見出し画像

(自己紹介)そして、医師になる


いつも記事を読んでくださりありがとうございます。私は医師15年目。呼吸器内科の専門医です。総合病院やクリニックで外来診療をしながら、臨床研究などもしています。noteを始めて1ヶ月経ったところで、自分自身の事について書きたいと思います。


1. サンタさんに気を遣う少年

小学生の頃は、サッカーと川遊びが大好きな田舎の少年でした。
テレビゲームはあまりやらせてもらえず、友達の家でマリオカートとストリートファイターとプライムゴールをやるのが楽しみでした。

まだサンタさんを信じていた頃、クリスマスの朝に目が覚めると枕元にクリスマスプレゼントが置いてありました。包みを開けてみると、中身は横山光輝さんの漫画「水滸伝(すいこでん)」全8巻でした。

「水滸伝」は、中国の宋代末期を舞台にしたお話で、宋江や林冲といったヒーローが梁山泊という盗賊集団に入り悪い役人たちに立ち向かっていく話です。

これはこれで面白いのですが、小学1年生くらいの男の子に対するクリスマスプレゼントとしては、どうでしょう(笑)。親の教育方針だったのでしょうか。いずれにしても、その時の私は正直、嬉しい気持ちより落胆する気持ちの方が大きかった気がします。ラジコンやゲームが欲しかったですから。

しかし、雲の上からサンタさんが見ているような気がして、ここで落胆した顔を見せたらサンタさんが悲しい気持ちになるのではと思いました。そこで「ちょうど読みたかったんだー、嬉しいなー」と、雲の上のサンタさんに向かって一生懸命喜んでみせたのを覚えています。


2. 喧嘩したら褒められた

小学生の頃は、人の気持ちや顔色ばかり伺っていました。入っていたサッカークラブでも本当はミッドフィルダーをやりたかったのにゴールキーパーが足りないからとお願いされ、1年間もゴールキーパーを続けていました。

そんな私を見て、特に母親から「あんたはもっと自己主張しなさい。言われるがまま、されるがままはダメだよ」と怒られていました。

そんなある日、小学校の帰り道で友人と喧嘩になった事がありました。きっかけは鳥の糞を踏んだとか踏まないとかそんなくだらない事だった気がしますが、そこからお互いに手や足が出るくらいの喧嘩に発展しました。そこにたまたま母親が通りかかりました。

肘から血を流している私を見て、母親は少し驚いた表情をしましたがどちらかの肩を持つ事はせず、私はそのまま友人とともに小学校の担任の先生のもとへ連れて行かれました。結局、喧嘩両成敗という形になったのですが、その帰り道に母親が思いもかけぬ言葉をかけました。

「珍しく自己主張していたじゃない。喧嘩はよくないけれど、あの姿勢は良かったわよ」

喧嘩したのに褒められるというのも複雑な気持ちでしたが、今となっては少し分かる気がします。


3. 後輩のクーデター

中学からは硬式テニスを始め、大学でも硬式テニス部に入りキャプテンを務めたのですが、そこで事件が起こりました。

当時、レギュラーなのに練習の欠席が多い、試合の応援中に私語が多い、といった空気のゆるさにフラストレーションが溜まっていた私は、何人かの部員にかなり厳しく接してしまったのです。

当時の私にとっては部活の緊張感を維持するために自分が嫌われ役になっても良いと思っていました。一番大事なのは自分の考え方や部員への要求をきちんと伝える事。昔の自己主張できない自分は完全に姿を消していました。

しかしその伝え方が良くなかったのでしょう。結果、耐えかねた後輩の一人からクーデーターを起こされてしまいます。

その後5年間くらいは、その事を思い出す度に苦々しい気持ちになっていました。「あんな奴は卒業してもロクな医者にならないだろう」と思っていました。しかし最近はたまにその事を思い出しても、不思議なことにそういう苦々しい感情が全く浮かんでこないのです。

もっと違う伝え方ができたのではないか。自分と考えや行動指針の違う人と議論はしても良いけれど否定してはいけません。それに自分の部活に対するスタンスももっと柔軟にできなかったのか。色々な事を考えさせられました。何より自分が人間的に成長するきっかけを作ってくれた彼に感謝を伝えたいくらいです。


4. 外来での診療は、想像力と洞察力が試される

医師になり色んな患者さんと接していると、やはり色んな考え方、色んな人生観が存在する事に気づきます。医学的な正解と、その患者さんにとっての正解が必ずしも一致しないというのはザラにありますし、そこのズレをどうやって埋めていくのかというのは私にとって日々の診療の醍醐味の一つです。

そのためには、患者さんがどんな生活をしているんだろう、どんな家族がいるんだろう、どんな悩みを抱えているんだろう、逆にどんな事があると嬉しいんだろう、というような想像をかきたてられます。

患者さんの自分に対する印象も何となく透けて見える時があります。その時々での表情や言葉の節々、反応などを見て、「きちんと信頼してくれているな」とか、「ちょっと懐疑的な表情だな」とか「あまり納得してくれてないな」など感じる事があります。

患者さんの中には、始めから私のことを信頼してくれる人もいれば、途中から徐々に打ち解けてくれる人もいます。付き合いが長くなり全幅の信頼を寄せてくれる患者さんなどは、診察の時だけは家族の一員になったような気持ちになり、特に熱が入ります。

こんな風に、外来の患者さんと良い関係性を少しずつ構築していけた時、外来診療とは素晴らしいなと思います。


5. 患者さんと、どう向き合いたいか

呼吸器内科の病気は慢性のものが多く、完治より寛解や維持を目指すものが多いです。しかも病気や薬に関する知識は専門的で、普段病気に接してこない人たちからすると、あまりに難解です。

よく理解出来ていないんだけど取り敢えず通院だけしながら医師の指示に従っているという人も少なくありません。そういった患者さんたちとも疾患についての知識を共有し、医師も患者さんの考え方や人生観を理解し、一緒に病気に立ち向かっていく一体感を大事にしていきたいと思っています。


6. これからの予定

このnoteでは、そうした外来診療の延長線上と思って、投稿していきたいと思っています。患者さんとのやり取りは基本的に全てフィクションですが、バーチャルな外来がもう一つできたようで楽しく始められています。

個別の病気については、しばらくはこのまま喘息の事を書こうと思います。その後、もう一つの専門である間質性肺炎などについても書いていければと思います。それから現在コラムとして書いている「医者と患者」もネタが続く限り続けていきたい。人間同士なので当然生まれるすれ違いや共感など、こちらも基本フィクションですが、医師ならではの視点で書いていきたいです。

今後は、その他に「医学論文を患者さん目線で」とか、「病気がよく分かる短編小説」なども、そのうちに書いていきたいと考えています。これからも読んでいただけると嬉しいです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?