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喘息(16) アレルゲンを調べましょう


0. 本記事のまとめ

・アレルゲンへの曝露を避ける事で、症状改善につながる可能性がある
・View39はアレルゲン検索のための血液検査の1つである
・View39はアレルギーの成立そのものを見ているわけではない点に注意が必要

1. 喘息でアレルゲンを調べる理由

Dr.Y: 次の方、どうぞー。

吾妻さん: こんにちは。

Dr.Y: ああ、吾妻さん、こんにちは。調子はどうですか。

吾妻さん: ええ、落ち着いています。今日は、先日行ったアレルギー検査の結果を聞きにきました。

Dr.Y: 血液検査でしたね。もう結果が出ていますよ。

吾妻さん: その前に、そもそも何故アレルゲンを調べないといけなかったんでしたっけ?

Dr.Y: アレルゲンへの曝露(ばくろ)が喘息の悪化の原因となりやすいからです。

吾妻さん: アレルゲンといっても色々ありますよね。

Dr.Y: はい、吸入性アレルゲン、接触性アレルゲン、食物性アレルゲンがあります。中でも吸入性アレルゲンは喘息患者さんの最も一般的な原因です。

吾妻さん: 吸入性アレルゲンはどんなものが挙がりますか?

Dr.Y: 代表的なものは花粉、ダニ、ペット、真菌(カビ)があります。大きな括りでの分類なので、それぞれさらに細かく分けていく必要があります。

吾妻さん: これらを見つける事でどんなメリットがありますか?

Dr.Y: これらのアレルゲンを避ける事が喘息症状の改善につながる可能性があります。

Dr.Y: 例えば、英国のノースウィック・パーク病院の研究で、ダニの抗原量が低下した事で喘息の薬の減量と呼吸機能の改善につながったという報告があります (1)。

Dr.Y: 同じく英国のマンチェスター大学の研究で、ダニ侵入防止カバーを使用したところ、重症喘息の小児の増悪頻度が減少したという報告があります (2)。

Dr.Y: さらに、英国のカーディフ大学からの報告では、喘息患者をカビ対策をする群としない群にランダムに割り付けた所、喘息や鼻炎症状の改善が見られたというものもあります (3)。

吾妻さん: なるほど。という事は、自分にはどんなアレルゲンがあるかを把握すれば、それらを避ける事が治療につながる可能性があるわけですね。

Dr.Y: その通りです。

吾妻さん: では先日の検査結果を見せてください。

Dr.Y: はい。アレルゲン検査は色々種類がありますが、今回はその中でも様々な施設で行う事の多いView39という検査を行いました。


2. View 39の検査の見方

掲載している結果はBMLホームページより引用

吾妻さん: えーっと、このView39の結果はどうやって見るんですか?

Dr.Y: 各項目の横に「測定値」と書かれた列がありますが、それがIgEというそれぞれの物質に対する抗体の量を表しています。

吾妻さん: その横のクラス値というのは?

Dr.Y: アレルゲンの項目ごとにIgE値の高さを0〜6までの7段階に分類したものです。0が陰性、1が疑陽性、2以上が陽性です。

吾妻さん: では、クラス値が1または2以上の項目を中心に見ていけば良いという事ですね。

Dr.Y: そういう事です。


3. 「検査陽性」=「アレルギー発症」??

吾妻さん: 今までそのアレルゲンの曝露を受けても無症状だったのに、検査だけ陽性になってしまった場合、どんな風に考えればよいですか?

Dr.Y: ケースバイケースですが、検査が陽性だがアレルギーは発症していない可能性が考えられます。

吾妻さん: おっしゃる意味がちょっとよく分かりません。

Dr.Y: 先ほど言った通り、この検査では血液中のIgEという抗体の量を測っているのであって、アレルギーの発症そのものを見ているわけではないという事です。

吾妻さん: と言いますと?

Dr.Y: 特定のアレルゲンに対するIgE量が多いという事は、その物質に対してアレルギーを発症しやすい下地が出来ているという事です。

吾妻さん: 下地が出来ているだけじゃ駄目なんですか?

Dr.Y: はい。さらにこれらのIgEが肥満細胞という細胞と結合して初めてアレルギーが発症します。これを感作と言います。

吾妻さん: という事は、IgEがいくら多くても肥満細胞とくっついていなければアレルギーは発症していないということですね。

Dr.Y: その通りです。なので、IgEが高い(=検査が陽性だ)けれどアレルギーが発症していない、という事もありうるわけです。

吾妻さん: IgEがいくつくらいまで上昇したら肥満細胞と結合してアレルギーが発症するのでしょうか。

Dr.Y: 個人によって異なるので何とも言えません。

吾妻さん: うわっ考えれば考えるほど複雑ですねー。でも、ある物質に対するIgE値が高い人は、低い人と比べて今後アレルギーを発症する可能性が高いという事は言えますか?

Dr.Y: はい。それは言えると思いますね。

吾妻さん: 逆に陰性の項目はアレルギーが否定されていると言っていいですか?

Dr.Y: いえ。今回の検査では検出できなかった微量のIgEが存在している可能性があり、判定が陰性でも症状を示すことがあります。

吾妻さん: では、この検査結果と、これまでの実生活で経験したアレルギー反応を併せて評価するという事ですか。

Dr.Y: そのとおりです。

吾妻さん: それにしても、聞いた事のない名前の項目も結構ありますね。たくさんあってどこから見ればよいのか。

Dr.Y: 前半が吸入性アレルギー(花粉、カビ、動物の毛など)、ラテックスが接触性アレルギー、後半が食物性アレルギーになってます。

吾妻さん: 喘息の方が特に注意するのは吸入性アレルギーですね。

Dr.Y: まず、吸入性アレルギーの中で最も項目の多い花粉から見ていきましょうか。


参考文献
1. Platts-Mills TA, Tovey ER, Mitchell EB, Moszoro H, Nock P, Wilkins SR. Reduction of bronchial hyperreactivity during prolonged allergen avoidance. Lancet. 1982 Sep 25 [cited 2024 Sep 9];2(8300):675–8.
2. Murray CS, Foden P, Sumner H, Shepley E, Custovic A, Simpson A. Preventing severe asthma exacerbations in children. A randomized trial of mite-impermeable bedcovers. Am J Respir Crit Care Med. 2017 Jul 15 [cited 2024 Sep 9];196(2):150–8.
3. Burr ML, Matthews IP, Arthur RA, Watson HL, Gregory CJ, Dunstan FDJ, et al. Effects on patients with asthma of eradicating visible indoor mould: a randomised controlled trial. Thorax. 2007 Sep [cited 2024 Sep 9];62(9):767–72.

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