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ます寿司と世界平和の関係

ます寿司が大好物です。
冷酒の肴として、そして最後は熱いお茶と一緒に、結局、いつも一人で完食しちゃいます。
今日は、ます寿司と世界平和のお話です。

日本の食文化を体現する「ます寿司」

ます寿司は、木製の曲物(わっぱ)づくりの桶の底に笹を敷いた上に酢飯を詰めて、塩〆してスライスした鱒の切り身を並べ、笹で包み込み重石をして作る富山の名物です。
笹の抗菌作用で日持ちがするだけでなく、ほのかな笹の香りが食欲を誘います。
また、曲げわっぱが、鱒や酢飯の余分な水分を吸収し、しっとりいい感じの食味にしてくれます。
そして、工芸品と見紛うかの造形美。
素材と自然の器が見事にマッチして、まさにユネスコの無形文化財に登録された日本の食を体現したような一品だと思います。

ますのすし本舗 源 HPより

駅弁で売っている「ますのすし本舗 源」のが有名(「ますのすしミュージアム」もあります)ですが、
実は「ます寿司」は40近くのお店で作っているそうです。
酢や塩加減、鱒の厚み、寿司の押し加減などがそれぞれ違い、富山の人は、ひいきのお店があるそうです。

ます寿司の桶がプラスチックに!

何気なくTVを見ていたら、ます寿司の桶がプラスチックになるというニュースが流れました。
脱プラの流れの中、なんと時代錯誤な話!と思ったら、どうやら、ウッドショックとウクライナ侵略戦争の影響のようです。

ロシア産の木材の桶を使っている店では、ウクライナ侵略戦争の影響で輸入が滞り、入荷のめどが立たなくなり、プラスチック容器に変更したのだそうです。

ロシアの木材が使えない事情

「ウクライナ侵略戦争の影響で輸入が滞った」というと、
天然ガスや精密部品などと同じように、EUや日本が禁輸や輸入自粛をしているからと思ってしまいますが、
実は、木材については、ちょっと違う事情もあるんです。

それは…
世界平和のために、この3つのマークが立ち上がってくれたのです。

このマークを見たことありますか?
3つの内、右側の「FSC」と書いてあるマークは、最近いろんなところについていますから、見たことがあるかもしれませんね。

森林を守る3つのマーク

実はこのマーク、3つとも「森林認証マーク」というもので、適正な管理をされている森林(とその森林から産出される材料を使った製品)であることを公式に認めるマークです。

左の「SGEC」は、
Sustainable Green Ecosystem Council の略称で、日本の「一般社団法人 緑の循環認証会議」が運営する森林認証です。

真ん中の「PEFC」は、
Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemeの略称で、
世界各国の認証制度(日本であればSGEC)を相互に承認しあうことで、世界全体での認証をする制度「PEFC森林認証制度相互承認プログラム」の事です。

そして、左側の「FSC」は、
Forest Stewardship Council:森林管理協議会の略称で、この団体が運営する国際統一基準による認証制度です。

ちょっとわかりにくいですが、図にするとこんな感じです。

筆者作成

「持続的で責任ある管理がされた森林」とは…
計画的に植林され、樹木の生育や土壌の状態を把握し、適切な量の森林資源を適正な労働によって利用される森林のことです。
また、その森林に生息する生物種への配慮や、違法伐採がないか、地域社会へ貢献しているか、など環境への影響や社会的側面も考慮。

筆者

つまりこのマークは、
木材や、紙など木材に由来する製品が、違法伐採や環境破壊、不法就労や児童労働、人道問題や紛争などにつながっていないということの証であり、
一方、このマークの無い木材(や由来製品)については、厳しい監視の目が光るようになり、実質、取引が困難(または不利)になってきました。

ロシアの森林認証面積は 日本国土全体の2倍以上

ロシアの森林認証を受けた森は、PEFCとFSCを合わせて、約8000万ヘクタールで、日本の国土全体(3780万ha)の2倍以上という広大な面積で、全世界の認証森林の14~5%に相当します。
そして、ロシア産の原木は2020年の世界の市場流通量の13%を占め、ロシア経済において貴重な外貨獲得のひとつになっています。

森林認証の2機関が揃って、取引不許可に!

22年3月、ロシアによるウクライナ侵略が始まると、
PEFC、FSCの両国際認証機関が、ロシアとベラルーシの木材(含、産品)を「紛争木材」として、森林認証を不許可にしました。

ロシアの行為を厳しく糾弾し、その不法行為に森林が加担することを諫め、
毅然とした態度で、平和を希求する両機関の姿勢を強く支持したいと思います。

紛争木材
武装集団(反乱軍であるか通常兵士であるかを問わない)、あるいは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目的が紛争の永続化または個人的な利益のために紛争状態を利用することにある場合。

SGECのHPより

これにより、ロシア・ベラルーシの木材(含、産品)は、
認証してもらえず、取引が大きく制限されています。(現在も継続中)

そして、この余波が、富山のます寿司に影響を及ぼしたわけです。

これをきっかけに、国産材を使って欲しい

今回の件で、驚いたことが2つあります。

ひとつが、
森林認証という、どちらかというと地味な団体(失礼!!)が、毅然とした態度でロシアとベラルーシにNoを突きつけたこと。
(大国のエゴに振り回され、何も決められない国連は見習ってほしいものです)

ふたつめは、
「これぞ日本の食文化」とも思える ます寿司の曲物の桶が、外国産の木でつくられていたことです。

これは、びっくり!なだけではなくて、とても残念な思いです。

食味を追求して国産の経木を使い続けている「シウマイ弁当」を見習って?欲しい。

「和食:日本人の伝統的な食文化」ユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、味や栄養バランスだけでなく、自然や地域に根差した調理技術や調理道具、そして美意識が大きな要素です。

プラスチックの桶は、和食文化に似合いません。
ぜひ、これをきっかけに、国産の木材を使った曲げわっぱに切り替えてほしいと思います。

それがひいては、日本の里山や林業復活の道につながると信じて・・・


最後まで、ありがとうございました。


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