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「ご縁」を英語で説明できるか

※2018/12/5 excite blog より転載

「ご縁あって、イギリスから来日している◯◯さんを◯◯にご案内しました」という記事をフェイスブックに投稿したところ、それを読んだ本人から「trailing edge ってなんですか?」と質問がありました。

何のことかと思いきや、自動翻訳で「ご縁」が trailing edge(末尾の端?)と訳されてしまい、意味が分からないと。

ああ、縁というのは仏教用語で fate(運命、成り行き)とか relationship(結びつき)あるいは link(繋がり)とか訳されることがあって、そんなニュアンスの言葉、そして「ご」というのは「後」ではなく…と説明したら一応理解してくれました。

でも説明した私自身が「なんか違うな」と納得できず、以前読んだことのある本とかWEB上の情報を引っ張り出してきて漁ってみた結果、これかなという考え方が見つかりました。

「縁起」という言葉がありますが、これをどう英語に訳せるかについて、僧侶の大來尚順氏が、

Dependent Co-Arising(生じる事に従属的である)
Dependent Origination(起源に依存する)

という訳を提案または紹介されています。これらの訳のほうが縁と言う言葉をより良く説明できるのではないか。私がそう考えたのは、前日に英国人の彼と交わした会話を思い出したからです。

Brithish:あなたはなぜ今の仕事を選んだのですか?

Japanese:私の仕事のテーマは一貫して国土防災なのですが、林業はそれに貢献する手段になるだろうという信念があって今はやっています。でも、もともとは自然が好きなんでしょうね。

B:なるほど。

J:でも、そう聞かれて〜だからと直ぐに答える日本人もいれば、一方で「成り行きで」とか「何となく」とか答える人も多いと思いますよ。日本人の夫婦に「どうして結婚されたのですか?」と聞くと、しばしば「自然にそうなっていた」って返ってくる。

B:あー(笑)。欧州人は何でも Why, Why, Why で、それなくして行動しないものね。でも自然に身を任せるという日本人のフィーリングは自分にとっては悪い感じではないです。私はイギリス人ですが、結構変わっているという自覚もあって…(云々

と、その後変人論について盛り上がっていったのですが、自己意思よりも自然発生的なものに依るという感覚が、さきほどの縁起の英訳 Dependent Co-Arising(生じる事に従属的である)、Dependent Origination(起源に依存する)とリンクしたわけです。

もっとも「自然に身を任せる」というと素敵な感じもしますが、例えば断りを入れるときに言う「ご縁がなかったものとして」は、相手に気遣いをしているつもりでも、説明や責任の放棄/回避のための方便と受け取られることも多々あるわけで、これもまた日本人らしいと言えばらしい語感なのかもしれません。

先の大來尚順氏は縁起について interwoven(織り交ぜる)という訳も紹介されていますが、この言葉はどお?と彼に聞いてみると、自分にはこれが結構しっくり来るかも、と言っていました。古いイギリス英語で entwine という言葉があって、これが interwoven に近いかな、という解釈も披露してくれました。

結局のところ、違う言語同士で解釈が完全に一致する訳などありえないのかもしれませんが、近いものは何だと探しているうちに、お互いに考えていることや感じていることが少しずつ理解できていくようになる。このプロセスこそが重要なのだと。そして、それは外国の方とのお付き合いだけに限らない。

結論:違いを認識することは大事だが、同時にお互いに共通点を探していく作業というのは、前に進んでいくために必要かつとても楽しいこと。

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