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ファウンデーションの夢 16 「聴かずんばこれを去らん」
16
「敵を包囲したら必ず逃げ道を開いておかねばならない。窮地に追い込んだ敵に攻撃を仕掛けてはならない。」(『孫子』孫武著)
「リンジ・チェン。銀河帝国を支えてきたチェン家の棟梁にして、公安委員長官。チェン家の初代はリンタイ・チェン。彼は人類の共通の故郷(ふるさと)の星のある時代のある体制を転覆させた。その方法が奇抜過ぎる禁じ手を使ったことから、もと兵法家の孫という姓からチェンという姓に変えた。その禁じ手というのは、極めて簡単すぎて、誰もが驚嘆するほどであった。」(『ハリ・セルダンの生涯』ガール・ドーニック著)
わたしはロース・アヴァキャム。あなたの代理人を勤めるように、セルダン博士から指示されました。博士からの君への伝言を預かっている。
わたしは不法にも、ここトランターに来て、すぐ拘束されている。皇帝に直訴の手続きを希望します。こんな状態のために、やってきたつもりはない。もういいから、あなたの手でなんとかして下さい。故郷のシンナックスに帰らせて下さい。
君には大変迷惑だとは思うが、これが最上の策なのだよ。この日が来るのを彼はずっと待っていたんだよ。長かった!今日が、18年前にユーゴ・アマリルとセルダン博士がつくりかけた心理歴史学の最終章であり、これからが本当の初まりなのだ。そのユーゴも10年前に死んだ。
ユーゴとセルダン博士とは、チェンを徹底的に研究した。チェンの世界をレプリカまで研究所に設置、何度もシミュレーションを行った。そのために洞窟までこしらえて。「瞑想」とやらまでやった。
裏の裏をかく、虚を衝く、そして利用する、それでしか、我らの「ファウンデーション」はつくり出せない。チェンの行動パターンは、彼の先祖の兵法に制約されているとセルダン博士は読んだ。チェンは、セルダン博士の影響力を恐れて、博士のグループを銀河の果ての星に追放するように仕組んだ。
なんですって!それで、セルダン博士を「大烏」と言うんですね。銀河帝国が500年後には滅び、それに続く3万年後に新たな銀河帝国がやっと成立するという。でも、なんで僕だけ、処刑される運命なんですか?あのヒューミンさんは、そのために僕をここに導いたのですね。
心配しなくてもいい。君が処刑される確率はごく僅かだ。「プライム・レイディアントの照射では、1%未満だ」とセルダン博士は言ってた。
そんなこと信じられるか。
ガール君、よく聞いてくれ。チェッター・ヒューミンは、陰ながら、彼の特殊な能力で、帝国の政権をコントロールしている。
銀河の記憶と知識の集大成を管理する部門が、遥かな銀河のホライズンの彼方、我らが名付けたターミナス星で展開されるはずだ。
50人の中心スタッフを支える1万人のスタッフと3万人の家族が、そこに移住する。
その名目上、実際上の目的は『銀河百科辞典』編纂財団だ。
次の銀河帝国の到来を限りなく短くするということが最上の策になる。
そして、君ガール・ドーニックが51人目の数学者であり、同時に統括責任者となる。
なんですって!
https://youtu.be/9KL7ZoVPKJI
yatcha john s.
『Foundation の夢』「 聴かずんばこれを去らん 」第二部その2