子宮も取ってもらいたい
初めて行った病院は駅から近く便利で綺麗でした。クリニックでもらった紹介状とMRI画像の入ったCD-Rを受付で渡し、婦人科で問診票を記入し待ちます。
妊婦さんや赤ちゃん連れの家族が多く、病気の自分がここにいるのは場違いな気がして居心地の悪さを感じていました。
予約したときは待ち時間が長くなるかもしれないとの説明でしたが、それほど待たずに診察室へ呼ばれました。
MRI画像と本を見せてもらいながらの説明が始まります。
右の卵巣が16cm×10cmとかなりの大きさで悪性の可能性が高いので、開腹手術になるとのこと。
多くの人にとって最善の治療方法が標準治療というものです。卵巣がんの場合は手術で両方の卵巣と卵管+子宮+大網+リンパ節を切除するのが標準治療となっていて、必要があれば手術後に化学療法を行います。
両方の卵巣を取ると更年期が始まり骨折しやすくなったり血圧が上がって脳卒中や心筋梗塞になるリスクが高くなるそうです。しかし、私はまだ20代と若いので妊孕性温存のため巨大化している方の卵巣と卵管だけ摘出する方法も選べると。
「結婚されていますか」と先生から質問され、「していません、子供も欲しくありません」と答えました。
私は反出生主義者で出産する気は前からありませんでした。重たい生理に長年悩まされており、大学生の頃から低用量ピルを服用するようになってからは生理痛と出血量はマシになりましたが、出血の不快感や旅行へ行くときに生理予定日を避けなければと考える煩わしさは残ります。子宮なんて必要ない、取ってしまいたいと考えていました。
正常な方の卵巣は残し、悪くなっている方の卵巣と子宮を取ってもらえれば生理がなくなってちょうどいい!と思ったのですが、「片方の卵巣に悪性腫瘍がある場合、次に再発しやすいのはもう片方の卵巣なので、片側の卵巣を残して子宮は取るというのはがんの治療としては片手落ちという感じで普通はやらない」と先生はおっしゃります。
更に「子宮を取るなら同時にリンパも取るので胸の下まで切ることになる、片方の卵巣だけならへその下かへその横あたりまでになる」と。
胸の下まで切ると術後の痛みも酷いだろうし、大きな傷が残る…そこまで切ることになるとは知らなかったので、現時点では片方の卵巣だけ摘出してもらいたいですと答えました。
とてもわかりやすい説明で、現時点での考えはどうかと途中で何度か訊いてもらえましたし、信頼できる先生だと思えました。
先生の後ろに通路があり、そこから色んな看護師さん達が頻繁に様子をうかがいに来るのが見えます。次の患者さんが待っているからだと思いますが、私のMRI画像を見てこれは仕方ないなという表情で戻って行きます。
そんな状況にも関わらず、急かすことなく何か質問はありませんかと落ち着いた口調で訊いてくださるのがとてもありがたかったです。
一度診察室を出て、体が手術に耐えられるかの検査を受けに行きました。
もう17時前で技師の方も帰り支度をしていたと思うのですが、嫌な顔ひとつせずに心電図、レントゲン、採血、ピルを服用しているため脚に血栓ができてないかを確認するエコーをしてもらいました。
再度診察室へ戻り、血栓はできてないですね、来週月曜日に残りの検査をやりましょうとCTと心臓エコーの予約をして終わりました。