凹んだソファー
今回、久々に緊急事態宣言が発令されたことで学校も立ち入り禁止、バイトもなくなってしまったため、実家に帰ることにした。
単純に金がない、収入がない人間にとって実家は天国のような場所だ。
ご飯は何もしなくても出てくるし、洗濯物は洗濯機に入れるだけで終わり、そして何より実家の風呂は温泉が出る。一人暮らしの部屋でシャワーしか浴びていない僕にとってこんな贅沢はない。
両親は僕が小学6年生の時に一軒家を建てた。父親が自衛隊だったのもあり、それまで官舎に住んでいた僕はとても心が踊ったのを覚えている。初めて自分の部屋に入った時はまるで自分の城を手に入れたかのような気分だった。
その時から僕の定位置になっているのがリビングのソファーだ。両親がニトリで買ってきた一般的な白いソファーだがこいつが恐ろしい。
30分も座れば必ず落ちる。
信じられないほどの眠気が襲ってくるのだ。
これは僕だけでなく両親、弟も必ずだ。
信じられないほど我が家の体型にフィットしたこのソファーは瞬く間に僕を惹き付け、自分の城だと思っていた部屋はただ寝る時だけ行く場所に成り下がった。
受験期は困った。ソファーに座りたい欲と座ったら寝てしまうという葛藤から逃げるため、家で勉強するのを辞めた。
大学生になり、一人暮らしを始めた後も、実家に帰る度にこのソファーが僕の定位置になっている。ただいつの間にか緑のカバーが付けられるようになっていた
当然のように今回の帰省でもソファーに座るのだが、何か違和感を感じた。沈み込みが一部浅い。父親に聞いてみると最近凹んで戻らくなったそうだ。その部分こそ僕の定位置だった。
物っていうのは1度少し壊れるとそこからどんどん壊れていくもので、気にせず座っているともっと凹んだ。
このソファーが好きなのでなんとか修理できないかと調べていたのだが、その過程でカバーを外したところあの真っ白だったソファー信じられないほど黄ばみ黒ずみで僕の知ってるソファーじゃなかった。これは捨てた方がいい
もうあの頃のソファーはいないんだ
このソファーと出会って早10年、たくさんの思い出、、と言った思い出もないが(寝ていたため)長らくお世話になった。僕も来年には社会人という年になり、帰った時にあのソファーがないのは辛いものだが、より良い自分だけのソファーに出会えることを目標に来年から仕事につくモチベーションにしよう
そんなこと思いながらこの凹んだソファーで横になりながらこれを書いた