2021年私的ベストディスク16
公私共に行動範囲が制限されている中で日々の過ごし方について自分達の生活習慣をみつけてそれに慣れるための一年だったように感じます。そんな中で例年のように2021年度マイベストディスク16です。おまけでミニアルバムシングル関連は別枠にしました。
・渚のベートーベン / AFRICA
京都の音楽シーンの中心人物である西村中毒らシンガーソングライター4人で結成されたドリームバンドの2枚目。前作から数名入れ替わっているようだが、4者4様のカラーが異なる楽曲群を作者自身がメインボーカルを取るスタイルなんだけれども不思議と違和感がまったく感じない。UKUSインディーロックをベースに、ナイアガラサウンドや賛美歌にプログレ的な要素もあり、音楽に造詣の深いメンバー達の様々な趣味趣向が詰め込まれた練りに練られたサウンドメイキングがとにかく楽しい。今年度の私的ベストアルバム。
渚の~以外にも、西村中毒バンド名義のアルバムや、ダウンロードカード限定販売というユニークな形でリリースされた西村中毒のソロアルバムも含めて、今年はは西村氏関連の作品群に魅了された一年でした。
・家主 / DOOM
奇才田中ヤコブ率いるシンガーソングライター集団4人組による2作目。前作が全曲捨て曲なしの大名盤だったのでいやがおうでも期待値が上がってしまうところだが、こちらが勝手に設定した非常に高いハードルを難なく超えたたまげるレベルの傑作。エバーグリーンなグッドメロディはより磨きがかかり、オルタナティブでエッジの効いたグランジサウンドにシフトしつつも、60s-現代までのロックヒストリーを駆け抜けていくような懐かしくもあり親しみが持てる普遍的なギターロックサウンド、そのクオリティの高さにはもはや感動すら覚える。ドライブ感満載の田中ヤコブのギターもいたるところで炸裂しまくっているのも嬉しい。
・Mono No Aware / 行列のできる方舟
完全にオリジナリティを確立した八丈島出身メンバーを含む4人組バンドの4枚目。ヤングマーブルジャイアンツあたりのインディーロックを根底に民謡的なメロディをまぶした唯一無二の不穏で不気味なサウンドメイキングと島国出身による独特なワードセンスは今作も健在。曲毎に表情を変え似たような楽曲が無い懐中の深さも相変わらず。聴いた瞬間から耳にこびりついて離れない冒頭の【異邦人】からモノノアワレサウンド全開。無論彼らの最高傑作。
・Base Ball Bear / Dialy key
インディーズ時代から彼らのことをずっと追いかけ続けているが、今年で結成20周年を記念するギターポップバンドの新作。トリオ編成になってから明らかに演奏力の向上が顕著になった。20年選手なのに10代の頃のような躍動感のある瑞々しいギターポップソングを未だに奏でられているのは、何年活動してきてもギターポップバンドとしてあり続けたいというメンバー達の確固たる信念と覚悟がそうさせているのだろう。楽曲のクオリティもサウンドも自信に満ち溢れた力作。個人的にはドラムのキレが今作は抜群。
・Teenage Fanclub / Endless arcade
長らく活動を共にしてきたG.Loveが脱退し、その後釜になんと独特のサイケポップサウンドで人気を博したあの”Gokey's Zycodic
Mynci”のフロントマンであったケイロス・チャイルズがまさかの加入後初となるアルバム。一撃必殺のキラーソングが産み出せなくなっているのは残念ではあるが、地味だけどグッとくる佳曲が連なった心が休まるTFCサウンドをまだまだ健在。次作からはもっとケイロス色が出てきて欲しい。
・The Be Positives / Everything about
マンチェスターのビートバンドによるアルバム。一聴してイギリスのバンドと分かるそのキャッチーなメロディとシンプルでパンキッシュな勢いのあるサウンドを奏でる英国然としたバンドが本当に居なくなってしまった昨今、久々に見つけたイギリスを強く感じさせるロックバンド。モッズ的でもありパブロック的でもあり、もちろんビートルズの系譜をしっかりと踏襲している王道のブリティッシュロックサウンドは、英国人にしか産み出せない音楽がここにはある。
・Gruff Rhys / Seeking new gods
スーパーファーリーアニマルズのフロントマンによるソロ2作目。スーパー~はあまりハマらなかった記憶があるが、このソロ作はバンド時代のストレンジな面影は一切感じさせずに、ピアノを中心とした実直でストレートなパワーポップアルバムに仕上がっている。バンドよりソロの方が断然好み。
・Last Days Of April / Even the good days are bad
スウェーデンのギターロックバンドによる10作目。エコーがかったエフェクト処理とキラキラしたシンセにより希望に満ち溢れたポジティブなサウンドメイキングがとにかく美しい。高揚感を感じずにはいられない。
・Daniel Romano's Outfit / Cobra poems
カナダのシンガーソングライターによるアウトフィット名義のアルバム。ビートルズ~グラムロック~オーケストラルポップまで、60s~70sの英国ロックへの憧憬に溢れたフックのきいたポップソング集。往年のサウンドというよりは90sブリットポップの面影が濃い。
・The Explorers Club / Rarities Vol.1
現代を代表するビーチボーイズフォロワーであるUSバンドによるレア音源集。質の高いアルバムを毎作リリースし続けている彼らだが、ダウンロード専用のシングル曲をメインに収録されたこのレア音源集は全く捨て曲がない。これほどの名曲群がアルバム選から漏れてもクオリティが高いアルバムを量産し続けられるというのがバンドの充実ぶりを物語っている証拠だろう。全ソフトロックファン必聴の作品。
・Quivers / Golden doubt
オーストラリアの男女混合ギターバンドの2枚目。ダウナーで落ち着いたサウンドが特徴で静と動を巧みに使い分けた溜めて爆発系の楽曲が特にぐっとくる。妙に魅力的なコーラスワークも聴きどころのひとつ。
・Mocca / Day by day
インドネシアの男女混合ギターポップバンドの新作。The
CardigansやEggstoneなど一昔前に日本で大流行りしたスウェディッシュポップを感じさせるお洒落で軽快なネオアコギターポップサウンドを基軸に、所々に東南アジアの風を感じさせるオリエンタルギターポップな良作。
・永井ルイ / Time capsule
ブレないくらいに一貫してグラムロック・オーケストラルポップを量産し続けているポップマエストロの新作。CDなどのハードリリースはなく配信のみ。当然オールドロックスタイルをずっと貫いているので目新しさは一切ないが、そんな事はどうでもいい、溢れんばかりの”Queen”愛に溢れた永井ルイサウンドの海にどっぷりと浸って欲しい。彼の作品の中でアルバムトータルのクオリティとしては今作がダントツベスト。
・AAAMYYY / Annihilation
巷で話題のサイケロックバンド【Tempalay】のキーボーディストによるソロ2作目。打ち込み主体のひんやりとした肌触りの無機質なハイブリッドサウンドに、歌謡曲ライクの良質でキャッチーなメロディが奏でる不可思議な無国籍感がとにかく魅力。その中でもゴシックでダウナーな楽曲【Fiction】がとにかく白眉。
・佐藤千亜紀 / Koe
活動休止中のきのこ帝国のフロントマンによるソロ2作目。バンド時代のシューゲイザー感は鳴りを潜め、歌モノに比重を置いたポップアルバムだがとにかく楽曲が良い美メロのオンパレード。ただし、サウンドは良い意味で違和感のある奇妙なフックが所々に仕掛けられており、一筋縄ではいかない違いを見せるロックバンドのフロントマンにしか作り得ないであろう好作。
・んフェニ / ちょっとだけ二日酔い。
元アイドルのソロプロジェクト。楽曲制作もプロデュースも彼女自身が手がけているが、90sオルタナロックを彷彿とさせるその本格的なサウンドは通を唸らせるほどのレベル。この手の90sサウンドに相変わらず自分は弱い。元アイドル出身でここまでのクオリティで作詞作曲編曲まで手がけられているなんてほんとうに侮れない。
別枠のミニアルバム/シングル関連は以下です。
・赤い公園 / 津野米咲 demo collection
故津野米咲氏が遺した4曲のデモ音源集。デモとはいってもアレンジその他はほぼ完成されたレベル。どの楽曲も彼女ににしか造り得ない津野節炸裂曲ばかりだが、特に【EDEN】はメロ間の繋ぎのギミックが常人の想像の遥か先をいく衝撃的な展開にとにかく圧倒される。何故こんな奇天烈な楽曲を作れてしまうのだろうか、この楽曲だけでも彼女達が納得する形で正式な音源として世に出るバージョンで聴いてみたかった。それがもう叶わないという現実が本当に無念でならない。。。
・Brother Sun Sister Moon / Homesick
邦人トリオバンドによる2枚目となるミニアルバム。日本のバンドとは思えない本場仕込みのような本格的なサウンドメイキングがとにかく素晴らしい。エフェクトの使い方がとにかく巧み。シューゲイザーファンは必聴。
・Kaede / サイクルズ
新潟のアイドルグループねぎっこのメンバーによるソロ。ねぎっこは小西康博プロデュースだったり、ソロになってからはスカート澤部、サニーデイ曽我部、空気公団山﨑ゆかり前作はLamp渋谷太陽など、センスの良い人選による楽曲提供ばかりで音楽好きを唸らせてきたが、今作は家主田中ヤコブとクラムボン原田郁子の楽曲提供曲。田中ヤコブ曲は自身のバンドソロとはまったく異なる女性歌手ならではの柔らかさと暖かさを持ち得た捻くれシティポップに仕上がっていて、楽曲提供の才も持ち得てた才人である事をこのシングル曲で証明している。
・Superfriends / Songs as letters
ギターロックパンクバンドの2作目。メロコアのカテゴリーに収まるのだろう全編英詩の洋楽ライクなごくごく普通のメロディアスなギターポップだが、基本3分間で構成されているシンプル感も含めて聴いていて単純に心地が良い