見出し画像

【書籍紹介】ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング(ブルーバックス)

研修医Z: あ、Y先生。お疲れ様です。今帰りですか?

Dr.Y: そうだよ。今帰り?

研修医Z: はい。病棟の指示出しも終わったので。そういえば、こないだ夜遅くに先生にそっくりな人が公園の近くを走ってるのを見たんですけど、先生じゃないですよね?

Dr.Y: 公園って大きな池のある公園?たぶん俺だと思う。見られてたか。笑

研修医Z: だいぶ夜遅くでしたけど・・・て事は、お子さんが寝た後に走ってるんですか?

Dr.Y: ランニングは大学のときからずっと続けてるからね。走らないと体調が悪くなるんだ。

研修医Z: 僕も最近ランニング始めたんですよ。研修医になってお腹にお肉がついてきてしまったので痩せたくて。でも、なかなかペースがつかめなくて。

Dr.Y: そんな風には見えないけれど。そういえば最近ランニングの本を読んだんだけど、おすすめのがあるよ。2017年刊行なので、少し前の本だけどね。

「ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング(ブルーバックス) 田中宏暁 著」


研修医Z: どうしてこの本を読んだんですか?

Dr.Y: 今年の初め頃から足底腱膜炎で治療しててね。よくランニングするから何か見直せる事はないかと思って。

研修医Z: それで、本読んで何か分かりました?

Dr.Y: ちょっと走り方が良くなかったかもしれない。自分の走り方を振り返るとずっとかかとから着地していたんだけど、足の指の付け根あたりで着地するフォアフット着地の方が良いと書いてあったよ。

研修医Z: どうしてフォアフット着地の方が良いんですか?

Dr.Y: フォアフット着地の方がソフトランディングできるらしい。かかと着地はフォアフット着地と比べて地面から受ける衝撃が3倍なんだって。

研修医Z: なるほど。でも何だか走りにくそうですね。

Dr.Y: 必然的に歩幅は狭くなるので、その分ピッチで稼ぐ事になるのだけど、足底腱膜やアキレス腱のバネ効果も使えるようになるので本来効率が良いみたいだよ。

研修医Z: 実際に試してみました?

Dr.Y: そうだね、その本を読んでからはずっとフォアフット着地を心掛けてるよ。最初は違和感が非常にあったけど、顎を上げるような姿勢を意識すると、自然とフォアフット着地になる事に気がついたよ。

研修医Z: 味噌は上半身にあったということですか?

Dr.Y: 最初は慣れなくて、同じランニングでも全然別の運動をしてるみたいだった。今でもちゃんと出来てるか自信ないけどね。


研修医Z: 走り方だけでなく、痩せるためにはどのくらいのペースで走るのが良いのかが僕はよく掴めません。

Dr.Y: 最初はやっぱりゆっくり走った方が良いんじゃないかな。

研修医Z: なぜゆっくり走った方が良いんですか?

Dr.Y: ゆっくり走った方がクエン酸回路がよく回って脂肪が消費されるからだよ。

研修医Z: クエン酸回路って何でしたっけ?

Dr.Y: 細胞のミトコンドリア内におけるエネルギー産生のための代謝経路だよ。

研修医Z: あっTCA回路の事ですね。学生の頃に習ったのを覚えています。確か、糖や脂肪の分解産物であるアセチルCoAがクエン酸に分解されるところから始まる回路でしたっけ。

Dr.Y: そう。その後の電子伝達系と合わせて大きなエネルギー源になる回路だよ。

研修医Z: どうしてゆっくり走った方がクエン酸回路がよく回るんですか?

Dr.Y: クエン酸回路でのエネルギー産生は組織への酸素運搬能力に依存するので、頑張りすぎると酸欠になると回路が滞ってしまうわけ。ゆっくり走れば、そのような状況を避けられるからね。

研修医Z: 逆にクエン酸回路がうまく回らないとどうなりますか?

Dr.Y: クエン酸回路が滞って、手前の解糖系ばかり亢進する事になるね。解糖系は糖のみのエネルギー代謝経路だから脂肪が使えなくなる上に乳酸が溜まってくるよ。

研修医Z: 糖だけをエネルギー源として使うのは良くないんですか?

Dr.Y: 脂肪に比べると、糖の体内貯蔵量は圧倒的に少ないから、あっという間にガス欠だね。

研修医Z: なるほど。じゃあクエン酸回路を回して、少ない糖を温存しながら脂肪をいかに効率よく使うかが大事ですね。

Dr.Y: そうだね。第4章にその辺のメカニズムが非常に分かりやすく書いてあってね。ここではその仕組みをハイブリッドカーのガソリンと電池に例えていて面白いなと思ったよ。

研修医Z: なるほど。脂肪が電池、糖がガソリン、ですね。加速ばかりしているとガソリンが枯渇してしまいますから、できるだけスロージョギングを多くして電池を消費してやった方が良いという事ですね。

Dr.Y: スロージョギングのペースの基準についても主観的な基準とか心拍数での指標などいろいろ書いてあるから読んでみるとよいよ。


研修医Z: 痩せるだけでなく速く走れるようにもなりたいんですが、そうしたらまた走り方を変えるんでしょうか。

Dr.Y: この本によると、そこもやはりスロージョギングが良いみたいだよ。

研修医Z: どういう事ですか?

Dr.Y: 早く走れるためには最大酸素摂取能力が大事だと言うんだよ。最大酸素摂取能力は、吸い込んだ酸素をどのくらいエネルギーに変えられるかの能力の事だよ。

研修医Z: 最大酸素摂取能力は具体的にはどんな要素で決まってくるのですか?

Dr.Y: 大きく分けて二つ。一つは心臓から送り出されて骨格筋に集められる血液量。つまり酸素の運搬能力・・・心肺機能だね。もう一つは骨格筋が酸素を消費する能力、すなわちクエン酸回路のあるミトコンドリアの数と機能。

Dr.Y: 特にミトコンドリアの機能が高いとクエン酸回路が滞りにくく、ピルビン酸がきちんと代謝されるので乳酸も溜まりにくい。これを乳酸閾値が高いというらしいよ。

研修医Z: でもミトコンドリアの機能を高める方法なんてあるんですか?

Dr.Y: 骨格筋のPGC-1αという遺伝子の発現が関与しているみたいで、これはトレーニングで発現量を増やせるみたいだよ。

研修医Z: どんなトレーニングで増えるのですか?

Dr.Y: これも乳酸閾値以下の運動、つまりスロージョギングという事になるね。さすがに負荷が軽すぎても発現が増えないみたいなので、少しハアハアするくらいのランニングが良いのではないかな。

Dr.Y: 他にも、ランニングは膝や心臓に負担をかけるのではないかという事や生活習慣病や認知症の予防効果についても書いてあって、とても面白かったよ。暇があったら読んでみては?

研修医Z: はい。勉強の合間に読んでみたいと思います。


いいなと思ったら応援しよう!