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喘息(6) 喘息治療ではステップアップよりステップダウンを

本記事のまとめ
・安定期の重症度は症状の頻度を参考に段階的に決定する
・基本は吸入ステロイド、重症度によりその他の喘息治療薬を組み合わせる
・症状が落ち着いてきたら薬の種類を減らす(ステップダウン)
・吸入薬は合剤や吸入方法など様々な種類がある


Dr.Y「では、実際の治療薬の選択に移りましょう。まずこの表を見てください。喘息症状の重症度を段階別に示したものです」

吾妻さん「これを見ると、喘息の重症度って、症状の頻度が大きな要素なんですね」

Dr.Y「発作を起こしている時の重症度はまた別なんですが。」

吾妻さん「表の下2列は検査値ですか?」

Dr.Y「はい。肺機能検査や、ピークフローという自宅で行うことのできる簡易検査による測定値です。ただ、初めて喘息と診断された人はピークフローなんて持っていない事がほとんどですし、患者さんの症状に関する訴えの方が重要だと思っています」

吾妻さん「症状に日内変動があるのが喘息ですしね」

Dr.Y「このように症状の頻度が重要なので、病院にいない時の自分の症状を患者さんがきちんと伝える必要があります」

吾妻さん「責任重大ですね」

喘息ガイドライン2021より引用

Dr.Y「吾妻さんは、毎日症状が出ているみたいなので、中等症持続型(STEP3)に相当しますね」

吾妻さん「結構高いSTEPがついてしまいました。実際つらいので納得といえば納得なんですが」

Dr.Y「これは私の印象ですが、STEP2やSTEP3以上の症状になって初めて病院を受診される患者さんの頻度が高い気がします」

吾妻さん「STEP1くらいの頻度だと、病院受診しなくてもある程度我慢できちゃうんでしょうね」

Dr.Y「症状が軽いので喘息のような慢性疾患があるかもしれないとは思わないわけです。でも本当はSTEP1やSTEP2でも気道に炎症がくすぶっている事に変わりはないので、きちんと受診するべきなんですが」

吾妻さん「そしてこのSTEPによって治療内容も変わってくるんですか」

Dr.Y「その通りです。吾妻さんのSTEP3だと、吸入ステロイドと、その他に1〜2種類の喘息治療薬を組み合わせます。以前も出てきた下の図ですね」

喘息ガイドライン2021より引用・改変

吾妻さん「えっいきなり3種類も始めるんですか!?」

Dr.Y「初めにしっかり症状と炎症を抑えてやって、その後コントロール良好ならSTEP3→STEP2→STEP1の順に種類を減らしてます。このプロセスを『ステップダウン』と呼んでいます」

吾妻さん「『ステップダウン』があるなら『ステップアップ』もあるんですか」

Dr.Y「はい。現在の治療で効果が不十分だった時は、残念ですが、一段階上のSTEPの治療に移ります。これを『ステップアップ』と言います。ただ、そういう状況は極力避けたいところです」

吾妻さん「ビジネスの世界ではみんなステップアップしたがるのに、喘息の治療では反対なんですね」

Dr.Y「そうです。逆にステップダウンして居心地の良いところに落ち着くのが喘息において理想のキャリアプランです」

吾妻さん「なるほどー」

Dr.Y「今回、吾妻さんには初回治療として、吸入ステロイドの他にLABAという気管支を拡げる薬、そしてLTRAという飲み薬を併用します」

吾妻さん「はい」

Dr.Y「そして、今回は吸入ステロイドとLABAが合わさって一つの吸入薬に入っている合剤を使います。なので結果的に、処方する薬は2種類になります」

吾妻さん「吸入ステロイドとLABAの合剤、それからLTRAですね。ん?という事は、本来はLABAも吸入薬なんですか。」

Dr.Y「はい、以前はホクナリンテープとかツロブテロールテープという貼り薬が使われていました」

吾妻さん「なぜ吸入薬が使われるようになったんですか」

Dr.Y「この薬には動悸などの副作用があるのですが、貼る薬より吸入薬の方が、その副作用が目立たない事が理由の一つです。もちろん今でもこれらの貼り薬が使われるケースもありますが」

吾妻さん「そうか、貼る薬は薬の成分が一回血液中に入って、そこから気管支に作用する前に一回血液中に入るので副作用が出やすいんですね」

Dr.Y「そうです。吸入ステロイドと同じ理由です」

吾妻さん「こういう吸入薬って、よく目にします。でもいろんな種類を見た事があります」

Dr.Y「吸入ステロイド一剤だけのものもあれば、LABAやLAMAなどとまとめて2剤、3剤をパックにしたような合剤もあって、それによって吸入器の見た目も変わっています」

吾妻さん「あれ、ステロイドとLABAの合剤だけでも5種類もありますね」

Dr.Y「同じ薬理作用の中でもこれだけ種類があるので、どれを使おうか迷ってしまいますね」

吾妻さん「これらは何が違うんですか?」

Dr.Y「吸入して気道の壁に結合してしまえば、その後の薬の働きはある程度一緒です」

吾妻さん「じゃあ、選ぶ時にどうやって判断すれば良いんですか」

Dr.Y「1日あたりの吸入回数だったり、粒子の大きさだったり、吸入方法などが変わってくるので、それらで選びます」

吾妻さん「吸入方法が変わるというのは?」

Dr.Y「どれも器械の中に細かい薬の粒が入っているのは一緒ですが、DPI(ドライパウダー)と言って吸入口を加えて自分で吸い上げるものや、pMDIといってボタンを押して霧状に噴霧されたものを吸うものなどがあります」

吾妻さん「いろいろ種類があるんですね。私はどれにしよう」

Dr.Y「そうですね。実際に試してみましょうか。」

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