見出し画像

喘息(8) 正しく吸ってしっかり効かせましょう


この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。

主な登場人物
Dr.Y:
総合病院に勤務する呼吸器内科医。
吾妻さん:40歳女性、2児の育児をしながら市役所に勤務している。ここ数ヶ月咳が続くためDr.Yの外来を受診し、喘息と診断される。


1. 「ホー吸入」とは

吾妻さん「吸入の時間帯はどのように設定すれば良いですか?内服薬だと食後とかいろいろ決まっていますよね」

Dr.Y「特に決まりはないので、日常生活の中でのルーチンに組み込みやすい時間帯を自由に選んでください。ただし、食前に吸った方がうがいで取りきれなかった口の中の粒子をさらに食事と一緒に洗い流せるので、副作用が出にくいと言われています」

吾妻さん「1日1回のタイプで朝晩どちらに吸うかも自由ですか?」

Dr.Y「はい。もちろん、喘息は夜に悪化しやすいので夜の時間帯に吸入する方が理には適っていますが、それよりも毎日忘れずに安定して吸えることが圧倒的に重要です」

吾妻さん「なるほど。ちなみに、これらの吸入薬は吸う前にどのくらいしっかり息を吐いておく必要があるのか分からないです」

Dr.Y「ある程度吐いておかないと、吸う余力がなくなって十分に気管支に入っていかないですが、頑張って吐きすぎるとそれが刺激でむせたりしてしまうので、軽く無理のない程度に吐きながら吸うぐらいで良いです

吾妻さん「最大限吐こうとはしなくて良いわけですね」

Dr.Y「はい」

吾妻さん「あと、実際に吸ってみると、しっかり気道に吸い込めているか自信がないです。吸い方次第でなんとなく口の内側の壁や舌に粒子が引っかかってしまっている気がして」

Dr.Y「そうですね。吸うときにいかに口の内側に粒子をくっつけないようにするかは重要です。特に舌が邪魔をして、そこに粒子の大部分がトラップされてしまうことが多いので、気をつけてください」

吾妻さん「具体的にどうやって気をつけるんですか」

Dr.Y「喘息学会では『ホー吸入』というものが薦められています」

吾妻さん「『ホー吸入』とは?」

Dr.Y「吸う前に息を軽く吐いてくださいと言いましたが、その際の吐き方を『ハー』でも『フー』でもなく、『ホー』と言いながら吐くのです」

吾妻さん「『ホー』と吐くと何が良いのですか」

Dr.Y「『ホー』と吐くことで舌が下がるので、吸入の際に粒子が舌に邪魔されなくなります」

吾妻さん「なるほど、やってみると確かに舌が下がります!この状態を保ったまま吸うんですね!」

独立行政法人環境再生保全機構 (ERCA)ホームページより

Dr.Y「その通りです」

吾妻さん「その他に何か注意点はありますか?」

2. 吸入したら5秒以上の息止めを!!

Dr.Y「なんと言っても、吸入後の息止めが重要です。吸入後にすぐ息を吐いてしまうと、せっかく気道に入った粒子が沈着する前にまた吐き出してしまうことになります」

吾妻さん「せっかく吸ったのに吐き出しちゃったら全く意味がないじゃないですか!」

Dr.Y「そうなんです。デバイスによっては息止めが不要なものもありますが、混乱を招きやすいので、吸入薬は一律で息止めが必要と指導しています」

吾妻さん「だいたい何秒くらい息を止めれば良いですか?」

Dr.Y「5秒くらい必要ですね」

吾妻さん「その間、特に吸入の刺激でむせないように頑張る必要がありそうですね」

Dr.Y「はい。こうした吸入の仕方というのは非常に大事で、ちゃんと吸えているかどうかで効き目が全く変わってくるので、注意してください」

吾妻さん「そう言われると、ちゃんと正しく吸えるか自信がなくなってきました」

Dr.Y「処方してもらうときに、薬剤師の方にしっかり教えてもらってください。デモ機などで確認してもらえることも多いので、初回処方時だけでなく、定期的に薬剤師さんにチェックしてもらうことをお勧めします

吾妻さん「分かりました。定期的にチェックしてもらえれば安心です」

3. 吸入後はクチュクチュペーとガラガラペーを忘れずに

Dr.Y「あと、吸入した後はうがいを忘れずに」

吾妻さん「うがいしないとどうなりますか?」

Dr.Y「吸入後のうがいを怠ると、粒子が口の中や喉に残ってしまうので、口腔カンジダや声枯れの原因になります」

吾妻さん「口腔カンジダってなんですか?」

Dr.Y「口の中に生えるカビです。吸入薬の粒子に含まれるステロイドが局所的に免疫を下げてしまうわけです」

吾妻さん「口の中にカビが生えるなんて、想像しただけでも怖いです。声枯れはどうして起きるんですか?」

Dr.Y「喉の声帯という声を出す器官の筋力がステロイドの影響で落ちてしまうことが原因と言われています。後は粒子に含まれる添加物の影響など、いくつかの原因が考えられています」

吾妻さん「それらの副作用を減らすには、うがいをして口や喉に残った粒子を洗い流さなくてはいけないわけですね」

Dr.Y「その通りです。クチュクチュペーとガラガラペーの両方が必要です

吾妻さん「何回くらいやれば良いでしょうか」

Dr.Y「決まりはありませんが、クチュクチュペーとガラガラペー、それぞれ1回5秒×3回ずつを推奨しています」

吾妻さん「それにしても吸入薬ってただ吸えば良いだけだと思っていましたが、色々コツや注意点があって奥が深いんですね」

Dr.Y「そうですね。最大限の治療効果が出るように正しい吸入法を心がけましょう」


(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。診断や治療については自己判断せず、必ず主治医に相談してください。

参考文献:
日本喘息学会 喘息診療実践ガイドライン2024(協和企画)
患者目線からみた吸入療法支援(株式会社アドメディア)

いいなと思ったら応援しよう!