【短編小説】どこの誰かも知らない女
3週間前、好きな人ができた。
明るくてかっこいい女性。
かと思うと、触ったら壊れてしまうのではないかと思うほど彼女は脆く、儚い。
まるで闇夜を浮遊する小さな蝶々だった。
時折、きらめく鱗粉を振りまく。ミステリアスで魅力的な人。
「ミナミで良いわよ。」
「あ…ええと、じゃあミナミさん」
カクテルグラスを揺らしながら、ミナミさんはふふっと笑った。
薄暗いバーのカウンター。
1つの空席を挟んで、俺は初対面の彼女を直視できずに目をそらした。
半分ほどを残したグラスの飲み口に、