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【参加録】村上健志の俳句実況 Vol.3《自作句あり》
【はじめに】
この記事では、『フルーツポンチ村上のムラカミーチャンネル』で、2021年6月25日に生配信された『俳句実況』第3回を振り返っていきます。一部は私(Rx)の自作句や添削私案も掲載していますので、ぜひご覧ください。
0.オープニングトーク
前回(第2回)からの改善点として、サムネにもある通り、背景をグリーンバックにしていました。将来的には、あっちゃんみたく「ホワイトボード」を画面共有することも考えているそうですが、物理的にも、白い壁紙よりもグリーンバックの方が何故か明るく見えてる感じもしますね。
そして、生配信前日の「プレバト!!」で、Kis-My-Ft2の千賀健永さんが名人初の2ランクアップを達成したことに触れ、その句を讃えていました。
さらに、「プレバト!!」で披露し、炎帝戦を優勝した際の村上健志さんの句を「自句紹介」していました。
『行間に次頁の影 夕立晴』 村上健志
実は、村上健志さんが2021年4月に発売した著書『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』には仕掛けがあって、表紙カバーを外すと、上の句をモチーフとした別の写真が仕込まれているのです! それがこちら。
しっかりと手元で確認してみて下さい。「プレバト!!」ファンなら、あの句の『次頁の影』を追体験できそうな感じになっていますから!
1.「グリーンカレー」
そんな本の宣伝に続き、本題の「俳句実況」に移ります。コメント欄で席題を募集し、それで作句をしていくという企画です。
個人的には、生配信の直前に「日本選手権・陸上男子100m決勝」が行われていたことから、『100m走』という席題を自信満々に投下したのですが、村上さんがそのこと自体をご存知なかったので敢え無く撃沈ww
・夏越の祓(なごしのはらえ)
・セメント工場
・『は』2つ以上
・七夕(秋の季語)
など色々と来ていましたが、「グリーンカレー」が選ばれます。そして非常に大きかったのが、『無印良品』という固有名詞との親和性が確認をされた瞬間でしょう。
固有名詞と一般名詞の中でも、それぞれ個性……が弱いのが無印良品なはずなんですがww 俳句の世界においては主張の激しい2単語を共存させるという中々チャレンジな句作りに挑戦する流れとなっていきます。
句の材料となる俳句のタネが綺麗に見つかり、後は取り合わせる「季語」の選択如何となります。「あつさ」からの「汗」なども悪くはないのですが、例えば、「クーラー」や「扇風機」などの暮らし/生活の季語であったり、或いは物との位置関係を具体的に描くといった工夫も考えられます。
村上さんは、夏の季語から、こんな言葉を取り合わせてきました。こちら。
【 1句目 】
『風鈴よ無印良品(むじるし)のグリーンカレー』 村上健志
もうこの句は、「無印良品」+「グリーンカレー」という組み合わせが見つかった瞬間に、よっぽどミスらなければ「K点越え」になるぐらいの俳句のタネです。そこに、村上さんは「風鈴」という4音の季語を取り合わせて、『や』という強い切れ字ではなく、『風鈴よ』と優しい上五としました。
「和」と「洋」というか東南アジア圏への落差も実に面白いと思います。
ただ個人的には、リズムがまだぎくしゃくしている感じがありました。寧ろ「無印良品」を「むじるし」と4音で詠ませるのならば、『無印良品のグリーンカレー』を上五・中七とした方がリズムが出て、良い様に思いました。
【 1句目・Rx添削私案 】
『無印良品(むじるし)のグリーンカレーよ風鈴よ』
「よ」・「よ」と詠嘆をリフレイン(夏井先生が良く言う奴)させてみて、なおかつ中八ではあるものの、長音が複数入っていることで、「字余り」をそこまで意識させない形にもなるんじゃないかと思った次第です。
村上さんは、プレバト!! で名人十段にいらっしゃいますが、俳句初心者の方は特に「リズム良く言える12音」を見つけることが、俳句づくりの近道だと思います。
※私は、文字数よりも詠んだ時のリズム感を重視する派です。J-POPとかが好きで、耳から入る情報を重視する傾向にあるからかも知れません。案外、4拍子にうまくフィットしていれば、字余りはさほど気にならないものかと思います。皆さんもぜひ4拍子のリズムに乗せての作句、チャレンジを!
2.「テープ」
1句目が出来て、前回同様、背景にセロテープで貼り付け……たのですが、『グリーンバック』とセロテープの相性が悪く、せっかく出来上がった句が落ちてしまいます。
結局、セロテープの粘着力では太刀打ちできず、緑色の『養生テープ』を、別の部屋から探してきて、それを『グリーンバック』に貼る流れに。
養生テープで句を貼った後に募った席題では、やはり「ライブ感」が大事だという鉄則にのっとり(?)ww 複数名から「テープ」という席題が送られ、2つ目の席題は「テープ」と決まりました。
・テープ
・セロテープ
・両面テープ
・ビニールテープ
・養生テープ
・カセットテープ (←Rxのコメント)
・ガムテープ
・銀テープ
・ゴールテープ
・マスキングテープ
・紙テープ
などと軽く10個ぐらいのテープが出てきました。単語だけで、場面説明する情報量が多く、「言葉の経済効率」が良い単語だと感じました。さらに、
・スポーツのテーピング
・バミる
・古くなると茶色くなる(セロ)テープ
・船旅のときの カラーテープ
・値札のテープ
などと連想を広げていくと、単なるテープとは違ったドラマが描けるのかも知れません。で、唐突に来た『テープ・スペクター』には笑いましたがww
配信開始から50分というタイミングまで、かなりの難産となり、10分以上、テープから発想がうまく句に結びつかず苦労していました。その結果として出来たのがこちらの生活の句。
【 2句目 】
『柿ピーの袋 ガムテの穴に立てて夏』 村上健志
コメント欄にありましたが、少なくとも『ガムテの芯』とした方が、正確に描写できていたんじゃないかなとは思いましたね。梅沢のおっちゃんに見せたら、ほぼ間違いなく『ガムテの穴って何だ、穴って!』と言われてたww
それはさておきネットで調べてみると、『ガムテープ』を使ったアイディアが次々と出てきます。「リモコン立て」や「筆記用具入れ」などなど。勿論お菓子を立てて食べるのに使う人も、(村上さんが思ってる以上には)いるみたいですww
この句を推敲するとしたら、「柿ピーの袋」と「穴」、そして「夏」という季語の選択の3点になりましょうから、皆さんなりに考えてみて下さい。
【 2句目・発想(埋め字)ドリル 】
『 ◯◯◯◯◯ ガムテの芯に立て◯◯◯ 』(皆さんの俳号)
ちなみにこれは、夏井いつき先生が俳人・岸本尚毅さんとの著作でも触れていて、古くは高浜虚子も著書の中で奨めていた『埋め字(うめじ)』という俳句の練習方法です。 句の構文の一部を空欄にして、貴方なりのワードを埋める。これは結構、勉強になりますから、私からもオススメです!
上五は「◯◯◯◯を」としても良いですし、下五は「立てて◯◯」だと季語のバリエーションが少ないので、「立て◯◯◯」と3音の季語まで入れられるようにするのも手かと思います。皆さんはガムテの芯に何を立てますか?
2-1.《 埋め字ドリルに挑戦! 》
せっかくなんで、上に示した埋め字ドリルで私も1句。
【 2句目・発想(埋め字)ドリル 】
『 リモコンをガムテの芯に投げ短夜(たんや) 』 Rx
眠れない苛立ちなどを、距離が近くなければ上手く入らないであろう「ガムテの芯」に『投げ』る。それは夏の季語「短夜」であるよ、といった感じ。絶対に「埋め字」の形を厳守しなければいけない!訳でもないと思うので、柔軟に発想してみて下さい。
2-2.ハッシュタグ「俳句実況」
前回の生配信で、ハッシュタグ「俳句実況」を付けて、皆さんが作った句を披露して欲しいという声があったので、私も思いつくままに、句を披露しました。調べれば出てくると思いますww そして、その感想で、
Rx:前回も「#俳句実況」でめちゃくちゃ俳句書かせてもらいましたww
と書いたら、『多分、詠ませてもらったと思う。』と村上さんに言ってもらえて感無量でした。仮に反応が無くたって、詠んで頂けていたのなら、これは相当に嬉しいことです。(ファンレターとかの類かな。)
まして、ご本人から反応があれば、なおのこと嬉しいですよね!
前回(Vol.2)の記事でも書かせてもらいましたが、『俳句』でなくとも、短歌でも、思い出を書き連ねるだけでも良いとのことですから、自分の表現できる形で、ハッシュタグ「俳句実況」にご参加頂ければと思います~
3.「書道部前の廊下」
席題候補を沢山詠む中に、非常に限定したコメントがあって……それが、「書道部前の廊下」というものでした。村上さんは、それを見てサラッと
【 3句目 】
『西日指す書道部前の廊下かな』 村上健志
という句を即吟してましたが、案外良いなって思いましたww あまりにもサラッと詠んでいたので、あまり注目もされませんでしたがww
それぐらい、口に出すことだったり、捻らずに詠むのも大事だと思います。何よりこれは「書道部前の廊下」という、視覚も聴覚も思い出も刺激される俳句のタネがうまかったのだと思います。
4.「吹奏楽部」
部活シリーズで、今度は「吹奏楽部」が席題として選ばれました。
経験者の方だと、より具体的に連想できるのでしょうが、村上さんは、中々連想を深入りする所まで行けず、やや不本意そうではありますが、自作句を即興で作って披露します。
【 4句目 】
『 夕焼や吹奏楽部のチューニング 』 村上健志
基本の型に忠実です。プレバト!! だと「名人十段にしては云々」等とお小言を放たれちゃいそうですが、これはこれで良い句と思います。個人的には、『吹奏楽部』を『吹部(すいぶ)』などと略す呼び方を聞いた覚えがあったので、それを使うと、
【 4句目・発想(埋め字)ドリル 】
『 夕焼や吹部のチューニング◯◯◯◯ 』
「吹奏楽部」から「吹部」とすることで、4音節約することが出来ました。この4音分をどこかに盛り込めれば、作品としてどんどんレベルアップしていくんじゃないでしょうか。
4-1.「吹奏楽部」の没ネタからRx自作句
コメント欄のエピソードは、吹奏楽部OB・OGからも来てたのか? 非常にオリジナリティとリアリティの確保されたものが多かった印象でした。
・エアコンのない廊下での個人錬 [原文ママ]
・外にいるときに教室から聴こえてくる練習の音がいいですよね
・私の学校吹奏楽部員多くて廊下で練習してました!
・吹部の応援は野球部オンリーだったので
野球部以外の運動部は寂しい気分になりますね
・廊下で息の練習してました
・吹奏楽部の子とカラオケに行くと楽しい
・外に漏れ出る、音合わせの「ラ」
・校門を入ると聴こえるホルンの音
・オーボエの音色とか夕焼けに合いそう
・屋上で太平洋みながら練習してた
・公園で遠慮がちに練習してたりしますよね
私は吹奏楽部と全く縁が無いのですが、こうしたエピソードから、経験者かが何となく感じ取れる気がします。面白いです。何句か作ってみましょう。
(1)外に漏れ出る、音合わせの「ラ」
↓
『音合わせの「ラ」は青嵐になって』 Rx
チューニングの音が「ラ」というのは、クイズの知識として聞きかじった事があるのですが、音階ごとの印象というのは、確かに人それぞれ持ってて、多少は似通ってくる部分もあるんじゃないかって思いました。
(2)校門を入ると聴こえるホルンの音
↓
『 校門を入ればホルンの音や立夏 』 Rx
私の実体験ではないのですが、極力、俳句のタネを忠実に描写しようと心がけました。「校門」とあるので『若葉風』はやりすぎと思いつつも、やっぱり若さを季語からも出したいと思い、『立夏』を取り合わせてみています。
(3)屋上で太平洋みながら練習してた
↓
『 風薫る屋上練習太平洋 』 Rx
音数的には「日本海」ならぴったり5音なのですが、俳句のタネに合わせ、字余りながら「太平洋」の6音にしました。この句を考えるにあたっては、「屋上練習」と表現するに留め、一単語ごとに光景が変わっていくのを目指したつもりです、如何でしたでしょうか。
5.「胡瓜(きゅうり)」
夏野菜の代表的な存在である「胡瓜(きゅうり)」が、5つ目の席題です。
胡瓜が好きだという村上さんにとっては、ポンポンと連想が広がっていき、早速、句が完成しました。それがこちら。
【 5句目 】
『 冷やしきゅうり釣り銭少し冷えていて 』 村上健志
ややベタなのかも知れませんが、お祭りなどの屋台で売られている「冷やしきゅうり」の1句。『冷やし』を2度使った所、『冷えていて』という下五の表現の工夫から、頑張りが伝わってきます。
個人的には、上五がどうせ字余りになるなら、敢えて限定してしまって、
【 5句目・Rx添削私案】
『 冷やし胡瓜のお釣りはちょっぴり冷えていて 』
と、上五に「の」を付けて流れを滑らかにするのも手かなと思いました。
6.「めん棒」
「胡瓜」は季語ですし、「○○部」は学生という縛りが出てきます。しかしこの「めん棒」のような非季語で自由の高いテーマは、簡単そうで難しい。しかし、良い俳句のタネが見つかれば、そのリターンも大きいと思います。
私の『「めん」延「棒」止等重点措置』というボケコメントもそこそこウケて貰って嬉しかったです~ww
・耳掃除
・薬塗る
・化粧直し
・ホコリとり
などの日常的な用途から派生して、
・黒い綿棒使ってる
・ゴミ箱に入ってない綿棒
・旦那が使用済みの綿棒捨てるけど大体ゴミ箱から外れる
・PCのキーボード掃除する
・綿棒で作る幾何学立体
などのアイディアがコメント欄で寄せられました。結局、15分近く粘っても句がうまく連想できず、苦しんだ末の最終的な着地はこちらでした。
【 6句目 】
『洗面所に折れた綿棒明けやすし』 村上健志
6-1.《 埋め字ドリルに挑戦! 》
私なら『折った綿棒』にしていたかも知れません。しかし洗面所という場所の設定がイメージを広げる効果を演出できていると思います。これから発想をして、
【 6句目・発想(埋め字)ドリル 】
『◯◯◯◯に折れた綿棒明けやすし』
として上五に「場所」を設定すると、更に面白い句になる要素を秘めていると思います。例えば、卑俗な例で恐縮なのですが、
『脱衣所に折れた綿棒 明けやすし』 Rx
とすると、『明けやすし』という夏の季語から、明け方に脱衣所に居る人物が描き出され、実質「洗面所」と機能上は大差のないスペースであるのに、妙に大人っぽさが出てきませんか? 場所設定一つで全然変わってきます。
同じ水回りのスペースだとしても、
・『給湯室に折れた綿棒 明けやすし』
・『サニタリースペースに折れた綿棒 明けやすし』
・『ユニットバスに折れた綿棒 明けやすし』
などとすると、読み手は「この言葉を選んだ理由」を(勝手に)想像して、ドラマの妄想を広げていってくれることでしょう。全然、水回りとは関係のない場所を選んだ方が、むしろ(季語以外での)「取り合わせ」が成功するかも知れませんよ!
6-2.「綿棒」の没ネタからRx自作句
ちなみに、村上さんが前半でこだわっていた
『旦那が使用済みの綿棒捨てるけど大体ゴミ箱から外れる』
でも1句作ってみましょう。
(1)旦那が使用済みの綿棒捨てるけど大体ゴミ箱から外れる
↓
『散らばつた夫(つま)の綿棒さみだるる』 Rx
元のコメントは、かなり音数が長いので、12音に収まるように文字数を削ります。「ゴミ箱から外れる」ことを、例えば『散らばった』と形容してみますと、5音で描写することが出来るかも知れません。
そして、『散らばった夫の綿棒』という俳句のタネが出来たら、後は、その綿棒にどういった感情を抱くかを『季語の力に託す』のです。
例えば、マイナスなイメージが強ければ『熱帯夜』とか『梅雨湿り』など、プラスのイメージが強ければ、『五月晴』とかをセットするのです。これが本来の季語の選択なのだと思います。
続いて、こんな世界があること自体知りませんでした。「綿棒で作る幾何学立体」というコメントが来ていました。『綿棒アート』というんだそう。
(2)綿棒で作る幾何学立体
↓
『夏惜しむ綿棒アートの星形八面体(マカバ)かな』 Rx
やや季語が弱い……というか、俳句のタネが主張し過ぎてますが、こういうことも出来るから、他人のエピソードって本当に面白いですね~
歌うことに苦手意識のあって歌い手を探しているクリエイター
×
歌がうまいのに埋もれている無名のシンガー
が、令和の時代に大ヒットを連発している様に、俳句の世界においても、
俳句を作る技術はまだないけど、俳句にしたいエピソードのある人
×
(多少)俳句を作る骨法は心得ていて、俳句に仕立て上げたい(俳)人
みたいなコラボというか、クリエイティブな作業も増えてくるんじゃないかと思いますね。そんな未来が少し見えた気がしました!