喘息(29) 難治性喘息と診断されたら
0. 本記事のまとめ
難治性喘息の治療選択肢には、生物学的製剤、気管支熱形成術(サーモプラスティ)などが挙がります。生物学的製剤は皮下注射、サーモプラスティは気管支鏡での処置です。いずれも高額医療であり予め治療の概略を把握しておく事が必要です。
1. 経口ステロイドも選択肢だが・・・
Dr.Y: これまで入念に調べてきましたが、十条さんは吸入薬を含めた薬物治療がきちんと行えているにも関わらず、効果が不十分であると言わざるを得ません。
Dr.Y: 以前は、この段階で経口ステロイドを長期的に使う事が多く見られました。
十条: 経口ステロイドというと、ステロイドの内服薬ですか?
Dr.Y: はい。今使ってもらっている吸入薬に含まれるステロイドを、長期的に内服摂取するのです。
十条: でもステロイドは吸入薬だったから副作用も少なかったわけですよね。内服になると、副作用のリスクが増えてしまうのではないですか。
Dr.Y: その通りです。ですから少量での投与に抑える必要があります。
十条: だいたいどのくらい少量ですか?
Dr.Y: 一般的に喘息発作などで一時的に使う量というのはプレドニゾロン20〜30mgくらい、プレドニン5mg錠だと1日4〜6錠くらいというのが多いのですが、長期投与になると1日あたりプレドニゾロン5mg程度が推奨されています。
十条: そのくらいだと、副作用が問題にならないのですか?
Dr.Y: いえ、このくらい少量でも長期投与になるとやはり肥満とか免疫不全などの副作用が問題になるので、できるだけ避けたい選択肢と言えます。
十条: 経口ステロイド以外には何か手立てはないんでしょうか。
Dr.Y: 難治性喘息の治療として選択肢に挙がるのは、生物学的製剤やサーモプラスティの2つですね (1)。
十条: それぞれどのような治療ですか。
2. 難治性喘息の治療選択肢
2-1. 生物学的製剤
Dr.Y: はい。まず生物学的製剤は皮下注射する薬です。喘息の原因となる炎症の経路を遮断するような抗体を注射して、炎症が起こりにくくします。
十条: 注射は1回打てばおしまいですか?
Dr.Y: いえ。製剤によって異なりますが、月に1回〜2回程度打ち続ける必要があります。
十条: その度に病院に来て打たないといけないのですか?
Dr.Y: 製剤によっては自宅で自己注射をできるものもあるので、そこはケースバイケースです。
十条: でも毎月注射を打ち続けるんですよね。医療費が結構かかってしまいますか?
Dr.Y: そうですね。医療費が高くなってしまうので、高額療養費制度などを利用していかなくてはいけません。
2-2. 気管支熱形成術(サーモプラスティ)
Dr.Y: もう一つは気管支熱形成術(サーモプラスティ)です。これは、炎症経路とは関係なく、狭くなった気道の壁を温める事で、周囲の平滑筋という筋肉の量を減らして内腔を拡げる処置です。
十条: 手術するんですか?
Dr.Y: 正確には、気管支鏡といって、気道に入れる内視鏡を使ってやります。
十条: 胃カメラの肺バージョンと考えて良いですか?
Dr.Y: はい。そう考えていただいて良いです。ただし、できる施設が限られているので、専門施設に紹介しなくてはいけません。
十条: 胃カメラと同じように考えると、処置は1日で終わるのですか?
Dr.Y: いえ。一度に全ての部位を温められるわけではなく右の気管支とか左の気管支とか何回かに分けて行うので、1日では終わりません。一定の間隔をあけながら何日かに分けて処置する事が多いようです。
十条: これらを行うとどのくらい効果が持続するんでしょうか。
Dr.Y: だいたい5年ほど効果が持続すると言われています(2)。これも高額になるので、高額療養費制度を利用する必要があります。
十条: 色々方法があるみたいで良かったです。でも自分がどれを選べば良いのでしょうか。
Dr.Y: 当然、患者さん自身で選ぶというのは困難なので、担当医師が推奨するという形になります。治療の適性などもありますから。これらの治療を選ぶ上で重要になってくるのが、タイプ2炎症の有無という概念になってきます。
十条: タイプ2炎症の有無ですか?全くわかりません。喘息の病態を分類するための指標でしょうか。
Dr.Y: はい。その通りです。これから説明しますね。
参考文献
1. 日本呼吸器学会 難治性喘息診断と治療の手引き (第2版) 2023
2. Wechsler ME, Laviolette M, Rubin AS, et al. Bronchial thermoplasty: Long-term safety and effectiveness in patients with severe persistent asthma. J Allergy Clin Immunol. 2013;132(6):1295-1302. doi:10.1016/j.jaci.2013.08.009
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