貌の不死の従僕様の養女の。

ペイリー よろしくお願いいたします、ヘンダーさん。でも私はれっきとした人間です。決して不死ではありませんから。

ヘンダー わかりました。
 わたしをジムと読んでください。

 当分は皆様、ここの地下格納庫のまたその下のお部屋でお過ごし頂きます。

 そうと決まれば、明日からでも、ジスカルド・ハニスさんを探し出しましょう。

ミーター 宜しく頼みます、ジム。

帰路のファー・スター2世号。ターミナス星がクッキリと。

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