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【保存版】本当に成果の出るKPI設計(前編・設計編)

Xで@otc_tyouzai 郡司さんの投稿にリプしたら、思いのほか大きな反響をいただきました。そこで今回、KPIについてあらためてお話ししたいと思います。そういえば、部下とのKPI設計については毎年同じ説明をしてたなぁ…なんて、懐かしく思い出しました。

私はこれまで役員やファンドの投資先バリューアップ担当として、売上が数億円規模から1000億円以上の会社まで、事業戦略やKPI設計を手がけてきました。単なる「絵に描いた餅」にならない、本当に使えるKPIを求めていろいろ試行錯誤してきました。

3月決算の会社さんは、ちょうど予算づくりが進んでいる時期だと思いますので、KPIにまつわる“誤用”や“成果につながる設定のポイント”をシェアできれば嬉しいです。
特に事業のKPIは社員の給与評価にも直結するので、経営者だけでなくリーダーのみなさんにも大切なテーマですよね。今回の記事はちょっと長くなったので、前編(KPIの正しい使い方)と後編(戦略とKPIの関係)に分けてお届けします。最後までお付き合いいただければ幸いです。

はじめに:なぜKPIを“売上”や“利益”にしちゃいけないの?

よくある間違いとして、KPIを「売上」や「利益」といった最終ゴールそのものに設定してしまうケースがあります。一見すると合理的に思えるんですが、実はこれがけっこう問題なのです。最終ゴール=KPIにしてしまうと、行動が曖昧になってしまい、思ったような成果に結びつきません。

KPIの本来の役割は「行動を数値化して管理する指標」

KPIは本来、「目標を達成するために、具体的にどんな行動をどれくらいやるか」を数値化した指標です。

「新規顧客への提案件数」や「営業訪問数」、「SNS投稿頻度」など、行動そのものが数字になっていれば、毎日の業務レベルで何をすればいいかハッキリわかります。

売上などゴールをKPIにしてしまうと“具体的行動”がわからなくなって結果が出ない

例えばKPIが「売上10億円」といった最終ゴールそのものだと、「どうやって10億円に近づくか?」がぼやけてしまいます。結果として、目標達成に向けた具体的なアクションプランが立てにくくなり、成果に直結しにくくなります。(ここでのポイントは”直結”です)

さらに、KPIをゴールに設定することで、「数字だけを追い続けるハムスター状態」に陥るリスクがあります。これは、ハムスターが回し車の中をいくら走り続けても前には進まないように、目標達成のために数字を追い続けるものの、具体的な行動が明確でないために実質的な成果が上がらないような状態です。このような状態では、努力が成果に結びつかず、組織全体のモチベーションも低下してしまいます。

なぜKPIは「行動指標」にすべきなのか

では、なぜKPIを行動指標として設定することが重要なのでしょうか。以下にその理由を紹介します。

1. 「何を・どれだけやるか」がすぐわかる
行動KPIを設定することで、チームメンバー全員が「何をどれだけ行うべきか」が明確になります。例えば、「新規顧客への提案件数を月10件以上」といった具体的な数値目標があれば、日々の業務に集中しやすくなります。これにより、無駄な時間やリソースの浪費を防ぎ、効率的に目標に向かって進むことができます。

2. ゴール未達でも“質や量”を検証しやすい
「目標を達成できなかった原因は何か?」を行動KPIから振り返ることで、改善策を立てやすくなります。たとえば「提案の数そのものが足りないのか?」「提案の質の問題なのか?」など、次にやるべきことが明確になります。

3. 日々の行動を共有しやすい
行動KPIは誰が何をどれだけやるかがハッキリしているので、チーム内で情報共有しやすく、一体感も生まれやすいです。

4. ボトルネックが発見しやすい
KPIの進捗を見ていると、「営業訪問数は足りてるのに成約率が低い」といった問題点がすぐわかります。そこを集中的に直せば、成果に結びつきやすいですよね。

5. 外部要因に振り回されにくい
景気や市場変化で売上が変動しても、行動KPIがしっかり回っていれば、長期的な成長や次期への準備ができます。自分たちでコントロールできない数字をKPIにしないことも大事なポイントです。
ちなみに、「営業利益」をメンバークラスのKPIに入れるなんてことも見かけますが、これは「利益を意識してね」という教育効果はあるかもしれません。しかし実務の行動に直結しないなら、KPIとしてはあまり役立たないですね。

6. 組織のモチベーションや精神的安定につながる
行動が数値化されれば、自分の努力が正しく評価されていると実感しやすくなり、メンバーのモチベーションもアップします。達成しやすい目標設定なら、精神的にも安定し、チーム全体がいい雰囲気になっていきます。

KPIは1つ、多くても3つ!!

KPIを設定する際は、1つ、そして多くても3つに絞ることが重要です。これは色々な書籍にも書かれていますし、さまざまな方も言っているのにも関わらず沢山設定してしまいます。なぜか?

“頭では分かっているのにKPIを絞り切れない”心理的背景

抜け漏れを恐れる心理
多くの人が「あれもこれも重要だから全部設定したい」と考え、KPIを増やしすぎてしまいます。「何かを落としたら失敗につながるのでは?」という不安も影響しています。実際は一つ二つ三つ減らしたとて結果は変わらないどころか減らすとフォーカスできるので結果が出ます。

KPIインフレの弊害
KPIが多いと管理が大変になり、優先順位もあやふやになります。時間がかかるので「報告だけで終わる」会議も増えがちで、実行がおろそかになるケースも。

理想と現実のギャップ
「完璧を目指したら、実務が追いつかない…」というジレンマですね。たくさん作りすぎると、結局どれも完璧にできずに中途半端になるパターンが多いです。


「何をがんばるか」を決めるのがKPI

なので「KPIは1個だけ、多くても3個まで」というのが鉄則です。

理由①:集中すると成果が出る
KPIが多いと管理や優先順位付けが難しく、結果的にどれも達成しにくくなります。1〜3つなら、チーム全員が同じ方向を向きやすく、成果に直結しやすいです。KPIが多すぎると、管理が煩雑になり、どれも中途半端に実行してしまうリスクがあります。また管理コストも増大しますので、マネージャーは管理のための管理を行うようになり、これは売り上げを1円も産まないどころか人を採用しなくてはいけないことにも陥ります。(いませんか?KPIだけ管理してる社員)

理由②:組織の“選択と集中”を明確にできる
KPIを厳選することで、組織がどこにリソースを集中させるべきかが明確になります。これにより、無駄なリソースの浪費を防ぎ、効率的な運営が可能となります。主要な3つのKPIに集中することで、組織全体が同じ方向に向かって動きやすくなり、一体感が生まれます。

理由③:モニタリングと改善がスムーズになる
KPIが少ないと、定期的にチェックして、問題点をすぐに見つけて修正する流れが作りやすいです。改善サイクルがしっかり回ると、どんどんパフォーマンスも上がっていきます。

行動KPI設定の4STEP(概要)

ここからは、行動KPIの作り方をざっくりと4つのステップにまとめます。

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