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『人は森がなければ生きていけない』 追悼 坂本龍一さん

2023年3月28日 坂本龍一さんが71歳で亡くなりました。
YMOのデビューアルバムが出たのが、私が大学1年のとき。
東京に出てきたばかりの田舎者にとって、東京は何から何まで新鮮でしたが、YMOは、それらがすべて色褪せるような衝撃的な出会いでした。
以来、ほぼ同じ世代を一緒に歩んできた私にとっては、とても悲しく、とても残念です。天国で更に素敵な響きを奏でてください。

森を愛した坂本龍一さん

音楽家としての坂本龍一さんは、世界中でも知らぬ人がいないほど有名ですが、森を愛し、その保全にも尽力されていました。

坂本龍一さんは
2007年、加速する森林破壊と地球温暖化の危機的状況に行動を起こすために、YMOメンバーである細野晴臣さん、高橋幸宏さんたちと発起人となって、森林保全団体「more treesを立ち上げ、代表も務めていました。

more trees 代表メッセージ

人類は森とともにありました。
森が崩壊したところでは文明が滅んでいきました。
今、世界中で森林が崩壊しています。
これは人類文明全体の滅びへの警告と言えるのではないでしょうか。

実は日本は森林の多い国です。
たくさんCO2を固着し、また水を保ち、
多くの生命を養い、はたまた海まで育ててくれる貴重な森を、
後々の世代まで残すために力を合わせましょう。
more trees!!

代表 坂本龍一

more trees公式サイトより

more treesは、
地域との協働で森林保全を行う「more treesの森」を国内16か所(12地域)、海外2か所に展開し、
森の保全活動展開、国産材を活用した商品やサービスの企画・開発、
セミナーやイベントを通じた森の情報や魅力の発信など、
「都市と森をつなぐ」をキーワードに
「森と人がずっとともに生きる社会」を目指したさまざまな取り組みを行っています。

more trees公式サイトより

坂本さん自身も、more treesの森を訪れ、子どもたちとの森林保全のイベントなどに参加していたそうです。

東白川村の子どもたちと楽器を通じて交流する坂本龍一さん(右端)=岐阜県東白川村で2012年3月24日午後1時24分(東白川村森林組合提供)

坂本さんがおっしゃったという「人は森がなければ生きていけない」という言葉を、森に関わるひとりとしてしっかり受け継いでいきたいと思います。

神宮外苑の再開発も心配されていました

坂本さんは、ご自身が癌と闘いながらも、東京・明治神宮外苑の再開発による自然破壊を懸念し、亡くなる約1ヶ月前の2月24日付で、小池百合子都知事に見直しを求める手紙を送っていたそうです。

 東京都都知事 小池百合子様

 突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。

 率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。

 私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。

 いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。

 東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。

 あなたのリーダーシップに期待します。

 2023年2月24日 坂本龍一

小池都知事あての坂本さんの手紙

小池都知事の塩対応

この手紙に対して、小池都知事は「事業者でもある明治神宮にも手紙を送られた方がいいんじゃないでしょうか」と、全く他人事のような塩対応だったそうです。

小池知事は3月17日の定例記者会見で、坂本さんからの手紙について問われ、「事業者でもある明治神宮にも手紙を送られた方がいいんじゃないでしょうか。様々な思いをお伝えいただいた。事業者からは緑の量を増やすと聞いている。取り組みやまちづくりの意義を、坂本さんはじめ様々な方々、都民の皆さんにも伝わるように情報発信するよう改めて指示している」と話した。

朝日新聞デジタル2023年4月3日

小池都知事の「事業者にも手紙を送られた方が良いのでは」という発言に対し、坂本さんは生前の書面インタビュー
「特に地権者である明治神宮にはぜひとも計画をご再考いただきたい。が、それ以前に都市計画のビジョンのもとに各地の開発の是非が判断される必要がある」と指摘。

「知事が都市計画についてどのようなビジョンを持つのか、広く知られるべきではないか」と問いかけたそうです。

坂本さんから我々へのメッセージ

そして
「一人一人が住みたい場所のビジョンを持ち、共有されて都市を形づくる。その先に政治家を選ぶということがある」という、我々に向けたメッセージともいえる言葉を残したそうです。

このインタビューの最後で、坂本さんは
「音楽制作も難しいほど気力・体力ともに減衰しています。残念ながら手紙を送る以上の発信や行動は難しい」と明かしたそうです。

そして、それからまもなく、天国へ召されました。
坂本さんの無念な気持ちが、心に鋭く突き刺さります。

坂本さんの無念な気持ちと、残された我々へのメッセージを胸に刻んでいきたいと思います。

安らかにお眠りください。 合掌



神宮外苑の再開発については、以前に投稿していますので、お時間があれば併せてお読みください。


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