喘息(25) 風邪薬を飲んだら悪化?
0. 本記事のまとめ
・アスピリン喘息は、風邪薬や痛み止めに含まれるアスピリンという成分により悪化する喘息です。
・ジクロフェナクやイブプロフェンといった成分を含む薬も注意が必要です。
・鼻茸や嗅覚異常がある人はアスピリン喘息の割合が高いと言われます。
・喘息の患者さんは、これらの薬を使う前に主治医に可否を相談しておきましょう。
1. 喘息発作でしゃべれない患者さん
看護師:先生、急患です。お願いします!
Dr. Y:どうしましたか?
看護師:50歳男性。Zクリニックに喘息で通院していた方のようです。昼過ぎから急に咳が止まらなくなったみたいです。
Dr. Y:そんなに酷いんですか?
看護師:喘鳴が顕著で、咳がひどくてしゃべれないくらいです。横にもなれません。
Dr. Y:分かりました。見にいきましょう。
看護師:はい。処置室にいるので、お願いします。
Dr. Y:こんにちは。
関野:ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホゲホッ。
Dr. Y:こりゃひどい。ヒューヒューという音が聴診器を使わなくても聞こえてくるくらいですね。血中酸素濃度は・・・何とか保たれてはいるみたいですが、急がないと危ないですね。
関野:ゲホゲホゲホゲホッ、ゲーホゲホゲホゲーホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホッゲーホゲホゲホッ。
Dr. Y:今日から急に悪くなっちゃったんですか?
関野:はい・・・ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、実は・・・ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホーー、ゲホゲホッゲホゲホッ。
Dr. Y:咳がひどくてしゃべれないようですね。後でゆっくり聞くことにして、今は喘息発作の治療に専念しますね。
関野:ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ。
Dr. Y:ネブライザーで短期作動型の気管支拡張薬を吸ってもらいましょう。一緒に、ステロイドの点滴もしましょう。
看護師:ステロイドいくつか種類ありますが、どれにしますか?
Dr. Y:短時間作動型で。念の為、コハク酸の入ってないものにしましょう。
看護師:分かりました。
2. まさかの風邪薬が影響?
Dr. Y:落ち着いてきましたね。
関野:ありがとうございます。やっと自己紹介ができます。関野(せきの)と申します。
Dr. Y:元々は喘息で通院されていたんですね。
関野:はい。吸入薬をもらってコントロールしていて、とても調子良かったんですが。どうしてこんな事になってしまったんでしょう。
Dr. Y:何か普段と変わった事はありませんでしたか?アレルゲンの物質に曝露されてしまったとか、タバコの煙を浴びてしまったとか。
関野:いえ、そんな事ないですけどね。今朝から少し風邪っぽかったですが、いつも風邪引くくらいじゃこんなに悪くならないんです。しかも今回は大事を取って市販の風邪薬も飲んだんですよ。
Dr. Y:風邪薬飲んだんですか?ちなみに、その薬の名前を教えてもらえますか?
関野:Xという風邪薬です。ドラッグストアの「モトモトキヨシ」で購入しました。
Dr. Y:咳が出てきたのはその薬を内服した後ですか?
関野:そう言われると、そうですね。内服してから10分〜15分くらいしてから咳が出てきた気がします。・・・え、薬がまずかったって事ですか?
Dr. Y:関野さん、もしかして、喘息だけではなく鼻が悪かったり匂いが感じづらかったりしませんか?
関野:はい。F耳鼻咽喉科で、副鼻腔炎と言われています。匂いも感じにくいですよ。何だったかな、鼻の中にキノコだかシイタケだかそんな名前のものもあると言われています。
Dr. Y:鼻茸(はなたけ)ですか!?
関野:そうそう、それです。喘息と関係ありますか?
Dr. Y:やっぱり!!関野さん、おそらく、関野さんの喘息が急に悪くなった原因はその風邪薬の可能性が高いと思いますよ。
関野:どういう事ですか?
3. アスピリン喘息とは
Dr. Y:この風邪薬の中にはアスピリンという成分が入っているでしょう。
関野:はい。
Dr. Y:このアスピリンという薬で喘息が悪化してしまう人が一定数いらっしゃるんです。特に鼻茸がある人において、そのリスクが高いと言われています。
関野:そうなんですか!?確かに、今回飲んだ風邪薬は初めて飲む薬でした。
Dr. Y:アスピリンという成分が喘息の炎症を低くするCOX1という成分を、抑制してしまうんです。アスピリン喘息と呼ばれます。
関野:市販の風邪薬でそんなことが起きるとは思ってもいませんでした。
Dr. Y:アスピリンの他に、インドメタシンやイブプロフェンなどの成分も同様の作用があるので注意が必要です。
関野:でも先生、私の友人も喘息なんですが、その友人は風邪薬を飲んでも全然へっちゃらそうですよ?今回飲んだ風邪薬も、その友人に教えてもらったものなんです。
Dr. Y:アスピリン喘息は、喘息患者さんの約1〜2割程度とされています。なので、飲んでも大丈夫な方も多くいらっしゃるのです。
関野:どうやって、そういう人たちを見分けるんですか?
Dr. Y:まず鼻茸の有無はとても大事ですが、鼻茸がなくても重症の喘息患者さんや、これまで風邪薬を飲むと咳や鼻水が酷くなった事があるという訴えがある場合は注意します。
関野:なるほど。これからは、飲んでも良い風邪薬とそうでないものを主治医の先生に確認しておいた方が良いですね。
Dr. Y:そうですね。風邪薬だけでなく、痛み止めも同様です。頭痛持ちの方とか、生理痛などで痛み止めをよく使う人がいると思いますが、そういう人たちも喘息があるならきちんと確認する方が良いです。
関野:痛み止めは湿布とか塗り薬はどうですか?
Dr. Y:湿布や塗り薬でもアスピリン喘息が引きおこされる可能性があるので避けた方が良いですね。
関野:そうなんですね。ありがとうございます。かかりつけのZクリニックに戻ったら、主治医の先生に報告しようと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?