ライブハウスに声を取り戻した下北沢にて'21
下北沢にて'21に参加しました。
芸人としてでもなくバンドとしてでもなく、袖からステージを見守っていました。
音楽と笑いのパワー、素晴らしさを実感体感しました。
今回はそんなおはなしです。
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秋の風が少し寒さを纏い、もうすぐ冬を連れてくる予感がしてきたとある日に1通の連絡が入りました。
相手はTHEラブ人間というバンドの金田康平でした。僕は彼のことを「大将」と呼んでいます。理由は全く覚えていません。
でも昔から大将と呼んでいます。
どうしたのですか?と返事をすると
「下北沢にてを今年も開催するのだけど、是非とも吉本芸人に出て欲しい!」
とのこと。
下北沢にてとは、下北沢の街を会場にした音楽サーキットフェス。THEラブ人間が主催し、今年で12回目の開催となります。
我々吉本の芸人は2年前に下北沢にてに参加させていただきました。総勢20組くらい出たのではないでしょうか?ニューヨークや空気階段なども出演していました。
そんなイベントが今回、様々な協力や理解を経た上で通常開催することとなりました。
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話を戻し、大将・金田康平からの呼び出しを貰い僕は渋谷の喫茶店へ。
お久しぶりですねなんて話をしながら苦いコーヒーをすすり、金田康平は口を開きました。
「ライブハウスに声を取り戻したい」
僕はどういう事なのだろう?と思いながら話の続きを聞きます。
「今は規制があって前みたいに声を出したり歓声をあげたりできない状況で。正直バンド側もやり辛いし、お客様もどれだけ楽しめているのかわからない。やっぱり寂しい。」
確かにその通り。今までのライブハウスとは違う雰囲気にこの数年で変わってしまったのは実感している。
「でも、笑い声って不可抗力というか我慢できないものだと思ってて。だからお笑い芸人の皆様の力を借りて、ライブハウスに声を取り戻したいんだよね」
素敵なことではないですか。
笑いの力で活気、そしてライブハウスに失われた声を取り戻すなんて。
その言葉を聞いて僕は今回の下北沢にての出演をすることに決めました。
ですがここで事件が発生します。
開催日時を聞きスケジュールを確認したところ、なんとさっきまで入っていなかった相方ひとりの仕事が確定で決まっていました。
これには驚きました。こんなにタイミングの良い事があるのでしょうか。良いのか悪いのか。それは置いておいて。
これで僕らの出演は無くなりました。
金田康平と2人でマジカヨという話をしたのですが、乗りかかった船ですし、何より金田康平の思いに心を動かされたのは事実。
そして僕は出演ではなく、吉本芸人ステージの運営に回ることになりました。
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なにはともあれまずは芸人のキャスティングです。
僕は以下の点を考えました。
・前回下北沢にてに出演したことがある
・THEラブ人間と面識や関係性がある
・音楽イベントでネタをやることに抵抗がない
・音楽との親和性
以上のことを踏まえて僕が声をかけさせていただいたのが
アイロンヘッド、入間国際宣言、サンシャイン、しゅんしゅんクリニックP、大自然、ダイヤモンド、トニーフランク、ナミダバシ、西村ヒロチョ、マテンロウ、やさしいズ
このメンツを決めるまでには時間はかかりませんでした。前回出演経験がある人も居れば、初登場ですが僕が絶対なる信頼を置いて出演を依頼した人も居ます。
そこから連絡をしたり、劇場に足を運んで直接出演のお願いをして周りました。
皆様ふたつ返事で快諾していただき僕はとても嬉しかったのを覚えています。
芸人の出演も無事決まり、下北沢にて公式サイトで発表された時、なんだか高揚感がありました。ワクワクというのでしょうか。
自分が出演するわけでもないのに、SNSでの反響をエゴサーチしてそれを喜んでみていました。
とにかく楽しみでしょうがなかったのです。
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月日は流れあっという間に当日。12/4。
芸人ステージは下北沢にての会場でも1番大きいであろうシャングリラ。
バンドの出番の前に10分ずつのステージで用意してもらっている。
僕は入れる時間の最速で会場入りさせてもらい、舞台監督さんや制作の方にご挨拶させてもらった。
なんてったって今日の吉本ステージの責任者は僕なのだから。
トップバッターのバンド、時速36kmから会場はパンパン。入場規制が即かかるという盛況ぶり。
そんな中嬉しかったのが、後輩のサンシャインというお笑いコンビの坂田が朝からやってきたこと。
彼はラジオ番組「スクールオブロック」の校長を務めていたこともあり、音楽が好きでバンドの皆様とも関係性が高い。
「頭っから楽しませて貰います」
どうぞ楽しんでおくれ。僕はそれが1番嬉しいです。
各芸人の入り時間前に会場の外で出迎えます。アテンドをするのも僕の仕事です。
芸人ステージの最初は先輩のアイロンヘッドさんと後輩のナミダバシにお願いしました。
この2組なら絶対に大丈夫という自信の元の組み合わせです。
まずはナミダバシが舞台へ。僕は袖で見守ります。
満員の会場。出て行って暖かい拍手。
つかみのフレーズもそこそこにストロング漫才スタイルで勝負に挑んだ彼ら。バッチリとウケを取って戻ってきました。
そして続いてはアイロンヘッドさん。物凄かったです。
お笑いの劇場でもないライブハウス、しかも音楽フェスのステージであんなに爆笑掻っ攫っていくのは尊敬でしかありませんでした。
だって拍手笑い起きていたのですから。
袖から見ていたミュージシャンの皆様も
「おもしろ!!」
と笑っていました。
また僕はとても嬉しくなりました。
2組のあとのバンド、w.o.dの皆様がアイロンヘッドさんのネタのくだりをトークに入れてくれて、それも会場は盛り上がって。
最初から本当にいい化学反応が起きていると実感しました。
そして次の出番はやさしいズと西村ヒロチョ。バンドは四星球。
僕がナミダバシとアイロンヘッドさんが大ウケだったよと言うとみんなから
「なんでそんな嫌なこと言うんですか」
と詰められてしまいました。
でも、本当に凄かったし、何よりこの2組も絶対に大丈夫だと思っていたから。
まずはやさしいズ。今回は漫才で出てもらった。
ネタの頭から終わりまでずっとお客様の笑いが絶えず。やさしいズって凄いんです。
そして次が西村ヒロチョ。
楽屋では四星球の北島さんともお話ししていて
「四星球さんの前でネタやれるの嬉しいなぁ」
と言ってくれてました。
いやいや、僕の方が嬉しいですよ。そんなこといってくれるなんて。
ネタは流石のロマンティック。最高のパフォーマンスを見せてくれました。
会場も袖のスタッフさんミュージシャンもずっと笑っていました。
僕もずっと笑っていました。
そして次の出番はサンシャインとしゅんしゅんクリニックP。バンドはTHE BOYS&GIRLS。
楽屋入りしたしゅんPから
「金田さん、いらっしゃらないですかね?」
と言われた。
理由は2年前。下北沢にてのステージに出演した時、金田康平を引っ張り出して一緒にしゅんPの持ちネタのヘイヘイドクターをコラボで踊ってもらったことがあり、それを今回もできればとのこと。
だが事前に僕は金田康平から、時間的に動けないかもしれないと言われていたので、今回は難しいかも…と伝えた矢先のこと。
下北沢の街を忙しく走り回っているはずの金田康平がやって来たのだ。
「これは絶対に来なきゃいけないと思って」
粋な計らいで、僕はまた飛び上がるほど嬉しかった。
楽屋で入念にフリの練習をする2人。
そして芸人ステージ。まずはサンシャイン。
ネタは僕が初めて見た時に稲妻が走ったネタをやってくれた。彼らのネタは心臓に突き刺さる。会場にも僕と一緒の気持ちの人が居れば最高です。
そしてしゅんしゅんクリニックP。
袖には緊張している金田康平。
呼び込まれて登場するとお客様からも盛大な拍手。
そしてコラボでのネタ披露。
下北沢にての風物詩になってくれれば嬉しい。
ちなみに後でTwitterでお客様がこうツイートしていたのを発見しました。
「2年前に観た時のこと思い出して笑い止まらなかったんだけど、またしても金田さんのダンスを見れて涙出るほど笑いました」
そうなんです。そう思ってくれる人が居ると思ってお願いしたのです。
そして次の組み合わせは入間国際宣言と大自然。バンドはWienners。
入間は千葉ゴウのキャラがお客様にハマっていた。
僕も袖でハマっていたし、袖のミュージシャンの皆様もハマっていた。オーライだった。
そして大自然。僕は驚いた。
こういう舞台は最初に軽くつかみやお客様いじりをして軽く空気を柔らかくしてからネタに入るのがベターなのだけど、彼らは違いました。
つかみなし。ストロング漫才スタイル。
劇場のネタ出番と同じように入り、そして劇場と同じように爆裂に笑いを起こして帰ってきた。
いかつ過ぎて感動すら覚えました。こんなの見たことがなかったから。
次の組み合わせはマテンロウとダイヤモンド。バンドは忘れらんねぇよ。
楽屋では金田康平も交えて談笑しながらの出番待ち。マテンロウは前回の2年前スケジュールが合わずだったが今回出てもらえた。金田康平もそれをとても喜んでいました。
そしてマテンロウの出番。会場がぶっ壊れるのではないかというくらいウケていました。
アントニーも大トニーも口を開けばお客様が笑っていました。この凄さを伝える語彙力が無い僕がとても悔しい。本当に凄いコンビです。
そしてダイヤモンド。
舞台に出て行った瞬間から会場を彼らの空気に変えていました。彼らが会場に合わせるのではなく、お客様が彼らに合わせにいっているのが肌で感じました。そして拍手笑いたっぷり。ベンティ。
この同期2組を並べられて良かったです。
そしてあっという間に最後。トリを務めるのはもちろんTHEラブ人間。
そして芸人ステージはトニーフランクにお願いした。
最後はトニーフランクだと僕はずっと決めていて、それを快諾してくれたのもとても心強かった。
音楽と笑いのネタをやっているのはトニーだし、必ず会場を沸かせに沸かせてくれるのを僕は確信していたから。
そして予想通りの大爆発。こういうステージが似合うし、最高に輝いていました。
楽屋に戻ってからも賞賛の嵐でした。
僕の仕事はこれでおしまい。
最後はTHEラブ人間のライブを観させてもらいました。
バンドのライブではお客様は声を出せないけど、みんな心の中で歌い叫び拳を上げていました。
全バンドが全部そうでした。
その失われた声の部分を、芸人の皆様が取り戻してくれたと僕は思います。
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あっという間に終わった下北沢にて。
僕は袖でずっと見守っていました。
ライブ会場に声を取り戻すという目的は果たせたのでは無いかと思います。
そのお手伝いができて感無量でした。
次もあれば必ず僕も舞台に立ちたいと思います。
最後に金田康平が僕にこう言いました。
「今日からあんたが大将だ!!」
僕はその言葉だけで満足です。
出演してくれた芸人の皆様ありがとうございました。絶対に間違いのない最高のメンツだったと思います。僕は鼻が高いです。
皆様のおかげです。お疲れ様でした。
そしてこんな無茶なお願いをふたつ返事で対応してくれたマネージャー、ありがとうございます。本当に感謝です。
最後に下北沢にてに参加したお客様へ。
また下北沢にて会いましょう。
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