弁護士の/セミナーレポート/地味に効く(575)
法律事務所に所属する弁護士の講演・セミナーを、他の業界ではそれなりに一般的な「セミナー・イベントレポート」形式でまとめてみたらどうなったか、という話をつらつら。
きっかけはWantedly
兼業先のひとつ・インハウスハブ東京法律事務所では、インハウスロイヤーとして働くかたわら、自らの名前で弁護士業を営みたい弁護士の採用を目的としてWantedlyを運用している。
Wantedlyは採用のための募集記事だけでなく、募集企業の普段の様子やポートフォリオなど、種々のUpdatesを載せられるSNS要素もいくつか準備されていて、せっかくならその辺りも充実させようと企画していた中で、当時事務所に所属していた世古修平先生のセミナー登壇が決まる。
「"このセミナー受けてみた"みたいな記事書きませんか」
と、先生に言われたのが、セミナーレポートを書くことになった契機。
正直、イメージが湧かなかった。弁護士が話すセミナーに興味を持つ人(企業の法務部員、司法修習生、同業の弁護士の先生など)は、自分でセミナーの受講申込をし、リアルタイムできちんと受講して、自分の考えをまとめ、意見・感想をSNSで発信したり、受講が会社からの指示によるものなら、上司や同僚に報告書を書いて社内で共有したりするだろう。
このクラスタは真面目で勉強熱心で、自発的にアウトプットをする人たち。日頃から文章を書くことが得意な人たち。
とすると、「書いたとして、どんな人に刺さるんだろう、読んで価値を感じてもらえる記事にできるのかな」と半信半疑なところがあったのだけれど、せっかくのご提案に勢いで乗ってみることにした。
「受けてみた」だとPR記事/ステルスマーケティングと言われかねないので、検討の結果、事務所の事業企画職として、所属弁護士の登壇するセミナーを実況中継する体裁で進めることに。
書いたもの
これまで実際に書いたセミナーレポートは3本。以下からお読みいただけたらうれしいです。
書くにあたっての準備とタイムライン
セミナーの準備段階で、先生に投影資料を見せてもらう
どのような内容か、どんな骨子・構成で進むか、届けたいターゲットや、実際に申し込んでくれそうな受講者層はどのあたりか確認
セミナー当日は、事前にした準備をいったん全部忘れて、一受講者として受講。内容に関するメモをとって、受講した感想もメモ
セミナー前中後、SNSでの受講者の反応を確認
原稿書き始め
セミナー終了後、録画をセミナーの運営事務局から共有いただき、書いた原稿との齟齬がないかのファクトチェック
先生の最終確認後、リリース
で、わたしは何を書きたいの? いま何を書いているの?
これまでに書いた3本とも、死ぬほど苦労した。毎日原稿と自分と自問自答。「産みの苦しみ」ってこういうことをいうのだな、と、冗談じゃなく思った。
事務所名義で書くセミナーレポートは、セミナー受講者(受講済/未受講を問わず)だけではなく、事務所の弁護士に相談したいお客様、事務所で働きたい弁護士の先生にも読んでもらえる記事にする必要があり、それを思うと一文一文綴るごとに欲が出た。欲が出ると、文章の軸はブレる。書く、書き足したくなる、削ぎ落とす、その繰り返し。
似たような先例を探してベンチマークにすればよかったのかもしれないけど、あまりめぼしいものが見つからなかった。結果、「前例がないなら作ればいい」の精神と根拠のない自信を持ってゴリゴリ思うように書くことになるのだけれど、
見事に毎度行き詰まるわたくし。よくリリースできたものだなと本当に。
書くときに気をつけたこと
行き詰まりながらも、自分の中で持っていたルールは3つ。
セミナー動画・資料を見ればわかることは書かない
先生がセミナーで受講者に伝えたかったメッセージを汲み取って言語化する
先生がセミナーで受講者に見せなかった部分を、事務所の人間が客観的に伝える
2と3は特に気をつけたというか、先生本人が書くブログやレポートにはできないことで、ここが付加価値を出せる部分だと確信(半ば盲信)して書き進めていた。
この辺りになってくると「脱稿できない」「脱稿できる」が日々の口癖になってくる。花びらちぎりたくなってきてました。脱稿できない、脱稿できる、脱稿できない、脱稿…できる!
セミナーレポートの反響/効果
セミナー自体の反響は言わずもがななので、セミナーレポートを出したことにフォーカスして効果を列挙してみると
セミナーを見た人が「このセミナー良かったよ、レポートまとまってるよ」とURLを拡散してくれる
セミナー当時にセミナーの存在に気づいていなかった人が、レポートを読み、後追いでセミナー動画・資料を見てくれる
積極的にSNSでの情報発信をしてくれる人が、レポートを読んで、自分の考えと突き合わせて意見を述べて広めてくれる
セミナーを見た法務部員が「セミナー内容がとても役に立ったので、ぜひこの先生に相談したいです」とレポートを添えて上司に上申してくれて、クライアントの獲得につながる
レポートを読んだ弁護士の先生が「こんな仕事ができるなら事務所入所を検討したいです」とカジュアル面談を申し込んでくれる
ある程度抽象度を上げて書きましたが、ざっくりこんな感じ。想定していたものも、夢にも思わなかったものも。事務所にとっても、先生個人にとっても、一定のポジティブな結果が出せて、書いて良かったと思った次第です。
なので、
わたしが見つけられていないだけかもしれないけれど、法律事務所のスタッフのみなさまや、個人で仕事をされている弁護士の先生に、セミナーレポートの文化が広まったり浸透したりしたらいいな、と思います。
どうやって書けばいいのか、どんな内容にすればいいのか、みたいな意見交換や議論を、同じような境遇にいる方とできたら、さらにうれしい。
こんなレポート書いてくれるなら頼みたいよ、という法律事務所・弁護士/弁理士の先生方からのご依頼も、ほんのりお待ちしております。
おあとがよろしいようで。
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