近自然森づくりと伝言ゲーム
年に数回の頻度で近自然森づくりに関連する講演やセミナーの依頼があるのですが、直接お話ができると、理解、納得いただける確率は高まるようです。
それでも実行に移せる人は数%もいません。大方はそれぞれのフィールドに戻ったときに、「そんなの理想論だ」「現実を見ろ」「地域には地域のやり方がある」という反発から引っ込めざるを得なくなります。
私がお話するときは、「今がうまく行っていないのなら、何かを変えていかなければならない、その選択肢のひとつにしてね。」という言い方をしますが、これが伝言ゲームの過程で混交林化や天然下種更新といった手段が「〜するべき論」になり、できるできないの二者択一の議論になっていくのです。
近自然森づくりの原則論の中では、対立思考から両立思考へのシフトを呼びかけていますが、AとBとでどちらが正しいのかという思考方法だと、手段の話をいくらしても水掛け論(消耗戦)になってしまいます。
森づくりとは、人の利用のために森の構造に手を加えること。それは地域の自然環境や社会環境に沿って行われ、そして私達の生活を豊かにしてくれるはず。だから、地域には地域のやり方があるというのは正しいのですが、考えたいのは今のやり方を続けて私達に未来があるのかということ。
何か良い方法がありそうだとなっても、それに全部変えてしまうのも危険。なぜならば50年後の価値観やマーケットは誰にもわからないから。これに気候変動の要素が加わってきます。だからやるなら少しずつ(でも早く)始めましょう、ということをこれからも言い続けます。
こんなことを、明日の講座のための資料を作りながら考えていました。
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