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【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.3)《自作句あり》

【はじめに】
この記事では、2021年8月4日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第3回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。

0.オープニング

前回(2021年7月31日(土))が、マネージャーからの電話によって繰り上げて終了した感じだったため、その遅れを取り戻すためにも、前日発表から平日夜(8月4日)の開催に。

月百句 季語「月」を使って10月が終わるまでに百句完成を目指します

遅れを取り戻すという意識もあってか、雑談もそこそこに早速1つ目の席題募集に移りました。

(1)没テーマから幾つか自作句を作ってみる

席題候補として、例えば、「瓶詰め」や「ブロマイド」、「鈴」などという単語が寄せられていましたが、個人的に印象に残ったのは、村上さんと同様「牛」という漢字1文字でした。 うまく作れたらドラマチックになりそうですね~ なんて感じつつ。

自作句1.弦月や瓶詰め千の祖父の店

瓶詰めはロマンチックなインテリアにすらなるものですが、それが千個も並んでいたらきっと怖いだろうなぁなんて考えたり。しかも秋の夜に見たら。

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『瓶詰め』という席題がなければ、間違いなく思いつけなかった発想です。

自作句2.牛飼いの娘は無口 朝の月

「牛」と「月」は相性が良さそうですが、今回は動物ではなく、その牛を育てる人間にフォーカスをしてみました。牛から「牛飼い」という言葉を思い浮かべて、調べているうちに、

以前、NHKで特集されていた「牛飼い」の方(とその娘さん)の番組を思い出して十七音にしてみました。寧ろ「月」という縛りがなくても、良い句が出来そうなぐらいの俳句のタネだと感じている次第です。

自作句3.三日月色のスタアやマルベル堂入口

これも全く想定していなかった取り合わせになりました。厳密には、季語の本意とかけ離れているので、これは無季の句だと思いますがww

『プロマイド』についても、それだけで句材としては十分過ぎるぐらいに、訴えかけるものが大きいので、ここは強い名詞を畳み掛けて、力で押し切らせてもらいました。面白い題材に溢れていますね、チャット欄の皆さんww

1.テーマ「おつまみ」

さて本編では、ボソッと「食べ物で考えるのスキなんだよな」と村上さんがつぶやいて、結局「おつまみ」と決まりました。

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過去に生配信で出た所だと、例えば「トマトスライス」や「柿の種」など。他にもチャット欄からは、「炙ったイカ」や「するめ」、「さきいか」、「チーズ鱈」に「ジャーキー」といった乾き物が届きまいて、飯テロ状態。

それに加え、「焼き鳥(冬)」や「枝豆(秋)」などの季語にもなっている『おつまみ』も寄せられてきます。結果的に村上さんが選んだのは、月とも相性の良さそうな「チーズ」でした。

【 1句目 】
『ベビーチーズ余計に買って月の帰路』 村上健志

まず何より「ベビーチーズ」を見つけ出したことが勝ちです。単なるチーズではなく、ここで『おつまみ』っぽさが確保されているように感じました。

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ただ、言葉の詰め方はまだ推敲の余地がありそうで、「余計に」「買って」「月の帰路」はすべて人によって判断が分かれそうな感じがしますね。

【 Rx添削私案 】
・『ベビーチーズ余計に買った帰路や月』(季語の比重を少し強める)
・『なんとなくベビーチーズを買って 月』

みたく手は幾らでも加えられそうで、人によって理想形は変わってきそう。

さらにその勢いのまま、考えている中で浮かんだ「6Pチーズ」を使って、もう1句できあがりました。

【 2句目 】
『月代(つきしろ)や6Pチーズふにふにす』 村上健志

『6Pチーズ』の色や、アルミホイル(?)に包まれている状態で触った感触が疑似体験できて、これは「村上さんらしい」着眼点の句だなと思いました。

最初、「ふにふに【す】」という5音目が気になったのですが、まあ作者が『動作』と『触感』を重視したいということを感じ取ったので、これはこれで言いたいことを表現できていると思います。 流石ですね、村上名人は。

自作句4.チー鱈裂く癖ある君と満月を

おつまみに関するコメントで、極めて俗っぽいと感じたのが「チーズ鱈」。少し詰まっていますが、それも若者の生活らしいってことで、一つどうぞ。

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「『月を待つ』なんて時間を持てる現代人」は凄いとコメントしましたが、これもそんな『良夜』を感じさせる句かなと思って作ってみました。

単なる食べ物の席題ではなくて、少し広い「おつまみ」というテーマだったからこそ、こうして発想が広がって面白いのだな、と再認識できましたねー

口誦性(こうしょうせい)の重要性について

生配信で話されていたフリートークを受けて私が呟いたコメントを村上さんに拾って頂けましたので、それについても簡単に。

村上「僕あんまり意識して韻を踏むことはなくて、読み返してみたらここが韻になってるなって。多分それは作ってみて俳句とか短歌って音の世界なんですよね。自分で読んでみた時に、あっこれ音が良いのできたかもって時は音が良かったりするから、その時、韻が自然に踏まれてるんだと思う。」

これを受けて、私が、

Rx「そういう『 口誦(こうしょう)性 』は、百人一首の時代から現代俳句まで大事って聞いたことある」

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とコメントしたのに、

村上「そうでしょうね、歌ですからねやっぱり。」

村上さんも軽く賛同してくださいました。ちなみに、

口誦:口ずさむこと。詩歌・文章などを声に出して読むこと。

という意味で、リズムとか音とか韻とか、そういったのを含めて音読した時に心地よいとか覚えやすいとかそんな感じだと思います。ざっくり言えば。

2.テーマ「スケートボード(スケボー)」

東京オリンピック2020の新種目であり、4競技中3競技で日本人が金メダルを獲得した「スケートボード」。

ちょうど、生配信当日に、女子パークで「四十住さくら」選手が金メダル、若干12歳の「開心那」選手が銀メダル(日本人最年少メダリスト)を獲得。そうした時勢も踏まえて、2つ目の席題は「スケボー」に決まりました。

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しかし、印象すら決して確たるものがないスポーツを俳句にして読むというのは至難の業。しかも、『月』という季語まで縛りがあるという状況です。

ただ、コメント欄には励ましの意味もあるのでしょうが、『スケボー俳人の第一人者になれるかも!』とポジティブ思考な方もいらっしゃいましたww

村上さんは、競技そのものではなく、スケートボードをプレーする若者へと光を当て、こんな句を作りました。スケボーの1句目です。

【 3句目(推敲前) 】
『朝月日 進路の話(はなし)すスケーター』 村上健志

着眼点は流石の一言なのですが、やはり気になるのは「中八」です。素直に『進路を話す』と読めば良いのに思っていたら、コメント欄から早速、アドバイスが来て、それが、

50:57 MrNozza1919 ​いまテーぷ切りながら言った 進路を語る とか?

というもの。村上さんも、

村上「それだ! それだそれだ。あーそっちだ。すぐ直るね。助かります! 不思議ですよねー 言葉をちょっと変えるとおさまるんだもんなー、それに『語る』の方が青春っぽいよね。」

と返して、添削後の作品がこちらです。

【 3句目(添削後) 】
『朝月日進路を語るスケーター』

スケボーはスキだけど、それだけやってて生きていけるほど大人は甘くないみたいな若者の葛藤を巧く『進路』という単語で言い表してると思います。

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【 Rx添削私案 】
『三日月や進路語らうスケーター』

スケーターが進路を語るなら、「朝」という健康的な時間帯から少し離れて親や学校から解放される夜(早い時間帯)の方がリアルかなって思います。

そして「進路を【語る】」だと、鍵になる「仲間とお互いに」という部分が十分出ていないように感じたので、【語らう】という動詞にしてみました。

さらに、目標だった「3句」をあっさり通過し、少しファンタジーで難しいテーマにも挑戦する村上さん。スケボーの技名を読み込もうとします。

ただ、結局それが「沼」でした。そもそもメダリストが出たから注目したという程度で競技への予備知識は殆どなく、読むために技名を調べても、非常に長く音数が溢れそうな単語ばかり。

『フロントサイド フィーブルグラインド』に至っては、この単語だけで16音もありますから、『月』という季語を読み込むのは至難の業と言えますね。

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結局、かなりメジャーどころな「オーリー」という技に帰着し、出来たのが

【 4句目 】
『オーリーの着地に揺れぬ月の黙(もだ)』 村上健志

という作品。見事なオーリーを披露して人々が盛り上がっても、月は揺れず動じず、当たり前ですが「黙(もだ)」を貫いてるという対比の作品です。

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30分近く使ってかなり混迷を極めましたが、『スケボー俳人の第一人者』を目指す(?) 村上さんらしい着眼点の2句が誕生しました。

自作句5.バックサイドKグラインド 半月の縁を

すみません、どういう技(トリック)かちゃんと把握していないのですが、村上さんが熟考している時に出てきた技名にこういうのがあったんで、ノリで詠んでみました。

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ファンタジーな句が詠みたいと村上さんが仰っていたので、「半月の縁」を滑っているような句にしてみましたが、如何でしょうか。

まだ「スケボー俳句」が少ないから良いかも知れませんが、将来、多くの方が「スケボー」を題材に俳句を詠むようになったら、『月をすべる』という発想自体が「類想類句」になってしまうのかも知れませんねー(面白いけど

【おわりに】

本編は、初の試みとして、1つのテーマで2句作るという形になりました。案外、句数を稼ぐには良いのですが、「スケボー」みたいに席題が難しいとドツボにハマってしまうので、一長一短ですねー。

そして、私が他の席題を含めて作ったのは、今回この5句です。

自作句1.弦月や瓶詰め千の祖父の店
自作句2.牛飼いの娘は無口 朝の月
自作句3.三日月色のスタアやマルベル堂入口
自作句4.チー鱈裂く癖ある君と満月を
自作句5.バックサイドKグラインド 半月の縁を

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