【書籍】 スイス林業と日本の森林〜近自然森づくり
2017/7/17 excite blog より転載
浜田久美子さんの新刊「スイス林業と日本の森林〜近自然森づくり(築地書館)」を読了。私自身も情報のご提供などで若干関わらせていただいたこともあり、書評という訳にはいきませんが、少しだけ想いとPRを。
前作(スイス式[森のひと]の育て方)は、人材育成に焦点をあてながら、スイス林業や近自然森づくりに関する紹介や基本的な理解のための記念すべき1冊となりました。それから3年、新しい情報、更に深まった理解、そして施業や経営、行政での取り組みが少しずつ広がりを見せ、本作では登場人物が格段に増えています。
私が特に注目したいのは、筑波大学の志賀先生と岐阜県森林文化アカデミーの横井先生の知見が紹介されていることです。両氏の長年にわたる研究と経験に基づいた政策比較論と広葉樹施業論は説得力があって、自分のような実務側の人間にとっても大変勉強になりました。
そして、現場で試行錯誤されている皆様の取り組みと想いを改めて拝見し、とても勇気づけられ、そしてまた明日から頑張ろうという強い気持ちを新たにしました。
最後の方でバックキャスティングのエクササイズの話が掲載されています。あるべき姿と現実の差を「問題点」と定義し、そこから議論すると建設的になる。あるべき姿(理想像)がイメージできないのであれば、まずはこれをトレーニングする方法もありますよ、という提案でした。
実は、このあるべき姿をイメージできたときに気をつけなければならないのが、「現実」をどう認識/解釈するかで、私たちは往々にして、この理想像に寄せるために現実を捻じ曲げて解釈し、さもその差(つまり問題点)が無いかのように装ってしまいがちなのです(こう書いている自分も毎日のようにやっているかも)。
プランが絵に描いた餅になりがちなのは、理想像の問題もあるのでしょうけれど、現実認識を捻じ曲げてしまい、スタートからおかしくなってしまう、という場合も多いと思います。その行き着く先が、偽装、粉飾の類になるのでしょうか。
日本にもパーツは揃っている。でも何故うまくいかないのか? という問いに、著者はひとつの答えを提案されています。それが、現状をなんとか変えたいとする人々の背中を後押ししてしてくれるのではないか。私もそんなことを願いながらこの本を閉じました。
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