見出し画像

海外視察中に「ふりかえる時間」を

林業学校の海外視察に同行した後、もう一週間滞在を伸ばして別グループと合流し、10年ぶりに近自然森づくりのスイスツアーを主催しました。今回のテーマは森づくり。フォレスターの案内で近自然森づくりの考え方を学ぶ濃密な4日間でした。

そのうち現場に出たのは3日間。最終日は「ふりかえり」の時間に充てました。視察をせずに日本からの参加者だけで1日を過ごそうという新しい試みです。

これには賛否両論あるでしょう。限られた日程の中で貴重な時間を現地でなければできないことに費やしたい。それをしないのはもったいないと感じるかもしれませんし、私も参加者の立場ならそう思うかもしれません。

今回、なぜこのような時間を取ったのか。

これまで様々な方をスイスにお連れしたり同行したりしてきました。滞在中は膨大な情報のシャワーを浴びるのですが、多くの場合咀嚼の時間がなかなかとれないためにお腹が一杯になってしまいます。

海外に限らず視察旅行で大事なのは、訪れたところの人々が何をしているのかではなくて何を考えているのかを理解すること。それなくしては、いくら情報や経験を持ち帰っても活かす(応用する)ことができません。

こと海外視察に及ぶと、費用(または時間)対効果を焦るあまり、主催者も参加者もどんどん詰め込みに走るので、この「理解」がされないままに帰国の途についてしまうことになります。このことで何が起きるのか。

それぞれのフィールドに戻った後、変にカブれてしまったが故に周りから浮いてしまう、日常に飲み込まれてまるで何事もなかったかのような生活をただただ過ごす、そういう例を多く見てきました。そして、いずれの場合もその先には悶々とした日々が待っています。

あのとき受けた刺激は何だったのだろう…と。

主催者としてもこれは工夫が必要だ、ということで、ふりかえりの日の午前中は、朝から宿泊施設周辺をみんなで散歩。裏山の散策路を抜けると美しい田園風景が広がります。

午前中は宿泊施設周辺を散策(気持ちよかった!)

散歩は任意参加で、部屋でゆっくりするのも自由。目的はリラックスすることでお腹いっぱいになった頭の中に余裕をもたせ、そして個々の感性・洞察力を復活させること。

午後からは室内で、今回の視察での気付きとこれから何をするか/しないかを発表してもらいました。

老人ホーム併設の会議室をお借りして"ふりかえり"の時間

頭の中にあることを言語化することで、今回の視察が何だったのかを整理することができます。同時に大事なのは、他の参加者が何を感じ考えているのかを共有すること。

帰国してからでもできることのようにも思えますが、同じものを見て学んだ仲間と一緒に(まだ熱い鉄のうちに)考えることで視野が広がり、自分の現場でどうすればよいかの選択肢が増える効果が期待できます。

「できない理由のプール」で沈んでいかないように先手を打っておく。そんなイメージです。

この方法は、視察場所、内容、参加者の構成によっていつでもどこでも使える手法ではないでしょう。ただ、若い人が多いツアーの場合は特に有効なのではないかな、と今回の経験から感じました。

参加いただいた皆様にとって、何らかの糧となることを祈念しております。

【関連記事】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?