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コラム: 「何かあるはず」という患者と、「何もない」という医者

噛み合わない医師と患者たち(3)

<本記事のまとめ>
・症状があって受診しても「何もありません」と言われる事がある。
・「経過観察」とだけ言われてしまったら、緊急性はないのか、再診の基準などを確認すると良い。


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Dr.Y: 次の方、どうぞー。

足立さん: 失礼します。

Dr.Y: 足立さんですね。今日はどうされましたか?

足立さん: 今朝から何となく息苦しくて。

Dr.Y: もう少し詳しく教えて下さい。

足立さん: 朝起きたら息がうまく吸えないような気がして、それがずっと続いているので気になって。

Dr.Y: その他に何か症状はありますか。

足立さん: 他は特にありません。

Dr.Y: ではちょっと指を出してください・・・うん、エスピーオーツー98%。酸素は足りてますね。

足立さん: 本当ですか。なんだか苦しい気がするんですけどねえ。

Dr.Y: ちょっと聴診しますね。吸ってー吐いてー・・・胸の音もきれいですね。

足立さん: でも、やっぱり今もちゃんと吸いきれてない感じです。

Dr.Y: そうですか・・・では肺炎や気胸などあるかもしれませんから胸のレントゲンとりましょう。

足立さん: お願いします。

******胸部レントゲン終了******

Dr.Y: 胸のレントゲンは問題ないですね。

足立さん: 先生。なんだか肺が膨らんでない気がするんです。

Dr.Y: でも肺もきれいですし、胸の動きも良いですけどね。

足立さん: 何かあると思うんです。他の検査とかでも確認してもらえませんか。

Dr.Y: うーん、大丈夫だと思いますけどね。そしたら血液検査もしてみましょうか。炎症反応が上がっていたり、血栓のような凝固系異常があるかもしれないですし。

足立さん: 心臓は大丈夫なんでしょうか。

Dr.Y: うーん、まあ脈も正常ですしね。

足立さん: 100%大丈夫と言い切れますか。

Dr.Y: 100%大丈夫とは言えないです。・・・じゃあ心電図くらいはとっておきますか。

足立さん: はい。原因をはっきりさせたいんです。それでは採血室と心電図室に行ってきますね。

******血液検査終了******

Dr.Y: やっぱり何も異常ないですね。どうして息苦しいのかなー。何か今心配事とか寝不足とかあったりします?

足立さん: メンタルのせいにするんですか。

Dr.Y: いえ。でも、現時点で酸素も足りてるし、肺もきれいで、他の原因もあまり見当たらないもので。

足立さん: それじゃ困ります。ちゃんと原因を探してください。

Dr.Y: 足立さん。異常がないのに越したことはないんですよ。

足立さん: 苦しいのが私の気のせいだとでも?

Dr.Y: そうは言いません、ただ体に異常なくても一時的な不調が息苦しさにつがなるという事もありますし、

足立さん: 確かに今仕事が忙しくてストレスは結構ありますけど。

Dr.Y: 症状が出てからまだ間もないですし、

少なくとも肺炎や気胸や血栓のような緊急性のある病気ではなさそうだから、少し様子を見てもよいのではないかということです。

足立さん: そうですか。苦しいから何かあるかもって思ったら不安で不安で。でもちゃんと筋道だてて話してもらったら安心しました。

Dr.Y: 良かったです。では、いったん様子を見ましょう。

足立さん: そうですね。安心したら、なんだか息苦しいのもとれてきました。

Dr.Y: もし症状が強くなったり他の症状が出てくるようならもう一度来てください。

それから症状が変わらなくても数日間持続する場合も、もう一度来てください。

その時はCTとか肺機能まで検査した方が良いかもしれないので。

足立さん: はい。分かりました。いろいろ丁寧にありがとうございました。

Dr.Y: こちらこそありがとうございました。お大事になさってください。


「何か異常があるはず」と思って来院する患者さんに対し「何もない」と言い切るのは難しいです。

患者さんの症状が病気ではなくその日のコンディションやメンタルに起因している場合と、本当に病気に起因しているがまだ軽すぎて異常がとらえられない場合が混在しているからです。

ただし、それは医者側の論理であって、患者さん側は「何もないので経過を見てください。」とだけ言われても具体的な指示が提示されていないので困ってしまいます。

もし医師から「経過観察してください」とだけ言われて不安を感じる時は、「緊急性はないのか」と「どうなったらもう一度来たほうが良いのか」の2点を確認してみると良いかもしれません。


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