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良いマーケターは良い消費者であるべき。お買い物からインサイトを取り出す5つの方法。

先日こんな投稿をXでしたら、イイねやリポストも多くいただいてありがとうございます。

みなさんお買い物好きですね笑

僕も大好きです。

年代的に物欲のある年代じゃない?というステレオタイプ的な話で終わると勿体無いので、少しこの話を深掘って考えてみようと思います。みなさんのお役に立てたらうれしいです。

「良いマーケターは良い消費者であるべきだ」――それって当たり前じゃない?と思う方もいるかもしれません。でも、実際に仕事で忙しくしていると、自分が普段どうやって商品やサービスを選んでいるのかを振り返る機会って意外と少ないですよね。

いま、データから読み取ってそれを元に改善するのはあたりまえ。売上やアクセス数などの数値を見れば、ある程度の傾向はつかめます。でも、それだけで「なぜ人がこの商品を手に取りたいと思うのか」「どんな瞬間に“買おう”と決心するのか」といった部分まで完全にわかるわけではありません。そこを補うには、やっぱり自分自身が“消費者としての感覚”をしっかり持っていることが大事だと考えています。

この文章では、日常の中で感じている消費体験をどう活かすか、そして数値では拾いきれない「インサイト」をどうやって見つけていくかについて、考えたいと思います。


なぜ「消費者視点」?

マーケティングと一口に言っても、その範囲はどんどん広がっています。SNS運用やデータ分析、インフルエンサーとのコラボ、広告クリエイティブの制作など、挙げ出したらきりがありません。けれど、どのアプローチであろうと「人間のニーズや欲求をつかみ、そこに価値を届ける」という根本は変わらないはずです。

でも、数字だけでは人間の気持ちを説明しきれないことも多いですよね。たとえば「Aという商品がBよりも売れた」とデータが示していても、どうしてその差が生まれたかは数字だけではわからない場合があるんです。そこで一つヒントになるのは、私たち自身の体験からくる「こういうときは買いたくなる」「ここが少し不便だと買うのをためらう」という肌感覚。売り上げやアクセス解析では捉えにくい“リアルな気持ち”を、まずは自分自身が感じ取れるかどうかがカギになるんです。

例えばラーメン屋でできること

たとえば、よく行くラーメン店を思い浮かべてみてください。なぜあなたはそのお店を選んでいるんでしょうか? SNSで写真を見かけて「おいしそう」と思ったから? 友人のクチコミが「絶対外さないよ」と推してくれたから? あるいは、会社や家から近くて通いやすい立地だから?

入店した後も、「店内が明るい」「スタッフが元気よく挨拶してくれる」「席の配置がちょうどよくて居心地がいい」など、いろんな要素がありますよね。さらにメニューを開いた瞬間、「三日間煮込んだスープ」「自家製の麺」みたいな文言で「ちょっと高くても食べてみたい!」と思うかもしれません。逆に、字が細かくて読みにくかったり、品数が多すぎて混乱してしまったりすると、「どれを選べばいいの?」と迷うこともあるでしょう。

そして、ラーメンが届くまでの数分間。ここが意外と大事だったりします。もしお店側が、こだわりやオススメの食べ方をポスターやスタッフのアドバイスで教えてくれると、待っている時間さえもワクワクして過ごせますよね。実際に食べ始めてみて、「やっぱりここのチャーシューは最高だな」「箸が進む理由は麺のコシにあるんだ」といった発見も生まれるはず。その後、会計を済ませて出るときのスタッフのひと言で「また来よう」と思う人もいるでしょう。

こうして振り返ってみると、私たちがお店を選ぶまで、そして味わって退店するまでには無数の“小さなポイント”があります。そこへ意識を向けてみることで、単なる「おいしい/おいしくない」だけでは語れない要素に気づけるんです。これこそが、“良い消費者”としての視点を磨く一番の練習。毎日のように体験するこうした場面を見逃さず、マーケティングのヒントとしてストックしていくと、のちに役立つアイデアがたくさん蓄積されます。

データを無視するわけではない

ここまで「消費者体験が大事」と言ってきたものの、「それじゃあデータ分析はもう要らないの?」と言う人もいますよね。もちろん、そんなことはありません。データを使った分析や合理的なアプローチは、欠かせない大切な武器です。

大事なのは「消費者としての体験から生まれる感覚」と「データによる客観的な根拠」から導き出される解釈です。まずは自分が感じた「どうしてこんなにワクワクするんだろう」とか「ここが残念だな」という感覚を起点に仮説を立て、そのうえで売り上げやアクセス解析、アンケート結果などで検証してみる。もし仮説とデータが食い違ったとしても、それは新たな発見につながるチャンスかもしれません。
たとえば、数字上では「売れている」はずの商品が、実際に自分が使ってみるといまひとつ魅力を感じないケースもあるでしょう。そういうとき「なぜ人気なのに自分はそう思わないのか?」を考えてみると、データには表れにくい意外なファクターが見えてくるかもしれません。逆に、自分が気に入っていて「絶対ウケるはず!」と思っていても、市場全体のデータを見るとそこまで需要がない場合もあります。そういうときは、自分の好みだけにこだわるのではなく、客観的な数字とすり合わせて着地点を探すのが重要です。

友人とある有名なトップレストランへ行った時に料理人の方が、フルーツは今、糖度を計測できるようになって、この物差しができたことによってフルーツの値段というのがスーパーに行った時も美味しいかどうかではなく、糖度の戦いになっていて、本来の「美味しい」というところでは無くなったというようなことをおっしゃっていて、誰でもわかりやすい基準値は良いのですが、トップと言われるレストランではこの戦いではなく、測れないもので如何に勝負しているか。だから1回で数万円もするコースになっているというところからもこの計測できないもを体験する価値というのは非常に大切だな。と思うわけです。

インサイトを拾い上げる

それでも、なぜ“良い消費者”としての感覚がそれほど大切なのか? その答えは、やはり数値では見えてこないインサイトにあると思います。売上やアクセス数などのデータだけ見ていても、人の「なんとなく好き」という気持ちや「なんだか嫌だな」という細やかな感情までは正確にわからないことが多いんですよね。

たとえば、同じ値段、同じスペックの商品があっても、デザインやブランドのイメージがちょっと違うだけで購買意欲がガラッと変わる経験はありませんか? こういう微妙な違いが、販売個数に大きく影響するケースも少なくないんです。あるいは「店内がいい香りだったから長居した」というように、数値化できない要素がリピートにつながっていることも珍しくありません。

つまり、数字では把握しきれない“人間くささ”や“リアルな体験”を、自身が日常で体験し、そのときの気持ちをメモしておくことが、将来の施策につながるんです。もしデータ上で不可解な現象が起きたとき、「あ、この感覚、自分もあの店で味わったな」というようにピンとくることがあるかもしれません。そこを深掘りすると、「数値では説明しきれなかった真実」にたどり着けるんです。

残念ながらデータだけでは改善にしかなりません。なぜならそれは過去の事実でしか無いからです。我々自身が気付くインサイトだけがビジネスをジャンプさせることができるのです。

お買い物からインサイトを取り出す5つの方法

それでは、具体的にどうすれば“良い消費者”としての視点を養えるのか。いくつかアクションを考えてみました。

  1. 「どうしてこれを選んだんだろう?」を考える
    コンビニでおにぎりを買うときでも、アプリをダウンロードするときでも、ちょっと立ち止まって「どうしてこれに決めたのか」を言語化してみる。値段や評判だけなのか? 見た目や雰囲気に惹かれたのか? それを続けるだけでも、意外な動機が見えてきます。

  2. 周りの人に感想を聞く
    自分が「最高!」と思ったものでも、他の人は「うーん、微妙」なんてこともよくありますよね。家族や同僚、友人に「どうだった?」と聞いてみるだけで、視点が広がります。

  3. データとのすり合わせを忘れない
    自分が体験して得た仮説を客観的に確かめる意味で、売上データやアンケート結果にもちゃんと目を向ける。もし食い違いがあれば、その理由を探ってみると新しい発見が得られるはず。

  4. 小さな不便や違和感を見過ごさない
    例えば、「パッケージの開け口がわかりにくい」「支払い方法に一手間かかる」など、ちょっとした不便をバカにしない。そこを改善するだけでグッと満足度が上がることも多いんです。

  5. “好き”を徹底的に分析する
    自分が熱中しているお店やブランドがあるなら、なぜそこに惹かれるのかを細かく言葉にしてみる。デザイン? スタッフの対応? 場合によってはSNSの投稿が面白いから? 原因がわかれば、別の商材にも応用できるかもしれません。マインドマップでまとめるのも有効です。

こうした積み重ねによって、“良い消費者”としてのアンテナが研ぎ澄まされていきます。日常がすべて練習場になるわけですね。

さいごに

私たちが商品やサービスを選ぶとき、その理由は必ずしも数字で説明できるわけではありません。理屈ではない「なんとなく好き」「無性に気になる」といった感覚が、購買意欲を後押ししていることが多いんです。だからこそ、マーケターとして「良い消費者」であり続けることが、とても大切だと思うんですよね。

もちろん、データ分析を軽視するつもりはありません。数字と感覚はそれぞれに役割があり、両方をバランスよく取り入れてこそ強力なマーケティング施策が生まれると思います。大事なのは、自分が日常で体験することを“他人事”にしないで、「こんなところに人間の心理が隠れてるかもしれない」と考えられるかどうか。

もし、明日なにかを買うときや、どこかのお店を利用するとき、ちょっとだけ「どうしてこれに決めたんだろう?」と振り返ってみてください。その小さな問いかけが、データだけではわからなかった気づきを与えてくれるかもしれません。そしてその気づきこそが、「良いマーケター」大きな武器になるはずです。

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藤原義昭

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