【はじめに】
2021年のG1・マイルチャンピオンシップでは、芝G1・5勝のマイル女王「グランアレグリア」が有終の美を飾りました。
この記事では、過去G1を複数勝っていたり、後に顕彰馬となる馬(いわゆる名馬)が「ラストラン」と銘打って挑んだ現役最後のレースの結果がどうだったのか、振り返っていきます。
1.調査対象
「名馬のラストラン」というと競馬ファンの体感としては分かるのですが、纏めるにあたっての線引きが意外と難しく、今回は次のとおりの定義で記事を書き進めることにしました。
(参考)引退レースと銘打たれていない名馬の例
先に、引退レースと銘打たれていない中で、現役を引退した名馬たちを簡単にご紹介しておきます。(あくまでも主観です)
こうしてみると、「引退レース」と銘打って現役を終えられることの有難みを再認識しますね。
2.時系列順
まずはシンプルに、一回「時系列」に並べてみようと思います。
参考がてら、昭和の名馬たちの引退レースを振り返ります。メジロラモーヌの着外を除けば、全て連対を果たしており、負けた相手も堂々たる馬です。
シンボリルドルフは、海外初挑戦のレースで故障を発生しましたが、その前の国内最終戦と銘打たれた「有馬記念」は、フジテレビの盛山アナウンサーが『世界のルドルフ』などと、その期待感を表していました。
1990年代は、あのオグリキャップのラストランが、昭和からの流れを汲んだ印象。スペシャルウィークも2着ではありますが、グラスワンダーとの激闘ですから、名馬のラストに相応しい戦いぶりでした。
その一方で、21世紀の「引退レース」のトラウマとなったのは、タイキシャトルのスプリンターズSでしょう。その前にサクラバクシンオーが単勝1.6倍で日本レコードの4馬身差圧勝を果たした事例があったこともあってか、1998年のスプリンターズSでは「単勝1.1倍」という断然人気となります。
しかし、海外G1を制したタイキシャトルは、タイム差なしとはいえ、生涯初の連対を外す結果となり、「競馬に絶対はない」という格言が強く支配する結果となりました。
2000年代は、ウマ娘でも豪華絢爛に描かれている「テイエムオペラオー」がG1・8勝目を目指すも5着と大敗を喫しています。
但し、シンボリクリスエスとディープインパクトの有馬記念は、見事にラストランを決め、伝説のレースとして語り継がれています。
2010年代に入ると、毎年年末になると、名馬による引退レースが誕生するようになります。
2010年代のうち「単勝1倍台」での引退4例はすべて勝利しています。また短距離~マイル路線の2頭は、国内・香港いずれも勝利しての引退でした。
そのほか「有馬記念」では明暗が分かれており、ジェンティルドンナやリスグラシューの様に1番人気でない中で有終の美を飾る馬がいる一方、距離や気性、衰えなどに不安があった馬は着外に沈んでいます。
2020年代に入ると、引退レースに「ジャパンカップ」を選択する馬が目立つようになります。最もドラマチックだったのは、2020年の三冠馬3頭の共演となった「ジャパンカップ」でしょう。
アーモンドアイがG1・9勝目をマークする歴史的な勝利を見せ、現役最強馬の存在を強烈にアピールしたまま現役を引退しました。
3.人気別
続いて不完全ですが、ざっくり「単勝人気」ではどうか見ていきましょう。
「タイキシャトル」の事例がトップに来るので何とも言えませんが、やはり実力が抜けているという前評判かつ「有終の美を飾って欲しい」という印象が強まる単勝1倍台前半の馬たちは、納得の強さを示しています。
同じくテイエムオペラオーは、馬券圏外の5着と敗れますが、その他は堂々と勝ちきっており、タイキシャトル同様、「馬の衰え・やる気」を見極めることは重要になってきそうです。
「タマモクロス」が半馬身敗れた相手はあのオグリキャップですから、この単勝2倍台辺りまではかなりの安定感をもって引退レースを戦えています。「アーモンドアイ」の様に、強いライバルがいたから1倍台ではなくなった例でも、前評判に違わぬ激戦を演じてくれます。
傾向が歴然と変わるのは、単勝3倍あたりからです。国内最終戦というモーリスを除くと、なかなか勝ちきれなくなり始めます。
トウショウボーイはテンポイント、スペシャルウィークはグラスワンダーと歴史に残る名勝負の末、惜敗を喫しています。そして、ブエナビスタはそれまで2年連続2着だった有馬記念に挑むも7着と大敗をしています。
単勝4倍以下になると、やはり惜敗というより大敗が目立ちます。どこか無理をして有馬記念に出走して……ということなのでしょうか。
その一方で、オグリキャップ、リスグラシュー、スピードシンボリ、ジェンティルドンナなどが引退レースの有馬記念を制しています。ちなみに、牝馬2頭は中山初挑戦での制覇で、牡馬2頭は過去に有馬記念を制している実績がありました。
4.レース別
「有馬記念」を引退レースに選ぶ例が多すぎるので、その他のレースで抽出をしてみます。結局は、当たり前ですが、「一番得意な舞台を選んで引退」する方が成績は良いのだと感じました。
一方で、「有馬記念」に出走してくる名馬のうち、
引退レースだし、投票してくれたファンの期待を背負って……として、多少無理をして挑んでくる馬は、やはりリスクが大きいことは何となくの傾向として窺えます。数年に1回、そういった馬が勝つこともありますが、それを毎回狙うことがプラスかは微妙な所そうです。