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本のはなし(9) 絵本作家ショーン・タンの作品紹介

こんにちは、いかフライです。

お盆はいかがお過ごしでしょうか。連休で外出した方々は猛暑で大変だったのではないかと思います。私は鎌倉まで電車で行って、猛暑の中、階段の上り下りをして良い運動になったことが思い出です。

最近はあまり本について書くことができていなかったので、好きな絵本作家の作品についてご紹介していきたいと思います。
オーストラリアの絵本作家、ショーン・タンの作品紹介です。

ショーン・タン作品との出会い

まずは外国の絵本との出会いについて書いていきたいと思います。

みなさんには、子供の頃から忘れられないような好きな絵本はありますか?私は小さい頃に絵本を定期的に買ってもらっていたので、よく絵本を読む子供だったと記憶しています。その中でも、幼稚園の頃は「三びきのやぎのがらがらどん」、小学生になってからは「あらしのよるに」という絵本が好きになりました。(「あらしのよるに」については別の記事で詳しく書きたいと思います)年齢が大きくなるにつれてストーリーに興味を持ち、物語に魅力がある作品に惹かれていきましたが、「三びきのやぎのがらがらどん」が好きになった一番の理由は、「絵が好きだから」だと思います。

小さい頃は力強い絵が好みだったようで、「三びきのやぎのがらがらどん」に登場する一番おおきなやぎとトロールのインパクトが大きくて、何度も読み返していたように感じます。大人になっても絵本に魅力を感じる大きな理由は絵であり、絵によって絵本の世界感に引き込まれていきます。

今回ご紹介する作家の話に戻りますが、私がショーン・タン作品を初めてしったのは新聞広告でした。どのような内容だったのかは忘れてしまいましたが、紹介されていた絵が印象的で、ショーン・タンという名前をメモしたことは覚えています。

新聞広告で見た「ムーンフィッシュ」

人が魚を抱えているような、人の顔が魚になったような不思議な絵に惹かれ、記事を読んで時間が経った後もずっと頭の中で覚えていました。

後日気になってネットで調べてみると、作者のショーン・タンは絵本作家であり、何冊か絵本を出版していることが分かりました。この「ムーンフィッシュ」に惹かれたことがショーン・タン作品との出会いになりました。

作者について


作者のショーン・タンについて少しご紹介したいと思います。

1974年に西オーストラリアのパースという町に生まれ、10代の初めには小説を書き、挿絵も添えていたそうです。高校生のときにSF雑誌に表紙絵を書き、大学ではアートと英文学を専攻しています。小説家からもインスピレーションを受けていて、インタビュー雑誌にはSF作家のレイ・ブラッドベリや、村上春樹の名前が挙げられていました。

パースを調べてみるとかなり大きな都市のようですが、ショーン・タンが生まれ育ったのはパースの北のはずれの町です。不思議で見たこともない絵の中にどこか懐かしさを感じる理由は、作者が影響を受けた小説や、出身地の影響があるのかもしれません。

作品紹介

1、アライバル

ショーン・タンの作品の中で、初めて手にとったのが『アライバル』です。『アライバル』が他の絵本と異なる点は、一切文字が書かれていないという点です。「文字が書かれていないのに、どうやってストーリーが展開されるの?」と?が浮かぶかと思いますが、『アライバル』はサイレント映画のようにイラストがコマごとに描かれていて、コマを読み進めることで物語を読むことができます。あらすじとしては、ある日怪物に町を襲われた男性が町に家族を残し、新天地での生活を経て家族を迎えに行くまでの人生を描いた作品です。
 アライバル(arrival)の意味は「到着」、「新参者」です。
一見ファンタジーのような描写の中に、移民の不安や葛藤、希望が見事に描かれている代表作です。

2、内なる町から来た話

ショーン・タン作品を知るきっかけとなった「ムーンフィッシュ」という作品のお話が掲載された、全25話からなる作品です。絵本とも呼ぶことができますが、物語のほとんどが文章で構成されており、挿絵が文章の間に挿入されています。都会の中で生きる動物たちが主人公であり、各話それぞれに主役となる動物がいます。「ムーンフィッシュ」が登場するお話もぜひ読んでいただきたいと思いますが、『内なる町から来た話』で一番印象的だった蝶の話をご紹介します。

ある日、突然大量発生した蝶がランチタイムにやってきて、人々の間を瞬間だけ通り過ぎていくという短いお話です。とても短い作品ですが、読後に深く感動し、絵と文章が持つパワーに圧倒されました。いつも何か頭の中で考えていて気が休まらない多くの方々に、蝶が通りすぎる一瞬の美しさを体感していただきたいと思います。

3、遠い町から来た話

先ほどご紹介した『内なる町から来た話』の姉妹作品であり、刊行されたのは『内なる町から来た話』よりも10年も前になります。(「ムーンフィッシュ」の話を書いたので、先に『内なる町から来た話』をご紹介しました)
『内なる町から来た話』とは反対に、郊外の不思議な生き物や現象がテーマとして描かれています。ショーン・タンの代表的なキャラクターである「エリック」のお話も収録されています。

『遠い町から来た話』も文章で物語が進みますが、『内なる町から来た話』に比べて絵が多く、絵が半分・文章が半分というような作品です。
この作品集の中で特に印象深かったのは「ぼくらの探検旅行」という作品です。兄弟が見つけた父親の地図が途中で途切れていることに気がつき、実際に地図の先を確かめに行くというお話です。兄弟のやりとりがどこか懐かしく、不思議な結末には思わず納得してしまいます。読み終わった人の心に残り続けるようなお話です。


ショーン・タンの作品は「大人のための絵本」とも呼ばれていますが、
どのような年齢の人が読んでも楽しめるのではないかと思います。
どこにも存在しないはずなのに、すぐ身近に存在するような不思議な世界を覗いてみてください。


画像引用

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20190711/20190711001217.jpg

参考文献
・「芸術新潮」2022年5月号 ショーン・タン インタビュー
・「ショーン・タンの世界 どこでもないどこかへ」 求龍堂


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