「同性パートナーが緊急搬送されました。自分のところに連絡はくる?」|平等病棟24時
看護師の目から見た医療現場と、マイノリティの生きやすさ・生きづらさにスポットを当てたコラム、第1回のテーマはパートナーを持つ多くの同性愛者の心配事。
Q、同性パートナーが緊急搬送されました。自分のところに連絡はくる?
「患者は緊急時の搬送先も、そこで出会うスタッフも選べないのが実情。同性パートナーは緊急連絡先として認めないと断られたら、戸籍上の家族でなくては緊急連絡先になれない法律はありません。と詰め寄るのもひとつだと思いますし、なんならこの記事そのものを見せていただいても大丈夫です」と語る木村看護師にお話を伺いました。
「同性パートナーが緊急搬送されました。
自分のところに連絡はくる?」
平等病棟24時
著者|木村映里
はじめに
はじめまして、木村映里と申します。バイセクシャルで看護師、現在は総合診療科の病棟看護師として入院患者のケアに携わっています。
医療現場は誰しも関わることを避けられない、いつ誰の生活の中心になるか分からない場所です。入院なんてすれば、自分が動けない環境下で頼れる人間関係がどれだけあるかを痛いほどに実感する経験となり、思いもよらない困りごとを生むことも少なからずありますし、私のようにネット・リアル共にバイセクシャルを公言して看護師として生きていると、セクシャルマイノリティの友人達から日々「こういうときどうすれば?」と質問を受けます。
そのため、今回より、セクシャルマイノリティが疑問に感じる医療現場の事情について、よくいただく質問に回答する形でお伝えしていこうと思います。
今回の質問は、「同性パートナーが緊急搬送されました。自分のところに連絡はくる?」です。
とてもよく訊かれる質問ですが、率直な回答は「時と場合による」です。
患者本人に意識はあるか?
患者は話ができる状態か?
すぐに退院できるような病気・怪我か?
一概に緊急搬送といっても状態は様々ですので、状況別にお伝えできればと思います。
例1.|救急搬送されたが比較的状態が軽く、患者本人がコミュニケーションを取れる場合
付き添いとして病院に一緒に来られ、そのまま入院された場合、一緒に入院の申込書を書いていただくのが通例ですが、その際の緊急連絡先の記載は、患者本人がパートナーとして認識している方であれば、戸籍上の家族であってもなくても構いません。申込書のご本人との関係は「パートナー」でも、医療関係者に関係を知られたくなければ「友人」でも大丈夫です。
これは同性パートナーに限った話ではなく、例えば私の経験では、独身独居の高齢者の緊急連絡先がお隣さんの場合もあるし、異性愛のパートナーであっても籍を入れていないこともよくあるし、出稼ぎ労働の外国人の緊急連絡先が会社の社長だったこともあります。
異性愛を前提とする旧来的な家族制度に則った医療現場での対応は既に崩壊しているのが現状です。医療現場では、患者の意思決定や問題解決の要となる方を「キーパーソン」と呼んでいますが、私自身は、キーパーソンにとって大事なのは患者と信頼関係を築けていることであって、血縁も法も本質的には関係ないと思っています。
例2.|救急搬送された患者に意識がなく、本人とコミュニケーションが取れない場合
意識不明の状態の患者に付き添って来院された場合、意識がある場合と同様、同性だからという理由でキーパーソンから排除されることはありえませんが、意識のある患者の付き添いよりは対応が慎重になる傾向が強いです。
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