喘息(12) 現在のコントロール状況を評価しましょう
本記事のまとめ
・3ヶ月以上喘息症状がなければ、ステップダウンを考慮
・日頃から喘息がコントロールできているかの把握を
・喘息コントロールテスト(ACT)はセルフチェック用の簡便な問診票である
・ピークフローメーターにより、より客観的にチェックできる
・病院で行う呼気中一酸化窒素(FENO)検査も指標になる
吾妻さん: では、私の今後の治療予定はどんな感じですか?
Dr.Y: はい。先程お伝えしたように、吾妻さんは初期の治療反応としては非常に良いですが、吸入薬を止めてしまうとぶり返しやすいので、様子を見ながら少しずつステップダウンしていきます。
吾妻さん: ステップダウンというのは、喘息症状が良好の時に治療強度を少し下げてやる事でしたね。
Dr.Y: そうです。ステップダウンすることで、治療効果を維持しながらも治療費や副作用を少なくしていく必要があります。
吾妻さん: どのくらいでステップダウンを考慮するんですか?
Dr.Y: 喘息症状が3ヶ月以上コントロールされていたら、ステップダウンを考慮しましょうというのが一つの基準になっています。
吾妻さん: そんなに長いんですか?
Dr.Y: もちろん個人差がありますから、もっと早くステップダウンしてしまうケースもありますが、原則として、そのくらい慎重に進めていく必要があるということです。
吾妻さん: 早くステップダウンしすぎるとどうなりますか?
Dr.Y: 喘息発作によりぶり返してしまう可能性があります。
吾妻さん: ちなみに、「喘息症状がコントロールされていたら」というのはどういう意味ですか?
Dr.Y: 喘息の症状が出ないように治療継続することを「喘息をコントロールする」といい、症状がまったくない状態を「コントロール良好」といいます。
吾妻さん: 「症状がまったくない」といっても、「ヒューヒュー言わなくなった」とか「リリーバーを使わなくて良くなった」とか色々あると思うんですが。
Dr.Y: そうですね。これだけだと心もとないですね。いくつか指標があるんです。
吾妻さん: 指標とは?
Dr.Y: 自分で評価できる指標として喘息コントロールテスト(ACT)というものがあります。
ここ1ヶ月間の、
①喘息による日常生活の制限、
②息切れの頻度、
③夜間症状、
④リリーバーの使用頻度、
⑤自己満足度
をそれぞれ1〜5段階で評価してスコアにしたものです。
Dr.Y: 無断転載が禁じられているのでここには載せられませんが、検索エンジンで「喘息 ACT」と入れればたくさん出てきます。呼吸器内科のクリニックだと紙で置いてある事も多いので聞いてみても良いと思います。
吾妻さん: なるほど。これだと自分でチェックできますね!
Dr.Y: これで25点でトータルコントロール、20〜25点でウェルコントロール、20点に満たないとコントロール不良という事になります。1分、慣れれば30秒もあれば簡単にできるので、これを、毎回の外来の待ち時間の間にでもやって医師に見せるんです。きっと喜ばれますよ。
吾妻さん: なるほど。やってみます。1分以内にできるのなら簡単ですものね。
Dr.Y: はい。あとはピークフロー。
吾妻さん: ピークフロー?
Dr.Y: 自宅で測る簡便な肺機能検査みたいなものです。
吾妻さん: 確か肺機能検査は吸う力と吐く力があって、喘息では吐く力が落ちてるのでしたね。
Dr.Y: その通りです。ピークフローは、吐く力を評価します。思い切り吐いた時の空気の速度のマックス値を測定する事ができます。
これを毎日測定して、どのくらい安定した数値が出るか、というのが喘息のコントロールの指標になります。
吾妻さん: 便利で良いですね。安定していると、毎日高い数字が出るという事ですか?
Dr.Y: はい。毎日の変化だけでなく、1日に2回測る事によって、喘息に特徴的な日内変動がどの程度起きているかが分かります。
吾妻さん: 日内変動が大きいほど良くないという事ですね。
Dr.Y: はい。ピークフローメーターを自分で購入しないといけないのが難点ですが、このように非常に有用です。
吾妻さん: どこで購入するんですか?
Dr.Y: オンラインがメインですね。5000円以内で買えるものが多いです。買ったら、毎日測定して喘息手帳に記入するんです。
吾妻さん: 毎日測定して手帳に記入!?いや面倒くさいですよ。
Dr.Y: そんなに面倒ではないですよ。高血圧では血圧計を買わされて血圧手帳つけますよね。あれと同じですよ。しかもピークフローなんて血圧測るより時間かからないですから。手帳もアプリになってるものがあるようです。
吾妻さん: これら以外に病院で喘息のコントロール状況をチェックする検査などはないのですか?
Dr.Y: 呼気中一酸化窒素(FENO)という検査が最近では増えてきました。
ピークフローでは息を吐く力を評価しましたが、FENOでは吐いた息の中にどのくらい喘息の炎症が含まれているかを見ます。
吾妻さん: そうなんですね。
Dr.Y: FENOはモニタリングよりも診断の方でも使うのですが、次はFENOについて解説しましょう。