ファッション誌から読むアート最先端 2014年 10月 (vol.3)
最近Eテレで放送していた宮沢章夫さんの「戦後ニッポンサブカルチャー史」、70年代の回では雑誌の隆盛が取り上げられていました。タウン誌の成立から今も続くファッション誌、カルチャー誌の登場など、始終フムフムとネットを引いたりしながら見ていました。この中で言及はなかったのですが、『anan』は最初『ELLE』の日本版として創刊したんですね。創刊から『anan』という誌名は既に冠していましたが、横に『ELLE JAPON』の表記があるんです。途中で分かれ、出版社も変えて今の形になったようです。
またその流れで、『平凡パンチ』を出していたのがなぜ(平凡社ではなく)マガジンハウス(旧・平凡出版)なのか、といったあたりも掘れて、とても広がりのある良回でした。 (参考: Wikipedia)
雑誌の盛衰自体が時代を写す鏡のようになっているのだと実感。雑誌の理解って、その辺りの文脈の把握が超大事だなーと思いつつ、、、第3回です!
さて、そんな出自の『ELLE JAPON』が創刊25年だそう。今号は通常の表紙の他にゴールド仕様の特別版が出ています。また『Harper's BAZAAR』もレディ・ガガが表紙の通常版と、オードリー・ヘップバーンの孫娘、エマ・ファーラーを起用した特別版の2種類が出ています。今月の書店の雑誌コーナーは置き場とか大変そうですね。。。
それから『Harper's BAZAAR』には付録で「BAZAAR ART」という別冊がついています。その中では「世界が注目するジャパンアート」が大きく取り上げられています。『VOGUE JAPAN』でも、日本のファッションデザイナーや美術家が取り上げられているなど、海外系ハイエンド誌でJapan Powerに注目する特集が重ねられていたことが印象的でした。
あと男性誌について、それなりに調べてはいるのですが、女性誌のような「ハイエンド」という括りはあまりないようです。男性誌はほとんど年代やスタイルで分かれているんですね(内容そのものよりもこの分化の違いが出ることに、ジェンダーの根深さがあるような気がします)。
『Them magazine(ゼムマガジン)』、『commons&sense man(コモンズアンドセンスマン)』あたりは結構クリエイティブな感じするんですが、『Them magazine』にはアート記事は見つけられず、、、『commons&sense man』はまた今度ということで。。。
『 』 → 雑誌名、号数
− − → コーナー名
( ) → ライター、エディター、ない場合は不明
『VOGUE JAPAN (ヴォーグジャパン) 2014年 11月号』
−VERY VOGUE− ART (青野尚子さん)
「リー・ミンウェイとその関係展: 参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」
「活動のデザイン展」
『ELLE Japon (エルジャポン) 2014年 11月号』
−Culture Club−
ART&STAGE
メインの記事(MINAKO NORIMATSUさん)
バンジャマン・ミルピエ「L.A.Dance Project」 (ダンス公演)
Recommended Art(NAOKO AONOさん)
−江戸・京都から広がった日本美術パワー
「平成知新館オープン記念展 京へのいざない」
「修理完成記念 国宝 鳥獣戯画と高山寺」
「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」
「ホイッスラー展」
『Harper's BAZAAR (ハーパーズバザー) 2014年 11月号』
−TALKING Point−
「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」
ミシェル・ゴンドリー インタビュー (SAWAKO AKUNEさん)
−MUST-SEE EXHIBITION (鈴木芳雄さん)
「ウィレム・デ・クーニング展」
「菱田春草展」
別冊付録 BAZAAR ART
−世界が注目するジャパンアート− (鈴木芳雄さん)
杉本博司、西野達、塩田千春、team Lab、宮永愛子が紹介されています。
−国内展覧会−
「ウフィツィ美術館展」
「せいのもとで - lifescape - 」展
五木田智央 「THE GREAT CIRCUS」
「ヨコハマトリエンナーレ2014 華氏451の芸術: 世界の中心には忘却の海がある」
「国東半島芸術祭」
「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」
『Numero TOKYO(ヌメロトウキョウ) 2014 年 11 月号』
−今月の展覧会− カレンダー付き (Ayuko Iwaki)
磯崎新 「12×5=60」
「TOKYO PHOTO 2014」(終了しました)
「リー・ミンウェイとその関係展: 参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて - ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム - 」 展
五木田智央 「THE GREAT CIRCUS」
「福岡アジア美術トリエンナーレ」
「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2014」
「IN SITU-1」
「BIWAKOビエンナーレ 2014」
「国東半島芸術祭」
『NYLON JAPAN (ナイロンジャパン) 2014年 11月号』
−Art Tripper− (工藤キキさん)
「DOMMUNE University of the Arts -Tokyo Arts Circulation-」展
横山裕一展「これがそれだがふれてみよ」
田尾創樹 「BLUE」
−G's ART−
−もふくちゃんのWhat's Art?−
「ヨコハマトリエンナーレ2014 華氏451の芸術: 世界の中心には忘却の海がある」、「ヨコハマ・パラトリエンナーレ 2014 - First Contact はじめてに出会える場所 -」
鈴木康広 「近所の地球」
「TRANS ARTS TOKYO 2014」
−召ませ♥︎メディアアート− (齋藤あきこさん)
スズキユウリ 「Playing with Sound」(終了しました)
−SO-EN JAM−(中島良平さん)
メイン の記事
保井智貴 「佇む空気/ silence」
その他の記事
「服の記憶 ― 私の服は誰のもの?」
磯崎新 「12×5=60」
「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2014」
−TO DO LIST− (Keisuke Kagiwadaさん、Ken Miyamotoさん)
「IN SITU-1」
野又穫 展 「Ghost」 浮遊する都市の残像
ATSUKO TANAKA写真展「NEW YORK BEFORE ZEROS -The Golden Age of Hip Hop」
「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」
** note
『Harper's BAZAAR』の別冊付録「BAZAAR ART」はなかなかの読み応え。「世界が注目するジャパンアート」の他にも、国内外のアートニュースやジョン・バルデッサリのアートワーク、などが掲載されています。
今月のラインナップを見ると、山形、国東半島、琵琶湖など各地の芸術祭が多く取り上げられているように思いました。9月から10月にかけてはじまるものが多いからだと思いますが、そもそもその時期に多くの芸術祭がはじまるということにも、独特の事情を感じさせます。
また、掲載が多いのが「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」。スタイリッシュなMVで知られるミシェル・ゴンドリー、ファッション業界からの注目高そうです。
『GINZA』の今回のライターはもふくちゃん。(林央子さんと不定期で交代連載)取り上げているのは、自身も関連プログラムで参加しているヨコトリです。そして実は同時開催で「パラトリエンナーレ」というのが開催されていて、そちらにも触れられています。「パラトリエンナーレ」は「障害者とプロフェッショナルが協働する現代アート展」で、意欲的な試みがいろいろされているようです。さらにヨコトリの本展示以外にも、周辺ではいろいろなイベントが開催されています。あと一ヶ月ほどの会期、一度行った人も、周辺イベントも含めて地域発のアートイベントとして楽しんでみてはどうでしょうか。
最後に、ぼくが注目したいのが、磯崎新 「12×5=60」。磯崎新さんはもちろん建築家なのですが、この展覧会は「建築外思考」に焦点を当てた試みになっているようです。美術、音楽、映像、写真といった「建築外」の複合的な視点が、建築に結実していく過程を垣間みることは、建築に興味がある人だけでなく、クリエイティブに関わる/関わっていきたい人にとっては貴重な体験になるのではないでしょうか。