今さら聞けない「東証再編」とは?
「2022年4月に東京証券取引所が再編される」と聞いても、今一つピンと来ない人もいるのではないでしょうか。再編されるとどうなるのか、個人投資家にはどんな影響があるのかなど、気になる点についてまとめてみました。
東証が進める市場再編
再編の内容は市場区分の見直しです。これまで、東証一部・東証二部・JASDAQスタンダード・JASDAQグロース・マザーズと5つに分かれていた体制が、最上位のプライム市場・中堅企業向けのスタンダード市場・新興企業向けのグロース市場の3つに再編されます。
見直しの判定にあたり、各市場区分のコンセプトに応じて時価総額(流動性)やコーポレートなどに関する定量的・定性的な基準が設けられており、新規上場基準は以下のように細分化されます。
⑴ プライム市場
国内・国外の機関投資家の投資対象として、十分な時価総額規模と流動性、より高いガバナンス水準を有する企業、そして持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットできる企業を指す。東証一部上場企業に相当する。
⑵ スタンダード市場
公開された市場における投資対象として、十分な時価総額規模と流動性、ガバナンス水準を有する企業を指す。東証二部・JASDAQスタンダードに相当する。
⑶ グロース市場
事業実績の観点では総体的に高リスクだが、高度な成長の実現に向けて適切な事業計画等を定期的に開示しており、かつ市場から一定の評価を得ている企業を指す。JASDAQグロースおよびマザーズ上場企業に相当する。
市場再編の理由
再編の理由は、東証一部上場企業数が増加し過ぎたことで、市場の質の低下が懸念されているためです。東証一部上場企業は2010年以降増加傾向にあり、2021年7月の時点で2,190社に達している。二部は472社、JASDAQは696社、マザーズは379社。
ところが、6月末のデータに基づき東証が行った1次判定では、一部上場企業の約30%(664社)がプライムの基準を満たしておらず、全体の約26%(965社)が新体制下の移行先と想定される市場の基準を満たしていないことがわかった。
市場の質の低下は東証一部のブランド力を弱化させ、海外からの投資マネーも遠ざけてしまいます。そこで再編を機に、各市場区分の定義をより明確かつ厳格にし銘柄を厳選することで、東証のブランド力を強化すると同時に海外投資家にアピールする狙いがある。
市場再編でどのようなことが起こるのか?
再編後は市場区分ごとに異なる上場維持基準が設けられ、改善期間(6ヵ月~1年)内に成果が見られないと判断された場合は上場廃止処分となります。それにより、上場企業と市場の質を維持できるということです。
また、流通株式の定義が大きく変更になるため、株式の持ち合いや政策保有株の売り出しが増加する可能性も考えられる。銘柄を厳選することで、海外投資家の誘致にも一役買うことになることが予想されます。
企業にとっては上場のハードルが高くなるため、実質的なコストやメリット、デメリットなどを考慮して、あえてプライム市場から撤退する企業も出てきています。合理化を図る意図で、M&Aが活発化することも予想されます。
その一方で、プライム入りするための施策(大株主の売却、自己株式の償却など)を打つ企業も見られるため、日本の株式市場も活況化するきっかけになるかもしれません。
まとめ
今回の市場再編は、東証のブランド力向上や株式売買の活発化などが期待されていますが、その恩恵を享受するためには念入りなリサーチと準備が欠かせません。「再編後に保有株が大暴落した!」といった事態に陥らないためにも、保有株の動きを随時チェックし、来るべき新市場に備えましょう。
業績が良い決算が続いているにも関わらず日経平均が伸び悩んでおり、東証再編を機会に飛躍してほしいと願う私です。