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【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.7)《自作句あり》

【はじめに】
この記事では、2021年8月28日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第7回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。

0.オープニング

「プレバト!!」放送直後の生配信に続き、中1日でスタートした俳句実況。テレビの『鉄道沿線歩き旅』のロケでは、2日で75kmぐらいを歩いたという村上さんですが、『月百句』の完成に向けても一歩一歩前へ進んでいます。

(1)助詞「で」に見る村上さんの作風コメント

冒頭にスパチャで、村上さんの句柄を語ってくれたのが「Y.Zac」さん。前回の記事でもご紹介した助詞『で』の使い方に関する考察。全文をどうぞ。

(1コメント目)
ドイツから見てます〜!前の配信後思ったのですが、村上さんが助詞「で」を使ってしまうのは、人間の細かな1つの行動に着目する句柄だからではないでしょうか。「で」の前には(場所でなければ)道具がきて、動作に続きます(中指で押す、フォークで刺す、カードで掬う、葉書で突く)。

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(2コメント目)
味わいと独創性のある「何を用いて(人間が)動作したか」(動植物はそもそもふつう道具が使えませんし)を発見できて俳句に書く人は珍しいので、他の人の句では「で」の使用がまれなのだと思います。人間の動作を細かく捉えた世間の句は、代わりに「どのように(=形容詞・形容動詞・擬態語・比喩等)動作したか」を書いて独創性を確保したのが多い気がします。村上さんの「で」の句も「でを避けた」句も両方楽しみにしてます〜!

そもそも、定石として「ダメ」とされている事には何らかの理由があって、それを簡単には打破できないから定石とされているのだと思います。逆に、周囲が苦手でも自分が得意で、定石を崩して成功できるならそれは「大きな武器」となりましょう。

(2)今回はスピードを意識して

前回は、「歯」で30分30秒を要したことを反省し、いずれ、

・時間無制限に1句、難しいテーマに集中する回
・とにかくスピードを意識して10句作る回

などを検討しているとのこと。それに対して、私がコメントした

6:00 Rx Yequal​
 「1時間にセリフ80個作ってた経験があるから、
  自分は『1句1分以内』って感じですね。」

ラジオ番組「ミューコミプラス」のリスナー参加型コーナーのことを思うと『1分以内に1セリフ』のペースでTweetしてきたことが、自分の様な早いペースでの作句に活きているのかなって思います。

1.席題:鉄道

「月と鉄道」というだけで俳句じゃん!と語るぐらい親和性の高いテーマ。

『鉄道沿線歩き旅』をガチで全行程を徒歩で踏破することを踏まえての席題ですが、「車窓に月」とかベタにもなりがちそうで案外難しそう?

11:46 洒落神戸 「​夏井先生のデータによると「廃線」とか「無人駅」とかは類想になりがち。」

と、洒落神戸さんが仰るとおり、「無人駅」は大人の凡人パーツだそうで。

(1)手袋外す駅員+月

そうこうしている内に、あっという間に1句目が完成します。動画開始から15分足らず、テーマ決めてから6分という最短ペースです。

【 1句目 】
『手袋を外す月下の駅務員』 村上健志

月と駅員さんとの取り合わせはやっぱ絵になりますねぇ。かつてプレバト!! で北山宏光さんが『手袋を外して撫でる猫の喉』という句を披露していましたが、これも「手袋を外す」ところの動作がオシャレです。

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15:25 ​いきなり「季重なり」のチャレンジ句じゃないですか!!

と私がコメントしたことに対し、先ほどのコメントをした洒落神戸さんが、

15:53 洒落神戸「​駅員さんの「手袋」なんで季語感は弱いかと。」

と返されたのは、まさにその通りです。冬の季語としての『手袋』は、防寒のためのものであり、駅員のはめる白い手袋は年中、防寒以外の目的で着用されるものかと思います。

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ただ私の本意としては、そのことは百も承知の上で、『意図せず』だったり『無自覚』での「季重なり」を避け、『これは季語としての力が弱いことを認識した上での季重なり(2つの季語が強弱をつけた上で入っている)』と認識するのも訓練の一つかなと思っています。

これも、「季語感が弱い」のは事実なんですが、結果論であり、村上さんも最初は気づいていなかった風なので、「うっかり成功の季重なり、こうした修行の場では気づくことも鍛錬の一つかな」と思った次第。「プレバト!!」なら、気づいてなくても『分かってました』風に言えば良いのですがねww

(2)KiOSK+月

さらにもう1句、「KiOSK」という場面設定にヒントを得ます。「KiOSK」については、かつて夏井いつき俳句チャンネルで句も紹介されていましたが、この固有名詞の持つ強さはかなりのものがありますね。

最初は「お土産」などありきたりなものを「KiOSK」に求めていましたが、コメント欄で『老眼鏡』という投げかけを見るや否や、村上さんの「詩人センサー」にクリンヒット! それに拘って作句に邁進する事となりました。

そしてできた2句目がこちら。

【 2句目 】
『キヨスクの老眼鏡を買う月夜』 村上健志
『キヨスクの老視を買って四日月』

『四日月』などの季語を使いたいと語ってきた村上さんですが、音数の関係で『老眼鏡』の別の言い方『老視』を使う是非は人によって分かれそう。

個人的には、「キヨスクで買うもの」として、余り老眼鏡は一般的じゃない印象があるので、伝わりづらくなっちゃうかなー と思い、前段の句を推したいと思います。

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いずれにしても新幹線や特急で細かい字の文庫本でも読むのかな? とか、老眼鏡をどこかに忘れてきてしまったのかな? とか、老眼鏡を掛ける世代の方の駅・電車にまつわるドラマの想像が膨らむ素晴らしい句と思います。

《 Rx自作句 》

ではここで自作句からも1句。これはラジオ番組「夏井いつきの一句一遊」で木曜日選して頂いた作品のリメイク作となります。

①『十五夜を「内滿鮮支時刻表」』 Rx

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「内滿鮮支」というのは、内地・満州・朝鮮・支那の頭文字です。満州の滿を旧字体としたのも含め、「鮮」という漢字1文字の兼題の回に捻り出した単語でした。原句では「短夜」でしたが、今回は少し秋めいた空気感を載せてみています。

2.席題:絵本

続いても、幅広そうな「絵本」というテーマ。コメント欄でも山のように来ました。さらに、村上さんが(計算のうえで)買って持っているという絵本を持ち寄りながら、作句していきます。

2句目は、村上さんの作風的には正解な、こんな句でした。

【 3句目 】
『月の蝕 絵本の角は丸くない』 村上健志

季語の選び方もさることながら、「角【は】」と指差すような感じが、季語と呼応することによる損得勘定はありましょう。ただ村上さんの作風として『この理屈っぽさ』も許容できるものと思いました。

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丸くなっている絵本もありますけど、おもちゃの角などと比べると、確かに絵本は装丁の関係もあって「丸くない角」のものが多そうですね。

《 Rx自作句 》

続いて私の自作句です。これは、村上さんが作句中に呟いていたコメントを使って、こんな句を作りました。

②『星月夜いっぱい並ぶ絵本が好き』 Rx
③『べきべきべきと絵本読む父 五日月』 Rx

人が絵本とかそういったものに抱く感想というのは、他人が持ち合わせないことがあるので一々面白いですよね。こういう系統のものがスキって自分は思っても、他の人は苦手だったりする。だから絵本は作家が沢山いて、種類も溢れているのでしょうからね。

3.席題:ストレッチ

続いてのテーマは「ストレッチ」です。私はあんまり意識してやったことが無いのですが、「ヨガ」などが日本でも定着して久しいですよね。

ヨガから派生をし、『月百句』ならでは発想の飛躍で、『月光浴のヨガ』に着想しました。神秘的で何か力を貰えそうな感じがする魅力があります。

【 4句目 】
『月影に喉差し出してストレッチ』 村上健志

動詞について、「喉を突き出す」の方が本来は正しいとしつつも、敢えて、『喉を差し出す』という動詞を選ぶことでの衝撃を狙った作品です。

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村上さんは、助詞での推敲よりも、こうした「動詞」での推敲がスキということです。これは短歌もされていて、芸人としても様々なネタを作ってきたことが活きていると感じます。

助詞は数パターンしか工夫の余地がありませんが、動詞の場合はほぼ無数に選択肢があるので、より詩の実力が試されますよね。今後も期待してます!

《 Rx自作句 》

さて私は、ストレッチでコメントされた方のアイディアの中に、「肩甲骨剥がし」というものがあったので、それ使って1句作ってみようと思います。

④『翼得て月夜へ肩甲骨剥がし』 Rx

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こうして長い「note」を書いてると、ついつい肩甲骨が固まってしまうから気をつけねば! 前半でファンタジーな方面に振って、後半でネタ明かしをする感じです。

これも、ヨガとかストレッチを普段していない人間にとっては、全く触れる機会が無い単語(肩甲骨剥がし)だっただけに、面白かったですねー。

4.席題:駄菓子

ここまで動画開始1時間で4句も出来ている俳句実況。

『(早く作ろうという)意識を持つ、意識を変えるって大事だね』

と、私も強く感じました。あっちゃん(中田敦彦)じゃないですが、意識を変えることって大切ですね。「早く走ろうと意識するだけで早く走れる」と似た感じがします。

最後の席題は「駄菓子」と決まりました。駄菓子にフォーカスしても良いですし、「駄菓子屋」や小学生の頃の思い出にスポットを当てても良い。これも作りやすそうなお題です。

最初は「駄菓子屋が閉まる」という方面で考えていましたが、これはベタっぽいということで避け、駄菓子そのものに発想を転換します。

ちなみにそのトークの中で出てきたアイディアに、『色んな言葉を昼か夜か朝か分類するゲーム』というものがありました。駄菓子は昼だし、お酒は夜だし、トーストは朝だし、と。何の気無しに喋っただけなんでしょうが、これがかなり面白そうだなって思いました。

そして、この発想を「季節」でやったのが、季語であり、歳時記ではないかなと思わされた一幕でもありました。

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そして、駄菓子でおおよその形が出来たところで、最後の1単語に迷っている村上さん。おもむろに「3音の駄菓子」のアイディアを募集します。

・ラムネ(夏の季語)
・チロル
・酢だこ
・あられ
・スルメ
・ガルボ
・アポロ
・トッポ
・ポルテ
・カール
・麩菓子

などと沢山来る中で、選ばれたのが「ポテコ」であり、こちらの句が完成。

【 5句目 】
『チータラの容器にポテコ月見酒』 村上健志

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確かに、保守派の人からは「こんなの月見酒じゃねぇ!」って怒られちゃいそうですが、個人的にはスキです。この俗な感じリアルじゃないですかww

そして村上さんも仰ってましたが、これこそ固有名詞の強みと弱みでして、『ポテコ』を知っている人には、形や匂い、味まではっきりと想像できますが、知らない人からすると何かも分からないかも。それ故に、諸刃の剣かも知れませんが、この句は固有名詞の力を効果的に利用できてると思います。

《 Rx自作句 》

コメントで「当たり棒に当たったことがない」という声があったので、今回はそれを拝借してこんな句を作ってみました。

⑤『当たり棒ぼくだけ当たらないや夕月』 Rx

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他の人のアイディアだけではなくて、他の人の「エピソード」を知ることが出来る点で、このコメント欄の俳句実況は非常に面白いですね。言うて僕もくじ運は非常に悪い自負があるので、記憶を遡っても、こういうのほとんど当たらなかったですけどww

【おわりに】

今回、村上さんに「スピード」を意識させることに成功しました。その結果として普段以上に短い時間で「5句」が完成。今後より活性化していったら嬉しいですね。

そして今回私が作ったのは次の5句です。

①『十五夜を「内滿鮮支時刻表」』
②『星月夜いっぱい並ぶ絵本が好き』
③『べきべきべきと絵本読む父 五日月』
④『翼得て月夜へ肩甲骨剥がし』
⑤『当たり棒ぼくだけ当たらないや夕月』

ぜひ次の俳句実況(感想)もお楽しみに!


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