地震の「平年値」を考えてみた(全国・マグニチュード編)
【はじめに】
この記事気象庁が主に気象観測の項目で算出しており、2021年5月に10年ぶりに更新された「平年値」に関連して、
もし「地震に平年値」があったら、どんな値になるのかを考えています。
前回(その1)では、気象庁「震度データベース」をもとに、『震度』で、全国の震度の回数を並べて『平年並』を考えてみました。
今回は、基準指標を『マグニチュード(規模)』にしてみると、どうなのか考察してみようと思います。(留意点は前回の記事から引き継がれます。)
5.M3以上の有感地震
気象庁「震度データベース」は、全国どこかの地点で『震度1以上』を観測した地震のデータベースですので、どんなに規模が大きくても、無感地震は登録されていないことに留意する必要があります。
今なら微小地震でも捉えられるかも知れませんが、1990年代までの内陸地震では特に、近くに震度観測点が無いために、震度データベースに収録されていない地震がかなりあったものと思われます。
そこでマグニチュード編の今回のスタートは、「マグニチュード3以上」を最初の切り口としたいと思います。
上位の並びは「震度」の時と殆ど変わりませんでした。繰り返しになりますが、2011年の7,881回は、震度1以上を観測したM3以上の地震の回数であって、陸地から離れた場所で起きた(震度0の)地震はカウントしてません。
それなのにこの数というのは、どれだけ地震活動が活発だったのかを物語っているという風に改めて感じました。
6.M5以上の有感地震
それでは中規模地震に分類される「M5」以上ではどうでしょうか。
マグニチュードが2違うと、地震のエネルギーは1,000倍違います。一部の年を除くと、多くの年で「約10分の1」となっていることが見て取れます。
10分の1に減ったとはいえ、2011年の「671回」は、M3以上の時よりも遥かに顕著です。逆に、2000・2016年などの内陸直下型地震の年は、中規模地震の数では(多いとはいえ)やや順位を落とした格好になっています。
一方、25ランクスアップとなったのが1994年。Mj8.2「北海道東方沖地震」という巨大地震は、並の大地震とは違って、二回り小さい余震であってもM5を超える地震となったことなどが影響しているものと思われます。
数値的には「約80回」と「約100回」に目安線が引かれる印象があります。
7.M7以上の有感地震
それでは一気に飛んで、M7以上の「大地震」に分類される地震では、どういったカウントになるのでしょうか。
この集計で顕著になってくるのが、「深発地震」や「(海外などの)遠地」で起きる大規模地震の存在です。
2011年の東日本大震災の時は日本列島付近の浅い地震なのですが、それ以外の上位の年の殆どは、日本列島付近の浅い大地震は「0~1回」。深発地震や遠地地震によって回数が複数に及ぶケースが多いのです。
とはいえ、震度6強~7を観測する地震もあった2018・2019年などは、年間を通じて1回もM7以上の地震は発生していません。「0~1回」という年も数年に1回のペースでは起こりうるものだということを再認識して頂ければと思います。
8.(番外編)「緊急地震速報(警報)」の回数
ここまで「震度」や「マグニチュード」といった切り口で、地震の平年値を考えてきましたが、やはり世間一般の皆さんにとって「地震が多さ」を感じる指標の一つが、「緊急地震速報(警報=一般向け)」の頻度ではないでしょうか。
緊急地震速報の運用が始まって、まだ十数年なので、「過去30年のデータ」を集計することは出来ないのですが、今あるデータをもとに「番外編」として今回掲載させてもらいたいと思います。それがこちら(↓)
これには、実際は「震度4以下」だったものを始め、俗に『誤報』といえるような誤差の大きかった警報も含まれます。
最多は、多くの誤報を含め100回近い警報が発表された2011年。そして、熊本地震の起きた2016年の31回と続きます。
そしてやや意外なことに「2020年」が第3位となりました。地震の回数などは平年並か少ない部類に入るこの年が何故3位なのかというと、「震度4」の地震で警報が発表される回数が特に多かったからです。大外しではないものの、最大震度5弱に満たない地震での警報発表が多かったことで、順位が押し上げられたのだと思われます。
データ量も少ないのでやや微妙な面もあるのですが、月平均1回「警報」が発表されれば『多め』の部類になるのではないかと思います。
ぜひ、こうしたことも、一つの指標の案として、記憶の片隅に置いておいて頂ければ幸いです!