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「ダイヤモンド認定」から考えるヒット曲の指標について

【はじめに】
この記事では、ヒット曲の指標について、「ダイヤモンド認定」を通じて、媒体ごとの対照表を作っていこうと思います。

今回の記事の前提となりますのが、私のnoteでも何度かご紹介しています、「あさ(@musicnever_die)」さんの「『ヒット曲』の定義」という記事。

この方と問題意識を同じくしつつ、参考にしながら若干の認識の違いについて綴っていきたいと思います。(「あさ」さんの素晴らしい定義 や 仕組みとは無関係ですので、ご了承下さい。素人の戯言でございます。)

1.「ゴールドディスク」について

そもそも「ダイヤモンド認定」について書く前に、「ゴールドディスク」というものを簡単に説明しておきましょう。

ゴールドディスクは、各国別に設けられた基準に基づきその国内におけるレコード(CDの登場以降はCDを含む)売上枚数もしくは出荷枚数に応じて、当該楽曲に対し与えられる賞である。……各国毎に下位にシルバーディスク、上位にプラチナディスク、ダイヤモンドディスクなどが用意されている場合もあるほか、シングルやアルバム、ビデオなどで別の基準を定めている場合もある。

( 日本語版ウィキペディアより )

要するに、売れた音楽媒体に送られる賞というか「栄誉」みたいなイメージが近いかと思います。後述する内容と実は重複しますが、いわゆるミリオンヒットが想像しやすいのではないでしょうか。

では、その金・銀・宝石の名が付いているディスクの基準を(細かい話は抜きにして)確認していくことにしましょう。

( ゴールドディスクの一覧より加工 )

日本では、日本レコード協会(RIAJ)により、出荷枚数ベースで、
・ゴールド:10万、プラチナ:25万、ダイヤモンド:100万

といった基準をベースに、シングル・アルバムの認定が行われています。(かつては洋・邦楽で基準が異なった話しなどは割愛します)

この認定基準も、国・地域によって様々で、例えば、「出荷枚数 or 売上枚数 or 金額」と基準軸が違ったり、米国のようにダイヤモンドが1000万の国もあれば、東欧のようにゴールドが1000枚で認定される国もあります。

しかし、基本的には「ダイヤモンド」とか「プラチナ」と言った時に、ある程度、同じぐらいのヒット性を示す世界共通を目指した指標であることは、受け入れて頂きたいと思います。

2.日本の「ダイヤモンド(ミリオン)」認定

さて、専門的な話題は他の方の記事に譲るとして、ここからは、日本レコード協会(RIAJ)が事業として行っている、日本における「認定」基準についてみていくことにしましょう。

(1)洋楽・邦楽のアルバム/シングル

当協会では、1989年1月21日以降発売の作品に対し、発売日からの累計正味出荷枚数が一定数を超えた場合、下記の基準にしたがってゴールドディスクの認定を行っています。

RIAJ ホーム > 統計情報 > ゴールドディスク認定
https://www.riaj.or.jp/f/data/cert/gd.html#03

2003年以降の統一化された現行の基準では、10万がゴールド、25万がプラチナ、以降25万刻みでダブル、トリプルとなり、100万が……「ミリオン」。 で、以降100万刻みで2、3……ミリオンが認定されることとなっています。

この流れで説明すると違和感を覚えるかも知れませんが、RIAJのことを多少知ってる方は寧ろ逆に感じるかも知れません。世界的には「ダイヤモンド」と呼ばれるものを、日本では「ミリオン」と呼び習わしているのです。
日本では1億人前後の規模感から“ミリオン”が重視されてきたこともあり、その風土に従った呼び名なのかも知れませんね。

ここの部分がご理解いただければ後は流れでスッと入っていくと思います。

(2)ダウンロード認定

当協会では、配信開始日からの累計有料ダウンロード数が一定数を超えた作品に対し、2006年8月より、下記の基準にしたがって認定を行っております。(略)

RIAJ ホーム > 統計情報 > ダウンロード認定
https://www.riaj.or.jp/f/data/cert/hs.html

ダウンロードについては、世界各国でも同様に、「フル配信」とそうでないものを区別して認定しています。かつては、現在のシングルトラック(フル配信)が「着うたフル(R)」と「PC配信」に分かれていました。

特に2000年代は、「着うた」と「着うたフル」を単純に合算した値がメディアで取り上げられることもありましたが、例えば、『そばにいるね』の配信850万DLみたいな報じられ方はめっきりされなくなりました。

(3)ストリーミング認定

当協会では、配信開始日からの累計ストリーム数が一定数を超えた作品に対し、2020年4月より、下記の基準にしたがって認定を行っております。
この認定は、GfK Japan(ジーエフケー・インサイト・ジャパン株式会社)の提供データを元に当協会にて累計ストリーム数を算出した上で、会員各社からの申請に基づき、原則として認定月の翌月下旬に各月の認定作品の公表を実施しています。

RIAJ ホーム > 統計情報 > ストリーミング認定
https://www.riaj.or.jp/f/data/cert/st.html

時代は、サブスク&ストリーミングにすっかり移行して染まってしまいまして、ヒットの基準の中心が「◯億回再生」に移り始めています。RIAJ では、世界に追従する形でストリーミングについても認定を始めました。

これに先駆けて、2017年から、「Billboard Japan Streaming Songs」が発表されたりしていますが、その歴史はまだ浅く、まだフィジカルリリースからの「過渡期」の段階にあると言えるでしょう。

このストリーミングでは、「ミリオン」という基準はありません。当然、100万再生(自体は凄いことなのですが)では、他の媒体との整合性に疑問を呈さざるを得ず、CD売上とは「桁」が変わってくるのも当然でしょう。

ここからは、以上3つの認定基準を横断する形で見ていきたいと思います。

3.「ダイヤモンド」認定を統一基準に再構成

(1)「あさ」さんのヒット曲の基準

冒頭に貼った「あさ」さんの記事は『ヒット曲』の定義を探るべく、各認定基準の「下限」を統一基準としていました。すなわち、

《 「あさ」さんによるヒット曲の指標 》
・CD売上: 10万枚(ゴールド)
・フル配信: 10万DL(ゴールド)
・着うた : 50万DL(ダブル・プラチナ)
・ストリーミング:3,000万回(シルバー)

を、全てCD売上の指標に揃え「10万」としてカウントするというものです。すなわちこれを置き換えれば、

《 「あさ」さんによるヒット曲の指標(×10倍) 》
・CD売上:100万枚
・フル配信:100万DL
・着うた :500万DL
・ストリーミング:3億回再生

これが同値で置き換えうるというものです。基本的に「着うた」を「÷5」するという考え方には同意ですし、良い説明方法を生み出されたな、と記事を読んで非常に感心しました。その一方で、気になった箇所が幾つかあり、今回は「ストリーミング」基準について一言、書きたいと思います。

(2)「Rx」私案の大ヒット曲の基準

上記「×10倍」を認定基準で言い換え
・CD売上:100万枚 (1ダイヤモンド)
・フル配信:100万DL (1ダイヤモンド)
・ストリーミング:3億回再生 (0.6ダイヤモンド)

「あさ」さんの基準では、ストリーミングが半分と迄は言いませんが、若干ハードルが低い印象を受けました。素朴な提案として、私ならば「ミリオン=ダイヤモンド」であるという前提に則り、シンプルに、

《 「ダイヤモンド」認定に基づくRx私案 》
・CD売上:100万枚 (1ダイヤモンド)
・フル配信:100万DL (1ダイヤモンド)
・ストリーミング:億回再生 (1ダイヤモンド)

これぐらいが「ミリオンヒット」級、いわば「大ヒット」に類する曲を体感するには丁度良い塩梅ではないかなと感じた次第です。

「あさ」さんの冒頭の記事が『ヒット曲』の定義として下限を物差しとしていましたが、普通のヒット曲に軸を置くと、大きな値(外れ値的なもの)で外れ具合が大きくなってしまいます(例えば、「およげ!たいやきくん」の453.6万枚や「Lemon」のMV7億回再生など)。

「あさ」さんの記事にある『ヒットの定義・一覧早見表』は非常に分かりやすいのですが、あれはもはや「あさ」さんの発明品であると感じ、私の私案で作って画像を公開することは差し控えたいと思います。

【おわりに】

日本でもようやく、フィジカルリリース以外の「ヒット指標」が定着し始めた段階であり、従来からある指標との「連続性/整合性」については、研究が始まった段階だと思います。

「あさ」さんのが半オフィシャルなものであるならば、私のはそれを下地にした「同人」なファン的な私指標として捉えると共に、皆さん思い思いの指標での活発な議論と、ヒット曲を楽しむことの一助となれば幸いです。


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