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「ゴルフ場2025年問題」は他人事ではない...環境面でのリスク

ゴルフ場には「2025年問題」というものがあります。
ゴルフをやらない人や会員権を持ってない人にとっては、関係のない話のように感じますが、実は環境面のリスクが潜んでいます。


ゴルフ場の「2025年問題」とは

2025年頃に、団塊の世代が「75歳以上」になり、
日本に住む5人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えます。
社会全体で様々な問題を抱えていますが、ゴルフ場経営も深刻なようです。

ゴルフ場は「団塊の世代」が支えている⁉

日本のゴルフ愛好者のボリュームゾーンは「60~70代」です。
中でも、R3年時点での70~74歳(まさに団塊世代)が突出しています。

下のグラフは、
「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和3年:スポーツ庁)で
サンプル20,000名の内、「1年以内にコースでゴルフをした」と回答した1,233名について、私が、年齢別にカウントし、グラフ化したものです。
1233名の内、70代が322名、60代が257名でした。

「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和3年:スポーツ庁)をもとに筆者作成

昭和22(1947)~24(1949)年生まれの「団塊の世代」は、
まだ「60歳定年」だった頃にリタイアして、早々に年金をもらい、
ある程度ゆとりのある老後をエンジョイしており、
そういった世代がゴルフを楽しんでいます。

「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和3年:スポーツ庁)をもとに筆者作成

年齢別に見ると、
70〜74歳の山の前後が、それぞれガクンと少なくなっています。

ポスト団塊世代は、ゴルフどころじゃなかった

まず、団塊世代の次の世代(69歳以下)は、
まだ給料が高くない頃の30代の頃バブルを迎え、
本当にお金が必要になる40代、50代にバブル崩壊、失われた30年を過ごした世代です。
バブルでゴルフ会員権も天文学的に値上がりし、
ゴルフ愛好者は一気に減少し、
そのまま年代が若くなるにつれその傾向は顕著
になっていきます。

ゴルフにおける「75歳の壁」

一方、人口の多い世代なのに75歳でも、ガクンと減っています。

日本の男性の「健康寿命」は、19年時点で72.7歳
いままで約4年で1歳伸びており、直近では74歳前後と思われます。
つまり、寿命はもっと長いですが、
健康で元気なお年寄りと、あまり元気でないお年寄りの平均的な境目が、ちょうど74歳ころということです。

歳とともにゴルフをする元気が無くなり、
都市部だと行帰りの長時間運転もシンドくなり、
74歳から75歳頃にゴルフを卒業する人が多いという構図が見えてきます。

これから、団塊の世代が毎年次々に「75歳の壁」に突入し、
その次の世代からは元々ゴルフ愛好者がそれほど多くない・・・
つまり、2025年以降、ゴルフ場のお客さんはどんどん減っていく
これがゴルフ場における2025年問題の一つです。

コロナによる若い世代のプレイ人口増も、焼け石に水

2020年はコロナにより激減したゴルフ場のプレイ人数ですが、
実は、21年はコロナ以前近くまで復活し、
22年には上回ったという情報もあります。

密を避けることができる、閉じこもってばかりの生活の中、開放的なスポーツといことで、ゴルフが注目され、
コロナをきっかけにゴルフを始めた若い世代も増え、活況なようです。

ところが、プレイ人数は増えたけど儲からない!

コロナで、ゴルフ場のレストランがクローズになったことをきっかけに、
昼食を摂らずスループレイだったり、
昼食はコンビニ弁当やおにぎりなどで済ますゴルファーが増えたそうです。

また若い人たちは、そんなにお金もないですし、
まして昼休憩でビールを飲むという発想自体がないらしく、
ゴルフ場全体の客単価が大幅に減ってしまったそうです。

ゴルフ場はコースの手入れや施設のメンテナンスに結構お金がかかります。
そしてその経費は、ゴルファーがちゃんと(!?) レストランでビールを飲みながら食事をして、お金を落としてくれることが前提となった収支モデルですから、来場者が増えても客単価が落ちれば、経営的にはかえって厳しくなります。

プレイ人口減だけではない「2025年問題」

75歳を区切りにゴルフを卒業する人が増えることで、ゴルフ場にはもっと大きな問題が待ち構えています。

それは、ゴルフ卒業に伴うゴルフ場会員の退会、預託金償還の急増です。
会員制のゴルフ場は、
会員権を買ってもらったお金でゴルフ場を作り、
会員権は徐々に償還していくという仕組みですが、
団塊世代の償還が一気に集中すると、資金繰りが危うくなり、最悪、償還のために借金をしなければならなくなります。

また、全国のゴルフ場の多くは、バブル期までのオープンであり、築30年以上を経過のクラブハウスは老朽化が進み、設備も更新の時期を迎え、経営をさらに圧迫しています。

実際、一時期、減少傾向だったゴルフ場の倒産がまた増加に転じています。
そして、その中には、黒字だけど資金がショートしたり、施設更新や修繕の設備投資ができず、
やむなく廃業というケースも目立っています。

ゴルフ場が潰れることの環境面のインパクト

当たり前のことですが、
ゴルフ場で気持ちよくゴルフができるのは、日々、きめ細かい手入れ、メンテナンスをしているからです。

ゴルフ場は手入れが行き届いた人工林と草原

フェアウエイやグリーンなどの芝は、
きれいに刈り揃えられているのは当然で、
剥げたり枯れたりしたら即、植え替えをし、
決して地面を露出させたままなんてことはありません。

ReykによるPixabayからの画像

ラフも、伸び放題の英・セント・アンドリュースなどとは違って、
特に日本では、脱出が難しくならないように、
そこそこの長さで刈り揃えられているところが多いです。

セント・アンドリュースのラフ

また、ゴルフ場というと芝の部分が多いイメージがありますが、
実はゴルフ場を作る際は、
一定割合(敷地の30%以上など)の森林を残すこと、
造林森林も合わせて、全体の50〜60%を森林にしなければならないという法律があって、
ゴルフ場の面積の6割前後は芝ではなく森林になっています。

そして、その森林も、ゴルフ場の景観と、
林に入ったボールが出しやすいように、
こまめな間伐や枝落とし、下刈りなどの手が入っています。

つまり、ゴルフ場は、約30年にわたり、普通の人工林など比べ物にならないくらい、手厚く整備された林と草原の集合体なんです。

そのゴルフ場が潰れてしまうと...

元々、農地や宅地に適さない場所を開発してゴルフ場にしたところが多いですから、跡地利用は期待できず、放置されることが多いと思います。

ブッシュや笹ヤブ、伸び放題の竹林になるか...

きちんと整備された林と草原の集合体であったゴルフ場が、整備されずに放置されることになります。

耕作放棄地(使われなくなった田畑)が、
2年もすると元の姿が想像できないほどのブッシュになってしまうのと同様、ゴルフ場もあっという間に荒れた姿になってしまいます。

まず、芝が枯れ、地面が露出し、雨により土壌の流出が始まります。
ラフは伸び放題になり、すぐに雑草と低木が入り乱れたブッシュになってしまうかもしれません。
また、光を遮る高木のない部分は、笹や竹があっという間に侵入してきます。
広大な面積のゴルフ場がブッシュや笹薮、竹林になった姿を想像したくないです。

跡地利用は、もっと最悪のパターンかも・・・

跡地の利用法によっては、そのまんま放置されたほうが、まだいいのかもしれません。

一番ありうるのが、メガソーラー発電施設への転換です。
すでに整地されたなだらかな地形は、
ソーラーパネル設置にうってつけであり、
化石資源使用削減や温室効果ガス低減の大義名分もあるので、
条例などの規制さえクリアできれば、潰れたゴルフ場の跡地利用としては最有力です。

でも、ゴルフ場のフェアウェイやグリーンが、無機質なソーラーパネルで埋め尽くされた風景を、私は見たくないです。
環境的にも、日光の当たらないパネルの下の地面は地面が露出し、土壌は流出し放題になるし、生態系への影響もまだ未検証の部分があります。
そして何より、今後のエネルギー政策次第では、
ソーラパネル自体が雑草に埋もれ、放置されかねないリスクがあります。

更に最悪のケースとして、
人里から離れていても道路が整備されているゴルフ場跡地は、
産業廃棄物の処分場に転用されてしまうリスクがあります。

条例や規制があるから、産業廃棄物の処分場はつくれない・・・はずなのに、何故かいつの間にか、あるいは違法承知で処分場になっているケースは全国至るところにあります。

2025年問題をかかえたゴルフ場について、
悲観的な将来図を描いてしまいましたが、
こうなっては欲しくないという想いです。
これが現実的にならないためにどうしたら良いかについても、
真剣に考えてみたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。







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