コラム: 異常なければそれで良い患者と、異常を見つけないと気が済まない医者
噛み合わない医師と患者たち(2)
<本記事のまとめ>
患者さんの受診動機を医師が見誤ると噛み合わない
・症状がつらいので受診(=異常を見つけて対処して欲しい)
・症状はつらくないが不安なので受診(=異常がない事を確認したい)
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Dr.Y: 次の方、どうぞー。
足立さん: 失礼します。
Dr.Y: 足立さんですね。今日はどうされましたか?
足立さん: 今朝から何となく息苦しくて。
Dr.Y: もう少し詳しく教えて下さい。
足立さん: 朝起きたら息がうまく吸えないような気がして、それがずっと続いているので気になって。
Dr.Y: 咳は出ますか?
足立さん: 出ません。
Dr.Y: 胸の痛みは?
足立さん: ありません。
Dr.Y: これまで何か重大な病気をしたことは?
足立さん: それもありません。
Dr.Y: ではちょっと指を出してください・・・うん、エスピーオーツー98%。酸素は足りてますね。
足立さん: 良かったです。
Dr.Y: ちょっと聴診しますね。吸って〜吐いて〜・・・呼吸音もきれいですね。
足立さん: あー良かったです。
Dr.Y: 肺炎や気胸などあるかもしれません。胸のレントゲンとりましょう。
足立さん: あ、そうですか。そうですね。何かあったら困りますもんね。
<胸部レントゲンを撮影終了>
Dr.Y: 胸のレントゲンは問題ないですね。
足立さん: 本当ですか!いやーありがとうございます。安心しました。
Dr.Y: どうして息苦しいんですかね。おかしいな。炎症反応が上がっていたり、貧血とか凝固系異常などないかな。血液検査もしてみましょうか。
足立さん: え、まだ検査するんですか?
Dr.Y: まだ原因が特定できていないので。採血室に行ってきてください。
足立さん: 分かりました。
<血液検査終了>
Dr.Y: やっぱり何も異常ないですね。どうして息苦しいのかなー。
足立さん: でも、詳しく調べてくれて良かったです。ありがとうございました。
Dr.Y: まだ息苦しい原因が分かっていませんから。
足立さん: え、まだ検査するんですか?
Dr.Y: そうですね。心臓は大丈夫かな。気管支に異常があるのかも。
足立さん: いったん、家に帰って様子を見ようかしら。
Dr.Y: いや。まだです。心電図もやってみましょう。
足立さん: いやー、もう結構調べてもらったので、もう大丈夫です。
Dr.Y: あと、肺機能検査も。
足立さん: だからもう大丈夫ですって。
Dr.Y: だって、息苦しい原因、まだ分かっていませんよ?危ない病気かもしれませんよ?
足立さん: 私、何かあったら困るなと思って来ただけなんです。
Dr.Y: えっ?
足立さん: もしかしたら息苦しいのは私の気のせいかもしれないですし。
Dr.Y: ・・・そうなんですか?
足立さん: 症状自体はとても軽いので。不安で来ただけなので。何もない事が分かって安心しました。
Dr.Y: 私は、せっかく来てもらったのに原因をはっきりさせられなかったら申し訳ないと思って。
足立さん: 異常がないならそれで良いんです。安心したら、なんだか息苦しいのも落ち着いてきました。
Dr.Y: 良かったです。では、いったん様子を見ましょう。また息苦しくなったり別の症状が出てくるようならまた受診してくださいね。
足立さん: はい。分かりました。いろいろ丁寧にありがとうございました。
Dr.Y: こちらこそありがとうございました。お大事になさってください。
患者さんの小さな訴えから病気のサインを見逃すのは良くありませんが、何も異常がなければそれを伝えるだけで解決する場合もあります。
患者さんの様子によっては、「あなたは症状を何とかしたくて受診したのですか、それとも不安なので念のため受診したのですか」と早い段階で聞いてしまう事もあります。
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