案外めちゃくちゃ幸せに生きている
アホみたいに忙しい日々を過ごしている。新規事業の立ち上げのバイト、留学生向け授業翻訳バイト、ウェブデザイナーのインターン3つ掛け持ちし、ボランティアで絵を描き、週4で学校にも行って3つの課題を同時進行でこなしている。画面を見すぎて頭がまあまあ痛い。帰りも遅い。でも毎日めちゃくちゃ楽しい。
友だちは今まで通り少ないし、英語はオーストラリア訛だし、アメリカ人留学生に「は?」と言われることも多い。課題は山積みだし、睡眠時間は足りないし、ケータイ代を払えないくらいお金もない。休みは日曜しかないが遊ぶ友達もろくにいない。というか日曜に遊ぶ体力がない。友だちになりたい子がいるがうまく声をかけられなくて何日も経ってしまっている。最近暑くなってきたし、失恋もまだ引きずりまくっている。
でもなんでか毎日めちゃくちゃ幸せに生きている。
なぜだかはよくわからない。よくわからないなりに、すごいなと他人事のように思う。Sちゃんといて楽しかった日々とおなじくらい、Sちゃんがいない日々を楽しんでいる自分。
Sちゃんが学生の頃に住んでいたシドニーの郊外の学生街のバーを思い出す。目の前が真っ白になるぐらいにかんかん照りの秋の日、店の中に一歩入ると一気に暗くなって、カビ臭いカーペット張りの空間があった。ビリヤード台とスロット台が一台ずつ。腕にタトゥーがごりごりに入っているだるそうな白人の女の子からモスコミュールを受け取って、奥のパティオへ出る。パラソルの下の手作りのベンチと机を陣取って、向かい合いながら話した。Sちゃんはビールをすすりながらこの土地の思い出を語る。キラキラした光の中でSちゃんの髪の毛も透けてきれいだ。
私はぽつぽつと語りだす。「日本に帰りたくない、私は日本だと苦しい」。モスコミュールを飲むたび私は泣いた。Sちゃんはまっすぐ私を見つめて左手で私の左手をとった。「どうしてもどうしても帰りたくない」と私は繰り返した。なんてSちゃんが話してくれたかはもう思い出せない。
シドニーで私はなんだかんだずっとウジウジしていた。
(下書きはここで終わっている)
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