「競馬の歴史」を学ぶ ~無敗の牡馬2冠馬 平成・令和編~
【はじめに】
「無敗で皐月賞・日本ダービーを制した馬」を紹介する記事の2本目です。
↓ 昭和の3頭:トキノミノル、シンザン、シンボリルドルフ を紹介した1本目の記事はこちらからどうぞ ↓
ちなみに、2021年に書いた『無敗の皐月賞馬』も合わせてご覧下さい。
4.(1991年)トウカイテイオー
史上3例目の無敗での牡馬クラシック春2冠馬にして、「無敗3冠馬」の【シンボリルドルフ】から7年、即ちオグリキャップ引退の翌年(1991)。平成の競馬ブームを盛り上げたのが【トウカイテイオー】です。
シンボリルドルフの初年度産駒で、帝王と名付けられたトウカイテイオーは一度も鞭を使わず4戦4勝という成績で「皐月賞」に挑みます。
「皐月賞」は、重賞未勝利(オープン戦勝ちのみ)ではあるものの、実力を買われ1番人気に支持。大外枠を物ともせず、まず1冠目。
続く「日本ダービー」も大外枠(単枠指定8枠20番)からの発走でしたが、3馬身差の快勝で、父に続く「無敗の2冠馬」となりました。
※後にお話しする「ディープインパクト・コントレイル」の例が出るまで、父子無敗での牡馬クラシック2冠は史上唯一でした。
そして、当然、史上初。「親子での無敗三冠馬」の期待が高まりましたが、表彰式後に骨折をし、「菊花賞」に出走すること自体が叶いませんでした。
無敗の春2冠馬で「菊花賞」に出走できなかったのは、【トキノミノル】とこの【トウカイテイオー】のみです。
しかし、トキノミノルとの大きな違いとしては、2度の骨折による長期休養を余儀なくされながらも現役復帰を果たし、現4歳時にはジャパンカップ、現5歳時には「奇跡の復活」と形容される有馬記念を制する活躍を見せた点でしょう。
5.(1992年)ミホノブルボン
これまで10年に1度出るか出ないかだった「無敗での春2冠馬」でしたが、平成の競馬ブームに呼応するかのように? 【トウカイテイオー】に続く『2年連続』での「無敗での春2冠馬」が誕生しました。
それが1992年(平成4年)の『ミホノブルボン』です。
デビュー前の坂路調教で古馬顔負けの好タイムを叩き出し、新馬戦では1000mを58秒1でのレコード勝ち。2戦目の500万下を6馬身差、3戦目のG1・朝日杯FSも無傷で制し3戦3勝。
しかし、明け(現)3歳の緒戦「スプリングS」では、“距離限界説”を払拭する7馬身差の圧勝。距離適性こそあれライスシャワーとサクラバクシンオーを相手にこの競馬を見せつけられては、クラシック戦線の押しも押されもせぬ本命馬として認識されるようになります。
朝日杯1600m → スプリングS1800m → 皐月賞2000m と1ハロンずつの距離延長に対応して無敗を続ける【ミホノブルボン】ではありましたが、血統面から常に「距離不安」の声は聞かれました。
【トウカイテイオー】に続く2年連続の無敗2冠への期待と距離不安で評価が分かれる中、ミホノブルボンは4馬身差の逃げ切り勝ちを決めるのです。
秋緒戦の京都新聞杯を日本レコードで勝ち7連勝とした【ミホノブルボン】は、3000mの「菊花賞」でも(当然、)距離不安が囁かれますが、それでもまずは(前年のトウカイテイオーのこともあり)無事出走が叶ったことへの安堵とシンボリルドルフ以来の無敗3冠馬への期待が交じり、1.5倍の人気。
しかし結果は2着。2000m台では差を付けて勝っていた【ライスシャワー】に、3000mという長距離レースで生涯初の敗戦を喫しました。
結果的には、菊花賞を最後に脚部不安のため現役を引退。8戦7勝2着1回という成績でターフを去った【ミホノブルボン】が、20世紀最後の「無敗での春2冠馬」でした。
6.(2005年)ディープインパクト
【トウカイテイオー】と【ミホノブルボン】が引退した直後、1994年には、史上5頭目の三冠馬【ナリタブライアン】が誕生。
他にも、平成の前半を彩る二冠馬たちが次々と現れますが、無敗とは縁遠い成績で、次なる「無敗2冠馬」は、2005年の【ディープインパクト】まで、時代が下ることとなります。
昭和のトキノミノルやコダマのように、一般のニュースでも取り上げられるほどの社会現象となった【ディープインパクト】は、新馬戦、若駒Sというデビュー2戦で着差以上の深い衝撃を競馬ファンに与えます。
「三冠」が世間的に意識されたタイミングも、非常に早かったと思います。
ハイセイコーを超える圧倒的1番人気の「弥生賞」。着差はクビ差でしたが余裕のあるレースぶり。
「皐月賞」は、トキノミノルに次ぐ史上2番目の人気も、堂々応え1冠目。武豊騎手は、シンボリルドルフの岡部幸雄騎手に倣い、指を1本立てることで「三冠」への機運が一気に爆発することとなります。
日本ダービーは、ハイセイコーをも上回る単勝1.1倍(73.4%)に応える5馬身差の圧勝。勝ちタイムも当時のダービーレコードと同タイム。「英雄」と呼ばれるに相応しい、完璧なレースぶりでした。
【ディープインパクト】は秋緒戦・神戸新聞杯から「菊花賞」へ。
『世界のホースマンよ見てくれ』と呼びかけられた日本近代競馬の結晶は、単勝1.0倍(100円元返し)という重圧の掛かる中、言わば、『主人公補正』的な強さで優勝。
【シンボリルドルフ】以来21年ぶり史上2頭目の無敗3冠馬を達成します。
しかし、【シンボリルドルフ】も【ディープインパクト】も、無敗での三冠を達成した直後のレースで初めての敗戦を喫しており、3歳を無敗で終えられませんでした。
【ディープインパクト】は、3歳・暮れの有馬記念でハーツクライの2着。3歳を無敗で終える難しさを改めて思い知らされます。
7.(2020年)コントレイル
平成後半(ディープインパクト後)では、三冠馬・オルフェーヴルを始め、メイショウサムソン、ゴールドシップ、ドゥラメンテが二冠馬となりますが、いずれも春までに複数回の敗戦を経験しています。
昭和のシンボリルドルフ、平成のディープインパクトと、各時代に1頭、『無敗での三冠馬』が誕生してきましたが、次なる時代へ。
元号が令和に変わった2019年にデビューしたのが【コントレイル】です。
特に2戦目の「東スポ杯2歳S」での5馬身差レコード勝ちで期待と注目度が高まると、G1・ホープフルSを制し、3戦全勝で最優秀2歳牡馬に選出。
トライアルを使わず直行となった「皐月賞」では、朝日杯の勝ち馬で同じく3戦全勝だったサリオスを半馬身差、下しての1冠目。
1944年のカイソウ以来で、戦後初めて「無観客開催」となった日本ダービーでは、前走、辛くも勝利した【サリオス】以下を『ちぎり捨てる』かの様な3馬身差の完勝で、「無敗の春2冠」を達成しました。
【ディープインパクト】以来、15年ぶり史上7頭目の『無敗での春2冠馬』であり、父・ディープインパクトとの「父子」での同快挙達成は、この記事の冒頭でお話しした「シンボリルドルフ → トウカイテイオー」以来。
(1例目)
昭和・シンボリルドルフ
→ 平成・トウカイテイオー
(2例目)
平成・ディープインパクト
→ 令和・コントレイル
8.「無敗での春2冠馬」のその後
コントレイルの今後を展望する意味合いを込めて、「無敗での春2冠馬」の歴史を振り返ってきましたが、注目すべきは『夏の越し方』でしょう。
・2例 菊花賞に出走できず トキノミノル、トウカイテイオー
・1例 菊花賞の前に初敗戦 コダマ
・1例 菊花賞で初めて敗戦 ミホノブルボン
・2例 菊花賞も勝利(三冠馬) シンボリルドルフ、ディープインパクト
過去6頭いる「無敗での春2冠馬」のうち、「菊花賞」を無敗で出走できたのが半数の3頭。
そして無事「無敗での三冠馬」を達成したのは、3分の1相当の2頭です。
(1)日本ダービーを勝った時は、菊花賞での『無敗での三冠』が押し並べて期待されていますが、「春」のイメージ通り順調に「秋」を迎えられているのかが大きな判断材料となりそうです。
(2)そして、実力以上に報道等で「人気」が加熱して『重圧』になって、本来の力も出せなくなってしまわないかが重要になってきます。
(3)また、仮に「無敗での三冠馬」になれたとしても、その反動からか、『菊花賞の次走で敗れている』という事実も、偶然か必然か。3歳までを無敗で終えられた馬は、平成迄に居なかった(極めて例外のクリフジを除く)ということは、ついつい熱狂の下、忘れがちなので要注意でしょう。
おわりに
ここまで、『無敗の春2冠馬(皐月賞・ダービー)』の7頭について、簡単に振り返ってきました。
まずは、コントレイルの『無敗での2冠』を大いに称えつつ、夏を無事に越せるかどうか、そして無事、秋に春同様の強さを見せてくれるかどうか。
そういったことを「予想」するのも楽しいかも知れません。
無敗での三冠馬
・昭和:シンボリルドルフ
・平成:ディープインパクト
に次ぐ、「令和:コントレイル」となるのか、はたまた。『秋競馬を予想』するのも、夏競馬の一つの楽しみです。みなさんはどう『予想』しますか?
ではまた、次の記事、或いは秋競馬でお会いしましょう。Rxでした。
( 2020/10/30・追記 )
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