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価値観の基を変える(パラダイムシフト)とは

少し前の note で、こんなことを書きました。

いわゆる篤林家(とくりんか)と言われる方々は研究者顔負けの地質や土壌の文献知識を持っていることがある。いい山つくっているなあという方は、終わることのない学びへの好奇心を往々にしてお持ちだ。

理論を学ぶとより自由になれる(2025/1/4)

この部分をもう少し深めたいと思います。

「アップデートしなきゃ」と日々思い、行動している人は多いことでしょう。しかし、どんなに大量の情報に接しても、価値観の基を変えていかないと意味がないこと、対応できないこともあります。特に今は変化の時代、つまり昨日の常識が今日は非常識になる、そういう時代だからです。

スイスの山脇正俊さんは、この価値観の基を変えることパラダイムシフトと表現しました。パラダイムシフトとは一般的には思想や価値観が劇的に変わることという意で使われますが、山脇さんはこれを更に発展させました。

では、価値観の基を変えるとはどういうことか。例を挙げると…

・パーツ思考からシステム思考へ
・フォアキャストからバックキャストへ
・所有から共有へ
・量から質へ(量は質の要素のひとつになる)
・対立思考から両立思考へ

所有(ホールディング)から共有(シェアリング)へのシフトは既に起きています。かつて情報というのは囲うもの、ヒエラルキーの上位にいる人が持つ(所有する)ものでした。しかし今の時代は、情報は誰でもスマホで好きなときに見られる(共有する)ものになりました。

最後の「対立思考から両立思考」が最も大事で、AのためにBを我慢する、BのためにAを犠牲にすると考えるのが対立思考、Aが良くなればBも良くなる、Bが良くなればAも良くなると考えるのが両立思考。

例えば川づくりであれば防災と河川の生態系保全は両立できる、林業であれば木材生産と森林保全は両立できると考える、ということ。しかし多くの人は建前では両立と言いつつ、心の中ではそんなことは不可能だと思っています(対立思考のまま)。

そうではなくて、両立できる方法は必ずあるはずだと本気で考える(両立思考)、これがパラダイムシフトです。なぜこれが大事かというと、対立思考のままだと自分を高く見せるために相手を叩く(低く見せる)ということを繰り返さざるを得ず、それはいつか行き詰まるからです。

山脇さんの提唱した近自然学(2005年)は豊かな未来のために必要なパラダイムシフトとはなにか、を追求したものです。では、どうすればパラダイムシフトを起こせるのか?について発展させていかなければなりません。

私が尊敬している冒頭に挙げた篤林家の方々は、ただ情報・知識を求めるだけではなくて、それらのパーツをいかに使うかに長けています。後付で見てみれば、そこには(意識せずとも)パラダイムシフトが起きているわけです。

それがたまたまではなくて、いつもあちらこちらで起こるようにするにはどうすればよいのか(対策は分散)。

そのためのメソッドは近自然学では提案されていて、私は林業の職業訓練の中で試行錯誤をしてきました。しかし、もっと広い範囲、すなわち業種やジャンルを超えて取り組む必要性も感じています。

近自然森づくりにとどまらない、さらなる近自然学の発展。スイスのいち日本人が興した流れに、自分もこの春より本腰を入れていこうと考えています。ご報告は4月くらいに。


この記事を書こうと思ったのは、藤井隆さんのインタビュー記事を読んだのがきっかけでした。藤井さんも表現は異なるのですが、パラダイムシフトの肝のところを仰っています。


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